文献情報
文献番号
201201003A
報告書区分
総括
研究課題名
助産師の潜在的・顕在的助産力に関する分析と展望 -正常分娩担当システムの構築に向けた政策提言のための首都圏調査- 助産師の本研究
課題番号
H22-政策-一般-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 享子(首都大学東京 健康福祉学部)
研究分担者(所属機関)
- 安達 久美子(首都大学東京 人間科学研究科)
- 猫田 泰敏(首都大学東京 人間科学研究科)
- 島田 三恵子(大阪大学大学院 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
1,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本年度の研究目的は、政策的提言の根拠となる「助産師の正常分娩担当システムの構築に向けた政策的提言」(以下:「本提言」とする)検討会議での各委員の意見および検討経緯を示し、「助産師の正常分娩担当システムの構築に向けた政策提言」の試案を検討し、策定を完遂することである。
研究方法
「本提言」(案)は、前文及び5つの提言で、1)助産師卒後臨床研修プログラムの提言、2)産婦人科医師や小児科医師の助産観変容に寄与し協働を進める、3)病院内組織に助産部門を創設する、4)周産期地域医療における病院・有床診療所・助産所の連携交流の、5)産後6週間までの居宅訪問による助産ケア提供システムならびに拠点創設、である。 周産期を囲む有識者13名、構成は、産科医3名・新生児科医1名(総合病院・産院・有床診療所)、助産師8名(バースセンター管理者・産院師長、有床診療所師長・日本助産師会会長・日本看護協会職能理事、研究班)、母親代表2名(NPO自然育児の会)、出産社会学者1名。各回2時間、2回の会議で検討し、速記士を雇用し検討内容を記録した。
結果と考察
1.助産師卒後臨床研修プログラムの提言:卒後5年目までの努力目標が明確な本プログラムは、基本的留意点の1.助産師のアイデンティティを重視し5年間の到達目標を明らかにする、2.帰属地域の周産期医療の現状と地域間連携における自己の役割を認識する、3.結婚、妊娠・出産適齢期のワークライフバランス支援を重視する、4.新卒助産師の指導は熟練助産師が担い5年目までの助産師に付加を与えない、5.5年間で質の高い分娩介助300例を目標に自立した助産力育成を支援する、を合意した。年度毎到達目標は必要性と順序性が妥当で、有床診療所管理者は有用であるとした。しかし、病院は混合病棟が77.3%(n=595)と多く、新人助産師適正配置と研修システム構築に大きな阻害因子である(2012.日本看護協会調査)。混合病棟は、新生児の感染防止上も大きな問題点で、周産期以外の対象に時間が当てられ母親へ提供すべき助産ケア質保証が不十分で、至急政策的介入が必要である。
2.産婦人科医師や小児科医師の助産観変容に寄与し協働を進める提言:医学生や助産師学生時代から、IPE(専門職間連携教育)の概念で正常分娩を共に学ぶ。若い産婦人科医が正常分娩を理解していない現実があるため、産婦人科や小児科の研修医は、後期研修で熟練助産師の正常分娩や助産院分娩見学研修を行う。新卒助産師と後期研修医(産科・小児科)が共にカンファレンスを運営する。
3.病院内組織に助産部門を創設する提言:助産師の独立部門創設は、医師の信頼とバックアップが不可欠である。妊産婦に満足な出産ケアを提供するには助産師が必須。熟練助産師が量的に存在すれば専用病棟で院内助産ができる。裂傷ができた場合も、助産師が縫合する裂傷基準設定により院内医師指導の会陰裂傷縫合術研修と技術認定も可能となる。正常分娩は、診療報酬上は医療介入がなく若
手のバースセンター助産師を育成すると黒字になる。助産所経費は人件費割合が最も高いが複数の助産師で運営しても月に8.5件の分娩扱いで赤字にならない。主力は40代後半の熟練助産師で、20代の助産師育成が鍵である。
4.周産期地域医療における病院・有床診療所・助産所の連携交流の提言:包括地域内で正常分娩出向研修を策定する。所属施設で分娩数確保が困難な為に5年目までの研修プログラムが完結しない。分娩件数が多い有床診療所への出向は、有床診療所にマンパワーが得られ相互補完が成立する。行政が介在し実現する。オープンシステムで地域のクリニックや開業助産師と連携をとる。
5.産後6週間までの居宅訪問による助産ケア提供システムならびに拠点創設の提言:産後早期退院傾向である反面、産褥期母子への育児生活支援政策が極めて不充分である。産褥6週間まで、助産師をリーダーとする看護師、産褥ヘルパー混成チームが支援提供拠点を創設し、母子へのサービス充実が必要である。母乳ケアが順調に進むとよい母子関係を築く。未熟児等母子分離期間があった母子を心理的に育てるためにも拠点が必要で子供虐待防止の観点からもメリットが大きい。助産院や母子センターなどの入所型と居宅訪問型を創設。約28,000名の潜在助産師のマンパワー化政策は、女性の雇用促進を内包する。財政基盤として、出産手当にパック、クーポン券、産褥版診療補助券が検討された。
2.産婦人科医師や小児科医師の助産観変容に寄与し協働を進める提言:医学生や助産師学生時代から、IPE(専門職間連携教育)の概念で正常分娩を共に学ぶ。若い産婦人科医が正常分娩を理解していない現実があるため、産婦人科や小児科の研修医は、後期研修で熟練助産師の正常分娩や助産院分娩見学研修を行う。新卒助産師と後期研修医(産科・小児科)が共にカンファレンスを運営する。
3.病院内組織に助産部門を創設する提言:助産師の独立部門創設は、医師の信頼とバックアップが不可欠である。妊産婦に満足な出産ケアを提供するには助産師が必須。熟練助産師が量的に存在すれば専用病棟で院内助産ができる。裂傷ができた場合も、助産師が縫合する裂傷基準設定により院内医師指導の会陰裂傷縫合術研修と技術認定も可能となる。正常分娩は、診療報酬上は医療介入がなく若
手のバースセンター助産師を育成すると黒字になる。助産所経費は人件費割合が最も高いが複数の助産師で運営しても月に8.5件の分娩扱いで赤字にならない。主力は40代後半の熟練助産師で、20代の助産師育成が鍵である。
4.周産期地域医療における病院・有床診療所・助産所の連携交流の提言:包括地域内で正常分娩出向研修を策定する。所属施設で分娩数確保が困難な為に5年目までの研修プログラムが完結しない。分娩件数が多い有床診療所への出向は、有床診療所にマンパワーが得られ相互補完が成立する。行政が介在し実現する。オープンシステムで地域のクリニックや開業助産師と連携をとる。
5.産後6週間までの居宅訪問による助産ケア提供システムならびに拠点創設の提言:産後早期退院傾向である反面、産褥期母子への育児生活支援政策が極めて不充分である。産褥6週間まで、助産師をリーダーとする看護師、産褥ヘルパー混成チームが支援提供拠点を創設し、母子へのサービス充実が必要である。母乳ケアが順調に進むとよい母子関係を築く。未熟児等母子分離期間があった母子を心理的に育てるためにも拠点が必要で子供虐待防止の観点からもメリットが大きい。助産院や母子センターなどの入所型と居宅訪問型を創設。約28,000名の潜在助産師のマンパワー化政策は、女性の雇用促進を内包する。財政基盤として、出産手当にパック、クーポン券、産褥版診療補助券が検討された。
結論
「本提言」(案)は、平成22年度調査、23年度本調査、諸資料を基礎に、周産期を囲む有識者13名で検討し、「助産師の正常分娩担当システムの構築に向けた政策的提言」を組み上げることになった。
公開日・更新日
公開日
2014-03-28
更新日
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