化学物質の臨界期曝露が神経内分泌・生殖機能へ及ぼす遅発型影響の機序解明と指標の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201133013A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の臨界期曝露が神経内分泌・生殖機能へ及ぼす遅発型影響の機序解明と指標の確立に関する研究
課題番号
H22-化学・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 緑(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 美和(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部 )
  • 代田 眞理子(麻布大学 獣医学部)
  • 渡辺 元(東京農工大学 農学部)
  • 横須賀 誠(日本獣医生命大学 獣医学部)
  • 川口 真以子(明治大学 農学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
41,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、化学物質の臨界期曝露による遅発型影響の機序解明とリスク評価に有用な指標確立を目的とした。
研究方法
長期的影響から指標の確立を、初期変化から遅発影響発現機序解明について取り組んだ。横断的解析の促進の共通項目として、17α-ethynyl estradiol (EE) 20μg/kg新生児期単回皮下曝露群を遅発影響発現群として各分担の結果に組み込んだ。
結果と考察
1. 遅発影響の指標:性周期異常(持続発情)の早期化が最も鋭敏で、雄型乳腺の増加・卵巣等の形態学的変化が続いたが、発現には最大10ケ月間を要し、通常の毒性試験では検出できないことが明らかとなった。
2. 遅発影響の用量相関性:遅発影響の用量依存性の発現を確認した。また遅発影響は生体へのエストロゲン作用量(EE0.2?200μg/kg)で誘発され、その影響はエストロゲン受容体(ER)αを介して発現した。
3. 遅発影響の神経系への影響:行動学的解析より高用量EE投与では性行動・性選好性に異常が認められたが、EE20μg/kg投与で異常は明らかではなかった。高用量およびEE20μg/kg投与ともに海馬・嗅球の生後神経新生には影響は認められなかった。
4. 遅発影響の初期変化:生後14日齢のみEE0.02~200μg/kg全ての投与群で視床下部のkiss-1遺伝子発現が低下した。性成熟前よりEE20μg/kg以上で下垂体のホルモン産生の異常が観察された。性成熟前および初回排卵直後では、卵巣・子宮の形態変化、エストロゲン受容体感受性の変化、排卵調節機能の異常が認められた。また視索前野性的二型核の部分的雄型化が観察された。これらの結果は、初期から視床下部内分泌調節ニューロンの一過性低下および卵巣へ影響が初期より生じている可能性が示唆していた。

研究結果より、多くの遅発性影響の指標が検出された。性周期異常および雄型乳腺の発現は長期観察を要するものの、遅発影響指標としての感度は高いものであった。また遅発影響発現の機序については、上位中枢の内分泌機構が初期より変化しているだけでなく、卵巣、乳腺等エストロゲン関連臓器も新生児期曝露により直接影響を受け、遅発影響発現に関与する可能性も考えられた。一方で生後の神経新生や神経行動に遅発影響は認められなかった。
結論
本年度の研究により遅発影響検出の多くの指標と、機序解明につながる初期変化を捉えることができた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201133013Z