病院薬剤師の人員配置基準に関する研究

文献情報

文献番号
199800021A
報告書区分
総括
研究課題名
病院薬剤師の人員配置基準に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
秀嶋 宏(社)全日本病院協会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現行の薬剤師の人員配置基準は調剤数80につき1人とされているが、この基準は昭和23年に医療法施行規則に規定されて以来、病院薬剤師の業務が大きく変化しているのにもかかわらず、見直しがなされていない。医療審議会意見具申(平成8年4月25日)においても「調剤技術の進歩とともに服薬指導や薬歴管理等の病棟業務の増大という状況を踏まえ、業務に応じて適切な数の薬剤師を配置する観点から、病棟単位に薬剤師1人を配置するなど入院患者数等を考慮した基準に見直すことが適当である。」と指摘されている。
病院薬剤師の人員配置基準の見直しに当たっては「薬剤師が服薬指導等の病棟において果たす役割及び外来患者に対する調剤等の病院外来において果たす役割をそれぞれ考慮した基準とし、その基準の設定に当たっては、現状の病院薬剤師数の実態を踏まえたものとする」などの基本的な考え方は示されているものの、新たな基準の妥当性を判断するためのデータが十分ではない。
本研究班では、病院を対象に大規模なアンケート調査を実施し、病床数、設置主体(公立、私立)などの点において偏りのないデータを収集し、基準見直しに必要となる基礎資料を提供することを目的とする。その際、厚生省担当部局とも連携を密にとり、その要請に応えるかたちでデータの分析結果を報告することとしており、行政研究としての重要性及び緊急性は極めて高いと考える。
研究方法
薬剤師の人員配置基準見直しは平成10年度中に実施することが予定されていたため、本研究も単年度計画で実施された。
平成10年4月にアンケート内容、データ集計方式等の検討を行った。5月に日本医療法人協会、全日本病院協会、日本精神病院協会に加入している約4千の病院へアンケートを郵送した。6月にアンケートの回収を行い、7月に調査票の整理を行い、不適切な回答については電話・FAX等により確認作業を行った。調査票の整理ができた段階で、業者にコンピュータ入力を委託した。9月に入力したデータの分析を行い、人員配置基準を見直しした場合の病院へ与える影響をシミュレーションした。
結果と考察
調査票を3,851病院に送付したところ、1,562病院から回答があった(回収率40.6%)。そのうち記入漏れ等を除いた有効回答数は1,462件であった(有効回答率38.0%)。病床種別に有効回答数をみると、その他病床のみ有する病院471件、老人・療養病床のみ有する病院115件、精神病床のみ有する病院555件であった。
本研究を実施する前の暫定基準(外来基準:75、入院基準:一般病床50、老人・療養病床90、精神病床125)に変えた場合の影響は、薬剤師増減でみると一般病床10.9%減、老人・療養病床0.3%増、精神病床8.1%増という結果となった。
標準人員を満たす病院の割合を集計すると、現行基準では、一般病床63.7%、老人・療養病床75.7%、精神病床60.9%であるが、暫定基準では、一般病床62.4%、老人・療養病床67.0%、精神病床54.1%であった。
標準人員を満たす病院の割合が、概ね8割を超えるような基準をシミュレーションにより求めたところ、外来基準:75、入院基準:一般病床70、老人・療養病床150、精神病床150という結果になった。ただし、病床規模別の分析を行った結果、一般病床のうち100床以下の小規模病院のものについては、75.8%しか満たさず、入院基準を100に緩和させた場合に80.4%と8割をクリアできることが明らかになった。
結論
本調査は、現状の人員配置の実情を踏まえ新たな人員配置基準を設定するという基本的な考えに基づいて実施された。新基準の設定に当たっては、「薬剤師の必要数と実際の配置数がプラスマイナスゼロとなるところに基準を設定する」と「8割の病院が配置基準を満たすように基準を設定する」という2通りの考え方に基づき検討がなされたが、最終的には後者の考え方に基づき基準の設定が行われた。
新たな基準は薬剤師が病棟において果たす服薬指導等の役割と外来において果たす調剤等の役割を、それぞれ反映できるように入院と外来を分けて設定することとされていたところ、入院基準については、特定機能病院の薬剤師配置基準の経過措置(入院患者35名に1人)を参考に、医師の基準との均衡を考慮して一般病床70、老人・療養病床150、精神病床150と設定することが適当という結論に至った。また、外来基準については、標準人員を満たす病院の割合が、概ね8割を超えるように設定し、院内処方せん75枚につき1人とすることとなった。さらに病床規模別に見た場合に、100床以下の小規模病院の薬剤師の配置数が少ないことが明らかになったことから、これらの病院については入院基準を75から100に緩和させることが適当との結論に至った。
ただし、今回の調査は回答数が1,562病院(回収率40.6%)と少数であったことから、これをもって薬剤師基準の新基準を確定するまでには至らず、医療審議会の答申においても3年後を目処に見直しすることを条件に暫定基準として認められることになった。
今回のアンケート調査では、実際に配置されている薬剤師の数と、入院患者数及び院内処方せん枚数との関係を調査したものであり、厳密な意味での薬剤師の必要数を求めたものではない。3年後の再見直しに際しては、病棟及び外来において薬剤師が果たしている役割を定量化した上で、その業務量に見合う薬剤師の数を議論する必要があると思われる。
今回は、データに限りがあったことから、現状追認型の基準見直しとなったが、人員配置基準を入院、外来に分けて設定し、病院薬剤師が果たしている役割をより正確に反映できるようにした点において画期的であったと思われる。

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