カーボンナノマテリアルによる肺障害と発がん作用の中期評価法とその作用の分子機序解析法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201133015A
報告書区分
総括
研究課題名
カーボンナノマテリアルによる肺障害と発がん作用の中期評価法とその作用の分子機序解析法の開発に関する研究
課題番号
H22-化学・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
津田 洋幸(公立大学法人 名古屋市立大学 津田特任教授研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 良明(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 今泉 祐治(公立大学法人名古屋市立大学大学院薬学研究科細胞分子薬効解析学分野)
  • 酒々井 眞澄(公立大学法人名古屋市立大学大学院医学研究科分子毒性学分野)
  • 二口 充(公立大学法人名古屋市立大学大学院医学研究科分子毒性学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
45,618,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
炭素ナノマテリアルの毒性と発がん性を短期間に検出する目的で、ラットを用いたin vivo-in vitroシステムの確立を目的とし、作用機序を考慮した1.2.3.の骨組みにて一連の研究を実施した。

研究方法
被検物質は単層カーボンナノチューブ(SWCNT)多層カーボンナノチューブ(MWCNT)(M、N、S社製)、カーボンブラック(CB)、フラーレン(C60)を用いた。
1.発がんプロモーション/慢性毒性試験
肺内噴霧法による20週程度のin vivo中期発がんプロモーション作用、および必要に応じて52週の発がん性、慢性毒性試験、2. 炎症/増殖病変/免疫毒性等の解析のための9日間のin vivo短期試験、3. 初代肺胞マクロファージにin vitro曝露によるサイトカイン産生、細胞増殖とその因子の産生、免疫反応の解析、を実施した。
結果と考察
1.プロモーション作用/亜急性毒性試験
1)MWCNT-M:プロモーション作用は無かった(再実験中)。2)MWCNT-N/-Sの形状と大きさの影響について、篩板による濾過前および残存分画、製造時から形状と大きさの違う VGCF(針状)およびVGCF-X(毛玉状)では実施中。3)CB、C60は実施中。
2. 毒性発現機序解析in vivo短期試験
MWCNTの生体作用はサイズによって異なる可能性がある。
SWCNT-N、MWCNT-M、MWCNT-N, crocidolite は、胸腔マクロファージ内、縦隔リンパ節に、胸腔洗浄液に容易に見られ、肝、腎、脳には少量検出された。臓(肺)側胸膜中皮細胞増殖巣が誘発された。
3.in vitroマクロファージ負荷試験
各MWCNT-Nと-Mはマクロファーの培養上清はヒト中皮腫細胞に対して増殖活性を示した。
結論
MWCNTは肺胞において多くはマクロファージに貪食され、肺胞壁の炎症反応を起こす。MWCNT-M、-Nおよびcrocidoliteは、短期投与実験において、リンパ流を介して胸腔内へ移動し、胸腔内臓側胸膜中皮の過形成性増殖を惹起させた。これは肺から入ったMWCNTが中皮腫を発生させる可能性を示す。MWCNT-Mは、肺に対する発がんプロモーション作用を含めて生体作用はMWCNTの大きさや形態の分画成分に依存する可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2012-06-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201133015Z