健康危機管理事態において用いる医学的対処の研究開発環境に関する研究

文献情報

文献番号
201134005A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機管理事態において用いる医学的対処の研究開発環境に関する研究
課題番号
H21-健危・一般-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 勤(長崎大学 熱帯医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 黒木 由美子((財)日本中毒情報センター)
  • 明石 真言(放射線医学総合研究所緊急被ばく医療研究センター)
  • 近藤 久禎((独)国立病院機構災害医療センター臨床研究部)
  • 見理 剛(国立感染症研究所細菌第Ⅱ部)
  • 諸熊 一則(化学及血清療法研究所第Ⅰ製造部)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所ウイルスⅠ部)
  • 川上 浩司(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、CBRNテロ事態発生時の被害軽減を目指した「テロ対抗医薬品」の事前準備のあり方を検討するものである。「テロ対抗医薬品」は、研究・開発・生産・供給・使用の各過程において、一般医薬品とは異なる困難を抱えている。本研究では、化学剤、生物剤、核・放射性物質(CBRN)テロに用いられる恐れのあるハザードを抽出し、優先して準備すべき医薬品を検討し、これらの質・量・供給を確保するシステムを提言する。
研究方法
米国と比べてギャップがあり、同等品が無いもののうち、炭疽菌ワクチンについて、その必要性を検討した。また、ボツリヌス毒素に対する対抗医薬品について備蓄の現状や、供給体勢を調査した。化学テロ発生時の対抗医薬品については、国内外の現状を調査し、国内未承認の解毒剤の早期国内承認や開発への要望を提出し、必要な解毒剤の備蓄や供給体制等について検討した。放射性核種による体内汚染の治療薬としては、安定ヨウ素剤、プルシアンブルー、ジエチレントリアミン5酢酸を選び、備蓄体制の現状について分析した。また、米国における未承認医薬品の緊急時使用許可(EUA)と日本の特例承認制度に関し、その事例検証を含めた比較検討を行った。さらに、病原体研究における二面性を兼ね備える研究(DUR)に相当する研究例を調査した。
結果と考察
炭疽菌対策のステップとしてはワクチンの優先順位は低く、基本的な個人防護装備、迅速な検知体制、被曝露者の検査体制、抗生剤の迅速配布体制治療体制等の対策が重要である。ボツリヌストキソイドおよび抗毒素は、日本と米国に存在するが、研究者向けやボツリヌス症の治療用であり、バイオテロ対策を特に意識したものではない。化学剤、核・放射性物質に対する医薬品については、国家備蓄のシステムが存在しないという現状が明らかとなった。
結論
生物剤では、米国でもまだ未承認ではあるものの、かなりの開発段階に進んだ医薬品が報告されつつある。万が一の際にはこういった医薬品の使用が可能かどうか検討を進めていく必要がある。施策の最優先事項として、対化学剤、核・放射性物質について、市場形成のサポートが最大の課題である。これらの対抗医薬剤に対して、有効期限を考慮した中長期的な国家購入を計画し、都道府県(あるいは政令指定都市等)に薬剤管理を委託する備蓄モデルを提案する。

公開日・更新日

公開日
2012-12-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201134005B
報告書区分
総合
研究課題名
健康危機管理事態において用いる医学的対処の研究開発環境に関する研究
課題番号
H21-健危・一般-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 勤(長崎大学 熱帯医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 黒木 由美子((財)日本中毒情報センター)
  • 明石 真言((独)放射線医学総合研究所緊急被ばく医療研究センター)
  • 近藤 久禎((独)国立病院機構災害医療センター)
  • 見理 剛(国立感染症研究所細菌第Ⅱ部)
  • 川上 浩司(京都大学大学院医学研究科医学部薬剤疫学分野)
  • 諸熊 一則((財)化学及血清療法研究所第1製造部)
  • 齋藤 智也(慶応義塾大学医学部熱帯医学寄生虫学)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所ウイルス第Ⅰ部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康危機管理事態を想定した際、これに対する医学的対処の事前準備は、被害軽減のために不可欠である。本研究は、健康危機管理事態の中でも、化学剤、生物剤、核・放射性物質(CBRN)によりテロリズム発生時を想定した、医学的対処の事前準備のあり方を検討するものである。医学的対処の中でも、予防薬、ワクチン、薬剤といった「テロ対抗医薬品」を対象とする。
研究方法
1年目に米国Centers for Disease Control and Prevention(CDC)等によりテロ使用の可能性が示唆されているハザード(化学物質、病原体、放射線物質等)の網羅的リストアップを行った。2年目は、ギャップ分析研究の対象として英国を加えて調査を実施した。ほか、国内における医薬品備蓄状況の調査、及び国際イベントの医療体制の構築に際しての準備状況の調査、諸外国の医薬品研究開発動向調査を実施した。3年目は、対テロ対抗医薬品研究促進に係るデュアルユース研究のあり方の検討、現場での医薬品投与に係る問題の検討を加え、テロ対抗医薬品の備蓄のあり方を検討し提言を作成した。
結果と考察
いくつかの個別ハザードに対する医薬品について詳細に検討する過程で、各医薬品の準備状況は一様ではなく、開発段階別に様々な問題点を抱えていることが明らかになった。 基礎研究から安定供給・配送までのステップの中で、本研究期間内に進捗が著しかったのが承認申請プロセスである。今回の研究期間に未承認医薬品の開発要望により、5薬剤は開発企業が決まり開発に着手し、うち2薬剤が承認された。「医療上の必要性が高い未承認の医薬品または適応の開発の要望」のフレームワークは、本プロセスの促進に極めて効果的であったものといえる。しかしながら、本プロセスの進展に伴い、次なる課題が「安定供給」であることが明確となった。
結論
日本において医薬品・ワクチンの備蓄供給システムとしては、ワクチン、抗毒素には対しては「重要医薬品確保事業」が存在する。しかし、化学剤、核・放射性物質に対する医薬品については存在しないのが現状である。これらの医薬品について、主要薬剤の開発企業も決定しているので、市場形成のサポートが次の課題である。ゆえに、有効期限を考慮した中長期的な国家購入を計画し、都道府県(あるいは政令指定都市等)に薬剤管理を委託する備蓄モデルを提案する。

公開日・更新日

公開日
2012-12-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201134005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
CBRN(化学剤、生物剤、核・放射性物質)テロに使われる恐れのあるハザードを抽出し、これらに対する医薬品の準備状況の日米のギャップ分析を行い、優先して検討すべきハザード及び医薬品を中心に詳細な検討を行い、海外の状況と比較しつつ関連する問題点を包括的に整理した。結果、施策の最優先事項として、化学剤および核・放射性物質のための対抗医薬品の市場形成のサポートが最大の課題であることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
化学テロ発生時における急性中毒の治療を行う解毒剤・拮抗剤のうち、メチレンブルー、MarkIキット、プルシアンブルー、ホメピゾールの4品目について、平成21年8月、厚生労働省による「医療上の必要性が高い未承認薬に関するパブリックコメント」募集に対し、日本中毒学会、(財)日本中毒センターを通じ開発要望を提出した。うちメチレンブルー、ホメピゾールについては、医療上の必要性が高いと評価され、開発企業が決定した。現在、承認申請へ向けて各企業が準備を進めている。
ガイドライン等の開発
2010年12月2、3日にメキシコで開催された世界健康安全保障行動グループ(GHSAG)の化学事態ワーキンググループにおいて、健康危機ハザードの網羅的リストと代表的対抗医薬品の承認・備蓄状況の一覧を発表し、各国における準備状況の比較表のプロトタイプとして検討された。
その他行政的観点からの成果
日本において医薬品・ワクチンの備蓄供給システムとして、ワクチン、抗毒素には対しては「重要医薬品確保事業」が存在するが、化学剤、核・放射性物質に対する医薬品については存在しないという現状が明らかとなった。これらの医薬品について、主要薬剤の開発企業も決定しているので、市場形成のサポートが次の課題であるという結論に至った。そこで、有効期限を考慮した中長期的な国家購入を計画し、都道府県(あるいは政令指定都市等)に薬剤管理を委託する備蓄モデルを提案した。
その他のインパクト
2009年11月4、5日に開催された世界健康安全保障イニシアティブ(GHSI)のワークショップにて、「天然痘ワクチンLC16m8の研究開発」と題して発表を行った。研究開発による新規医薬品の創出に向けたシステムの形成、医薬品承認に向けた動物データの利用等のルールの形成、多国間の共同備蓄システムとその配布にかかわる公平性や法的責任、認可に関する問題、備蓄と配布の効率的な管理システムの形成、緊急時の使用に関わる法的問題といった各国共通の論点とさまざまなアプローチが明らかとなった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
15件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
21件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201134005Z