移植医療とアイバンクのシステム化に関する研究

文献情報

文献番号
199800024A
報告書区分
総括
研究課題名
移植医療とアイバンクのシステム化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
篠崎 尚史(東京歯科大学角膜センター)
研究分担者(所属機関)
  • 木下茂(京都府立医大眼科)
  • 八木明美(財静岡県アイバンク)
  • 入江真理(財富山県アイバンク)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アイバンクの業務の特に医学的項目に関する部分と、コーディネーター活動に 関する業務のフォーマット化、マニュアル化による効率化、業務の画一化、徹底化を目 的としている。
研究方法
分担研究者等によりアイバンク・コーディネーターの業務マニュアルを作成し メンバーのアイバンクにて実用した。アイバンクにおける提供角膜の評価、ドナーのス クリーニングをフォーマット化し、当時に利用した。また、コーディネーターの活動を 活性化する為に、インターネットを利用した報告並びに複数同時電話回線(ブリッジ回 線)を利用した報告会を設けて情報交換を行った。その先駈けとして、参加コーディネ ーターに対してコミュニケーションスキルワークショップを実施して、円滑なコミュニ ケーションが行なえるよう指導した。
結果と考察
アイバンクのマニュアルに関しては、これまで⑲日本眼球銀行協会より指示 されている使用禁忌に加え、各疾患の開設を加えたドナー適応基準をコーディネーター マニュアルに記載した。その結果、コーディネーター業務報告会以外にもドナー適応に 関する医学的質問が実施2ヶ月間に8件寄せられた。厚生科学研究事業で実施されてい る主任研究者らの実施したアイバンクのアンケート調査からもアイバンクにおけるドナ ースクリーニングの不徹底が問題化されており対策の必要性がある。ドナーの評価に関 しては、ドナースクリーニングのフォーマット化により、コーディネーターから情報の 欠落を防ぐのに有効との意見が全員より出された。しかし、角膜組織の評価に関しては 評価する人員により差異が現れるため、言語の共通化に対する指導が必要である事が判 明した。
これまでのアイバンク活動に欠落していた、アイバンク所属の専門家の存在が不可欠 であることは予想されたが、これらの人材の活動範囲、内容を定義したものは存在しな かった。今回、本研究で特に業務の要となるコーディネーターの活動のマニュアル化、 記録資料のフォーマット化により、その多くの部分が効率的 、画一的に行なえる事が 判明した。アイバンクの医学的情報の徹底化は、アイバンクの人材の医学教育、評価基 準の徹底等の問題もある。今回の研究研究においてドナー評価をフォーマット化したこ とで、コーディネーターが項目チェックを行なえ、検査項目の欠落を防ぐのには有効で あることが判明した。欧米のアイバンクでは全国共通のフォーマットで医療情報、ドナ ー情報、組織評価が行われており、我が国においてもこのフォーマットに基づいたシス テム化が、アイバンク業務の画一化、安全対策の徹底には不可欠であると思われる。
結論
今回の研究でアイバンクはその社会的責任を実行する為に、特にコーディネーター の育成とその業務マニュアルの作成、医療業務に関わる情報のフォーマット化は不可欠 である。コーディネーター間のコミュニケーションを活発に行う事で、医療情報等の交 換、ドナー基準の徹底等の安全対策が有効に行なえる。したがって、各バンクにおける メディカルディレクターの教育と配備を行い医学的事項に対応することが必要である。 また、メディカルディレクターの指導によりアイバンク・コーディネーターを育成して 行く事が安全で公正な業務には必要であり、現在、慈善団体などの浄財により運営され ているアイバンクで、このような専門家を教育、育成し雇用する事は事実上不可能であ る。この件に関して、移植医療の安全性確保と公正化の担保の為に政策的に支援する事 が必要と思われた。

公開日・更新日

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