職域における慢性ウイルス性肝炎患者の実態調査とそれに基づく望ましい配慮の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201137001A
報告書区分
総括
研究課題名
職域における慢性ウイルス性肝炎患者の実態調査とそれに基づく望ましい配慮の在り方に関する研究
課題番号
H23-実用化(肝炎)・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 哲(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀江 正知(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 和田 耕治(北里大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(肝炎関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
職域においてウイルス性肝炎の検査を実施することは、感染者の早期発見の手段として有用であり、肝硬変や肝癌への進展に対して、早期介入ができると考えられる。しかし、わが国の労働者のウイルス性肝炎に関する知識・認識や、ウイルス性肝炎の検査、ウイルス性肝疾患に罹患した労働者への就業上の配慮についてその実態は明らかでない。本研究ではこれらの実態を明らかにするため、平成23年度に事業者、産業医、一般労働者を対象とした調査を行った。
研究方法
研究代表者の渡辺は、神奈川、東京、埼玉の事業者から無作為抽出された25000社を対象として調査を行い、7109の調査票を回収(回収率29.1%)した。研究分担者の堀江は、ウイルス性肝疾患に罹患した労働者への望ましい就業上の配慮のあり方を明らかにするため、産業医が労働者に対して行った就業上の措置、配慮等の事例を87例収集した。研究分担者の和田は、調査会社に自主的に登録をしている人から働く世代(20から69歳)を対象に約3000名を抽出、Web調査を実施し、3129名の回答を得た。
結果と考察
事業所を対象とした調査の結果、厚生労働省からの通達の周知度は10.3%と低く、肝炎ウイルス検査実施率も17.9%にとどまっていた。肝炎に関する啓発活動を実施している事業者は6.1%、肝炎の治療が必要な従業員について就業上の配慮がある事業者は24.7%であった。さらに衛生管理者への啓発活動として、2012年3月8日に公開講座「職場におけるこれからの肝炎対策」を開催し、257名の参加者を得た。事例では、産業医の勧奨により受診につなげられた事例、就業上の措置により治療が円滑に継続できた事例が認められ、産業医が積極的に関わるメリットが考えられた。判断に苦慮した事例として海外赴任の可否に関連した事例が認められた。職場の健診時にウイルス性肝炎の検査を希望する者は経験者も含めると78.3%と高かったが、職場での感染者に対する偏見を有する者が2-3割存在した。
結論
肝炎ウイルス検査受診率向上や、肝炎患者労働者への職場での偏見を減らして就業上の配慮を得られ易くするために、一層の啓発活動の実施が望まれる。肝炎患者労働者が治療を円滑に行うための配慮、海外赴任に関連した配慮の際には正確な病状の把握が必要で、これにより産業医と衛生管理者、職制との連携がスムーズになった事例が認められた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201137001Z