医療施設内に置ける医療廃棄物処理システムに関する研究

文献情報

文献番号
199800022A
報告書区分
総括
研究課題名
医療施設内に置ける医療廃棄物処理システムに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
辻 吉隆(国立医療・病院管理研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 特になし
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最近の医療機関から発生する廃棄物は、医療機関の機能の多様化と近代化に対応して多種多様になると同時に、廃棄物量そのものの増加をもたらしている。
他の事業所から排出される廃棄物は、焼却時にダイオキシン等のケミカルハザード(化学物質的危害)の排出が問題となるが、医療施設から排出される廃棄物においては、ケミカルハザードに加えて、バイオハザード(感染危害)の排出が問題となる。
この度の改正により、各自治体や国公立の病院も時施設内での焼却を中止し、外部委託の方向を取りつつあるが、一方、中間処理業者の処理システムの改修や更新も必須となるため、これまでの契約方法では委託を受け続けることが困難になってくることは明らかである。特別管理廃棄物の厳重な処理が義務付けられている感染性廃棄物が、その他の産業廃棄物と同じ様な処理をされていたり、中には山中に不法投棄されているニュースも後を絶たない。
当研究においては、医療廃棄物からの二次感染を防止するために、医療管理面及び経営管理面から効果的・効率的な院内における医療廃棄物処理システムの開発を行うことを目的としている。
研究方法
平成10年度においては、ダイオキシン類の排出抑制が安定して管理できる大型焼却炉による処理の方法の可能性をさぐるべく、2次医療圏との対応を視野にいれながら、各自治体が所有している炉による医療廃棄物の処理についてアンケート調査を行った。
結果と考察
アンケートを出した490の自治体の内、286自治体から回答があり、その結果
・医療廃棄物の受け入れに対する対策要綱を定めているか又は検討中の自治体は約7%に過ぎない。
・在宅医療の感染性廃棄物を受け入れているか又は検討中の自治体は約30%ある。
・また、医療機関からの感染性廃棄物を受け入れているとする自治体も約27%ある。
・しかし、自治体の収集が望ましいとするものは約3.5%しかなく、約60%の自治体が受け入れは望ましくないとしている。
・法的根拠を示してもらいたいとする自治体も約17%(重複回答)
あることが分かった。
結論
廃棄物の区分は大きく、一般廃棄物と産業廃棄物とに分けられ、一般廃棄物は市町村の責任において処理されている。一方、産業廃棄物は排出事業者の責任において処理されることとなっている。
また、医療機関から排出される廃棄物のうち、感染性のあるものは、特別管理廃棄物として、排出事業者の責任において施設内または処理業者への委託により処理することを原則としている。特にこの感染性廃棄物の処理に対しては、安全で効率的な処理方法が選択されるべきである。
これまで、施設内での処理の方法としては、確実で簡便な焼却炉を用いた焼却処理が一般的であったが、この度のダイオキシン対策規制により、多くの医療施設では、構造基準を満たす焼却炉の導入経費の問題や、維持管理経費の面から、新規導入が見合わされるようになってきている。また、焼却炉に代わる完全確実で安価な処理システムとして、「乾熱破砕滅菌装置」や、「炭化装置」などが改良され提案されてきているが、いずれも過渡期の製品にとどまっている。
次の選択肢として残されるのが、外部委託の手段である。外部委託処理には民間処理業者に
よるものと、市町村等の既設の焼却炉や、地域支援病院等に新たに処理センターを設けて共同処理を行なう方法などがある。
中でも、自治体の焼却炉においては、今回のダイオキシン類の排出規制にあわせて、炉の更新や改修がなされてきているところであり、各家庭や地域でのごみの減量化が推進されて、処理能力に余力が出てきているところである。
このことから、自治体の既存炉を利用して医療廃棄物の処理を行なうことができると最も安全で効率的であるといえる。
自治体によっては、医療施設の感染性廃棄物の受け入れを行っているところもあるが、多くの自治体での対応は、感染性廃棄物の受け入れに対してはまだまだ消極的である。
感染性廃棄物の安全確実な処理の一方法として、自治体の焼却炉の積極的利用が図れる道が開かれることが望まれる。
また、各医療機関においては、環境負荷の少ない資材の購入計画や、廃棄物の分別収集、排出抑制、再利用や資源ごみのリサイクルに努力していくべきである。
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