社会保障費統計3系列の整合化・連結化に関する研究

文献情報

文献番号
199800027A
報告書区分
総括
研究課題名
社会保障費統計3系列の整合化・連結化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
八代 尚宏(上智大学教授)
研究分担者(所属機関)
  • 中村洋一(麗澤大学教授)
  • 小塩隆士(立命館大学助教授)
  • 浜田浩児(大阪大学教授)
  • 勝又幸子(国立社会保障・人口問題研究所室長)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第3年目の研究として、社会保障統計の3系列のうちもっとも頻繁に用いられる、国民経済計算の社会保障費用について考察し、社会保障費統計の整備に関する検討をおこなった。
研究方法
分担研究者が主体となって、情報の収集とまとめをおこなった。1998年度は、専門化を分担研究者得て、国民経済計算を中心とした社会保障費用統計に関する比較検討をおこなった。
結果と考察
国民経済計算における社会保障部門を明らかにし、その最近の動向と解説を分担研究者の協力でおこなった。
「国民経済計算を使った社会保障分析の課題」(小塩隆士)では実際に社会保障の経済分析を手がけた経験から、国民経済計算と社会保障費統計の問題点を指摘し、改善のための提案をしている。
年金や医療、福祉など社会保障に関する経済分析を行う場合、マクロ経済全体や財政政策と関連づけて行うことが必要となる。その場合、国民経済計算と社会保障統計がうまく連動していると分析を効果的に進めることができる。全体としてみると、社会保障をめぐる統計数値は国民経済計算と社会保障費統計との間で十分整合性を保っていると評価することができる。問題は、医療・年金・福祉など社会保障の個別分野における議論をそれぞれに積上げ、それを国民経済計算ベースに乗せてマクロ経済全体の枠組みの中で検討できるかである。社会保障費統計においては、制度別に支出と収入が集計されているため、個別分野の分析(機能別)が困難である。特に共済組織で給付される年金と医療の給付を分割することが制度別では困難である。社会保障給付費では制度別社会保障給付費の再集計をしているが、この整備が1992年まで「社会保障費統計の基礎と展望」(有斐閣1995)で行われているが、その後のデータについては公表されていない。継続した公表によって、経済分析を行うものには有用な資料となりえる。
経済企画庁『高齢化の経済分析』(1997)における、年金財政の将来推計の作業において、どのような統計処理が行われたかを概観した。
社会保障の経済分析を行う場合、国民経済計算はマクロ経済や財政との関連を分析できる土俵を提供してくれるが、社会保障そのものの分析には数字がマクロ的過ぎる。一方、現行の社会保障費統計は、詳細な情報を提供してくれるものの、マクロ的な分析を進めるためにはいくつかの点で再構成が必要となる。両者の長所を生かしながら、ユーザーの追加的作業をできるだけすくなくするような方向でも、統計の修正が求められる。
「国民経済計算における社会保障と社会保障費」(浜田浩児)では、国民経済計算における社会保障に関する統計の見方を詳しく解説している。
社会保障統計の課題として、社会保障費統計を経済循環の中に位置付けようとするならば、国民経済計算の一環である社会保障移転・負担と整合的なものにする必要が生じよう。ただし、係数を改定するとなると、時系列比較ができるよう、遡及して改訂する必要があり、過去の年次についえても同じ改訂ができるか、基礎資料等を検討する必要がある。このため、国民経済計算全体の改訂が行われる際に考えるの妥当であろう。
「(補論)非営利主体による医療・社会福祉サービスの提供の意義」(浜田浩児)においては、非営利団体および自治体等の非営利主体によるサービス供給の経済厚生上の意義を医療・社会福祉サービス供給者として、経済モデルを使って検討している。
「改訂SNAと社会保障関係支出」(中村洋一)においては、1993年以来新基準への移行が検討されてきた「改訂SNA」の概要について、社会保障関係支出に焦点を絞った解説をしている。日本の国民経済計算が改訂されるのは、2000年が予定されている。改訂後日本SNAの姿を想定して社会保障関係の移転、支出を中心に主体系における改訂の報告について概観している。
社会保障関係の改定の主要点は、第1に、負担と給付の間に直接的な関係がある場合に年金基金を金融機関として一般政府から分離すること、第2に、医療費の医療保健負担分を一般政府の最終消費支出として取り扱うことにある。第1の点は、他の改訂点ともあわせて所得・支出勘定の拡充をもたらし、第2の点は、いわゆる消費概念の二元化とも関わるものである。
「資料:国民経済計算における社会保障費の推計方法」(勝又幸子)においては、国民経済計算における社会保障関係の費用の推計方法について、調査した結果をまとめている。定義や考え方は浜田がまとめているが、具体的にどのような方法でその費用を推計しているかについて解説している。一般政府の目的別支出で「保健」「社会保障・福祉サービス」にどのような費用を集計しているのか、一般政府の中に含まれる地方政府(地方自治体)の費用はどのように集計されているのかなど、直接ヒヤリングによって得た貴重な資料としてまとめた。
結論
社会保障費統計3系列の整合化・連結化を実現して行くことの重要性を確認した。個別統計の研究や比較を行うにとどまらず、それぞれの統計の改訂に「整合化・連結化」の実現への具体的作業を組み込んで行くことを提案したい。
2000年をめどに準備がすすめられている改訂SNAへの移行時に、社会保障費用統計が改定SNAとの整合性を持たせる形で改訂されるよう提言する。そのためには、社会保障費データの適切な開示が求められる。

公開日・更新日

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