少子化をふまえた看護教育のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
199800025A
報告書区分
総括
研究課題名
少子化をふまえた看護教育のあり方に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
田村 やよひ(看護研修研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋弘子(看護研修研究センター)
  • 若松順子(看護研修研究センター)
  • 内村美子(看護研修研究センター)
  • 和賀徳子(看護研修研究センター)
  • 石渕夏子(看護研修研究センター)
  • 橋本祐子(国立病院東京医療センター附属東が丘看護助産学校)
  • 菅原文子(看護研修研究センター)
  • 林幸子(看護研修研究センター)
  • 坪倉繁美(厚生省健康政策局看護課)
  • 池田真理(看護研修研究センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1 少子化社会における看護基礎教育に関する教員の認識と課題
2 看護教員養成講習会カリキュラムとその運営の実態
研究方法
目的1について、調査対象者は全国の看護婦学校養成所(3年課程)の教務主任・学科主任等看護教育カリキュラムの運営の責任者とした。就職指導についても質問することから、平成10年3月に卒業生を出した学校養成所とした。 対象数は学校養成所の種別を考慮し、大学40校全数、短期大学68校全数、養成所は総数478校から2分の1層化無作為抽出で239校を選出、合計347校とした。目的2についての調査対象者は、平成10年度開講の全数である17道府県の教育担当者とした。調査方法:郵送留め置き法。調査期間;平成10年10月~11月。調査票は研究者らが開発した。倫理的配慮;参加への同意は、本調査への回答があったことで回答への同意があったとみなした。コンピュータ処理により、個人を特定できないようにし匿名性を確保する。結果(概要)の送付と関係学会への報告によりフイードバックする。
結果と考察
目的1についての調査への有効回答は243校70.0%で、学校種別では大学30校75.0%、短期大学40校58.8%、養成所173校72.4%である。この243校中、この3~4年以内に入学試験科目の変更をしたのは大学40%、短大20%、養成所31.2%である。推薦入学・社会人入学の制度は学校種別にかかわらず70%以上の学校がとりいれており、この制度を設けた時期は1991年以降に集中している。応募者数の変化については変化なし42%、減った37.9%、増えた17.7%である。入学者の質に変化があると回答したのは養成所87.9%、短大65%、大学26.4%である。質の変化として養成所、短大が第一にあげているのは「基礎学力の低下」である。入学者の確保についての方策については、大学・短大・養成所で特徴がある。少子社会に対する認識の違いが対応に反映していると推察されるが、今後予測される入学者の確保についての課題に対して、一般社会人等広い年齢層の入学枠を拡大する必要がある。学生募集のためのPR方法としての資料配布は、ほとんど全校が実施している。関係者を学内に招くことは、大学・短大80%、養成所は50%以下である。少子社会で育ってきた学生に対する教育の充実についての調査項目のうち、教育方法では、学生のレデイネスを考慮した補強教育は34%が実施、学生の自己表現を促すための教師トレーニングの実施はいずれの学校も少なく、コンピュータによる授業の実施は大学・短大60%、養成所は40%である。教員の資質の向上のための取組みについては、図書教材費の保障60.5%、授業についての意見交換59.3%である。学校種別の内訳では大学・短大は教員の資質の向上のための取組みについて多い取組みが類似した結果を示したが、養成所はその取組みの項目・割合が少ない傾向を示した。大学・短大・養成所間における聴講生受け入れや、単位互換制などの相互交流の実践はごく少なく、今後の実現に向けて取り組んでいる、考えていない、との回答とが分かれた。少子社会のなかで進学率が上昇する一方で学生の低学力が問題にされているが、看護基礎教育のなかでは補強教育が3割の学校で実施されており、この問題に向けた対策がとられ始めていると見ることができる。しかし、教育方法について他の項目をみると、とてもそうであるとの回答よりも下位の段階に分散しており、少子社会における対策を模索している状態と見ることができる。教育の充実に関する調査項目全般にわたって、大学、短大、養成所間に差があり、養成所における対応はまだ少ない状況で教育の充実ということでの課題が大きいことを示唆している。相互交流に関する今回の調査結果は、平成10年一部改正の学校教育法により、今後は大きく変わることが予測される。就職指導について、大学・短大・養成所の7割は「継続教育が充実した職場を勧める」に対して高得点の回答をした。次いで多いものは学校種別で異なり、大学の7割は「専門領域」「自分で就職先を選択」「国際的な場での活動を視野に入れた指導」について、とても指導すると回答し、短大・養成所との違いが見られた。短大・養成所の第二位は「基本的な看護が行える職場を勧める」であり、大学が重視する項目と違いがある。就職
指導の体制については担当者設置の有無と、担当者の人数において、短大・大学と養成所には違いが見られ、養成所では担当者をおいている割合が少なかった。全国の看護教員は、基本的な看護の実践と継続教育による学生の卒業後の成長を期待して就職指導を行っている。「新たな職場開拓」「面接の受け方指導」を指導しているとする回答は少なく、看護以外の職域のような就職に対する緊迫感は少ない。しかし、今後は求人状況の変化が予測され、就職指導もこのような状況に合わせて変化していくものと考えられる。大学における就職指導は短大や養成所にくらべて、新たな職場開拓の必要性を明確に意識した取組である。大学の多くは歴史が浅いことを反映していると考えられる。少子高齢社会においては、学校種別を問わず、活動の場を広く見据え看護の質の向上の視点から現状を分析して就職指導を考えていく必要がある。
目的2についての調査への回答は、8か月看護教員養成講習会の平成10年度開講の17道府県の教育担当者全員から得られた。カリキュラムの総時間数は900~940時間、基礎分野・教育分野についての教育内容は健康政策局通知とほぼ同様に計画されているが、専門分野では授業科目・時間に違いがあり、特に看護教育方法演習・看護婦教育課程演習の時間数、専門領域別看護の開講科目は各県に独自性が見られた。新しい科目である教育実習は、実習内容、運営面ともに試行の段階という実態であった。実習内容として、受講生全員が実施している率が高い講義の実施も17県中9県であり、講義の他は校内実習指導・臨地実習指導・カンファレンス指導の体験は少ない現状である。
結論
1.入学者の確保に関して7割以上の大学・短大・養成所が推薦入学枠をもっている。社会人入学は大学・短大の4割、養成所1割である。応募者数の変化に関しての認識は「変化なし」「減った」が半々である。学生募集のPR方法は大学・短大・養成所により特色がある。2.少子社会で育った学生に対して教員の教育方法は、看護学における技術の重視、学生のレデイネスを考慮した補強教育は大学・短大・養成所とも重視しているが、コンピュータの活用等の項目では大学・短大に比べ養成所は少ないという違いがある。大学・短大・養成所の相互交流は極めて少ない。3.少子社会における看護教育への意見は、多様な学生像・教育機関としての問題をもとに量から質への転換をめざす看護教育のあり方として、各学校レベルから国策レベルでの対応まであげられた。4.就職指導は大学・短大・養成所とも7割が「継続教育が充実した職場を勧める」をあげた。この他の指導内容については大学と短大・養成所に違いが見られた。就職指導担当者は大学・短大の多くに置かれているが、養成所は学生定員・設置主体による違いがある。5. 全国17箇所の8か月教員養成講習会のカリキュラムは厚生省の基準に則った科目だてで900~940時間行われていた。新設科目である教育実習での受講生全員の授業実践は半数の県にとどまった。この他の科目も個々の県により、受講生の体験の程度が異なっている。この教員養成講習会の課題としてあげられたのは、教育についての情報提供など担当者支援の仕組みをつくることである。

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