家庭用品に由来する化学物質の多経路暴露評価手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201133009A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭用品に由来する化学物質の多経路暴露評価手法の開発に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
神野 透人(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第一室)
研究分担者(所属機関)
  • 伊佐間 和郎(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第四室)
  • 酒井 康行(東京大学 生産技術研究所 物質・環境系部門)
  • 杉林 堅次(城西大学 薬学部)
  • 埴岡 伸光(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 香川 聡子(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第一室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
29,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的: 家庭用品から室内環境中へ放出される化学物質、特に準揮発性有機化合物 (SVOC) と呼ばれる沸点260-380℃の化学物質を主要なターゲットとして、室内空気やハウスダストなど複数の媒体を介する多経路 (経気道、経皮及び経口) 暴露を総合的に評価するための手法を開発・確立する目的で、以下の課題について検討を行った。
研究方法
研究方法: 室内環境中の暴露媒体間のSVOC分配を規定する物理化学的パラメーターの予測手法、家庭用品への直接的な接触によるSVOCの皮膚移行評価手法、経気道あるいは経皮暴露されたSVOCの生物学的利用率を推定するためのin vitro評価手法及び数理モデル、並びに暴露経路依存的な初回通過代謝のin vitro評価手法について一連の研究を実施した。また、暴露評価対象SVOCの選定やシミュレーションモデルの妥当性の検証に必要な実測データの収集を目的として、室内環境媒体中化学物質の網羅的な解析手法についても検討を行った。
結果と考察
結果と考察: CONFLEX(配座探索)/DFT(量子化学計算)/COSMO-RS法をピレスロイド系殺虫剤に適用し、実験的に求めた蒸気圧と推定値が極めて良好に相関することを示した。SVOCの皮膚移行では、DINCHなどフタル酸代替可塑剤についても評価を行い、PVCシートから皮膚への移行量と可塑剤のオクタノール-水分配係数の関係を示した。生物学的利用率の評価では、ヒト肺胞上皮細胞モデルにおいて器壁内表面へのSVOCの吸着を考慮に入れた数理モデルを構築するとともに、THP-1細胞共培養や肺サーファクタントの適用による肺胞上皮細胞モデルの高度化について検討した。ヒト皮膚S9を用いる代謝試験とSide-by-Side型拡散セル皮膚透過試験の組み合わせによるフタル酸エステル類の透過性及び皮膚中濃度の予測手法を示した。また、初回通過代謝に係る酵素としてリコンビナントCESによるフタル酸エステル類の加水分解特性を明らかにし、肝ミクロゾーム中のCESの寄与について考察した。室内環境媒体中化学物質の網羅的な解析では、ハウスダストを介するピレスロイド系殺虫剤の暴露について実態調査を行った。
結論
結論: 本年度の研究では、室内環境における主要暴露媒体の推定及び暴露経路依存的な生物学的利用率や初回通過代謝の評価について一連の手法を開発・確立した。今後、SVOCをはじめとする室内環境中の多種多様な化学物質に本法を適用することによって、多媒体・多経路暴露のスクリーニング評価が可能になるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2012-06-01
更新日
-

文献情報

文献番号
201133009B
報告書区分
総合
研究課題名
家庭用品に由来する化学物質の多経路暴露評価手法の開発に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
神野 透人(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第一室)
研究分担者(所属機関)
  • 野﨑 淳夫(東北文化学園大学大学院 健康システム研究科)
  • 伊佐間 和郎(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第四室)
  • 酒井 康行(東京大学 生産技術研究所 物質・環境系部門)
  • 杉林 堅次(城西大学 薬学部)
  • 埴岡 伸光(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 香川 聡子(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部第一室 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的: 家庭用品から室内環境中へ放出される化学物質、特に準揮発性有機化合物 (SVOC) と呼ばれる沸点260-380℃の化学物質を主要なターゲットとして、室内空気やハウスダストなど複数の媒体を介する多経路 (経気道、経皮及び経口) 暴露を総合的に評価するための手法を開発・確立する目的で、以下の課題について検討を行った。
研究方法
研究方法: 家庭用品から室内環境へのSVOC負荷量の評価及び暴露媒体間 (空気、粒子及びハウスダスト) のSVOC分配を規定する物理化学的パラメーターの予測手法、家庭用品への直接的な接触によるSVOCの皮膚移行評価手法、経気道あるいは経皮暴露されたSVOCの生物学的利用率を推定するためのin vitro評価手法及び数理モデル、並びに暴露経路依存的な初回通過代謝のin vitro評価手法について一連の研究を実施した。また、実測データの収集を目的として、室内環境媒体中化学物質の網羅的な解析手法についても検討を行った。
結果と考察
結果と考察: 超小形チャンバー micro-CTEによる家庭用品からのSVOC放散速度評価手法を確立した。また、室内環境暴露媒体間のSVOCの分配に係るオクタノール-水分配係数等のパラメーター予測については、CONFLEX/DFT/COSMO-RS法が有用であることを示した。さらに、家庭用品中の可塑剤の皮膚への移行に関して、可塑剤の脂溶性と移行量との間に相関がみられることを明らかにした。一方、生物学的利用率の評価では、ヒト肺胞上皮細胞モデル及びSide-by-Side型拡散セル皮膚モデルによるSVOC透過量の評価系を確立し、数理モデルによる実測データの解析を行った。暴露経路依存的な初回通過代謝の予測では、リコンビナント異物代謝酵素の有用性を実証した。室内環境媒体中化学物質の網羅的な解析では、ハウスダストを介するSVOC暴露について実態調査結果を基に評価を行った。
結論
結論: 家庭用品から室内環境へのSVOC負荷量、及び放散されたSVOCの暴露媒体間 (空気、粒子及びハウスダスト) の分配を迅速にスクリーニングあるいは予測するための手法を確立した。また、多経路暴露における生物学的利用率の差異を予測するための手法として、肺胞上皮細胞や剥離皮膚を用いるin vitro評価系及び数理モデル、並びにリコンビナント異物代謝酵素による初回通過代謝評価系を確立した。本研究で開発・確立したこれら一連の手法を室内環境中の多種多様な化学物質に適用することによって、多媒体・多経路暴露のスクリーニング評価が可能になるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2012-06-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201133009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、室内環境における準揮発性有機化合物 (SVOC)の多媒体・多経路暴露のスクリーニング評価に必要な要素技術として、家庭用品から室内環境へのSVOC負荷量の迅速スクリーニング法及び暴露媒体間 (空気、粒子、ハウスダスト)のSVOC分配を予測するために必要な物理化学的パラメーターの推算手法を確立した。また、多経路暴露における生物学的利用率を予測する手法として、肺胞上皮細胞や剥離皮膚を用いるin vitro評価系と数理モデル並びにリコンビナント異物代謝酵素による初回通過代謝評価系を確立した。
臨床的観点からの成果
本研究は直接的な臨床応用を意図した課題ではないが、シックハウス症候群や喘息等の疾病の増悪因子としての室内環境化学物質という観点から、ハウスダスト中に侵害刺激作用を有する可塑剤代謝物が存在すること、家庭用品から皮膚への可塑剤の移行に関して著しい個人差が存在すること等の新奇性の高い知見が得られた。
ガイドライン等の開発
本研究ではガイドラインの開発に直接結びつく研究成果は得られなかった。
その他行政的観点からの成果
特定芳香族アミン類の暴露に関する調査あるいは室内環境におけるハウスダストを介する可塑剤暴露に関する調査など、本研究の一環として得られた調査結果が「薬事・食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会」並びに「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」において資料として活用された。
その他のインパクト
平成21年度化学物質リスク研究推進事業の一環として開催されたシンポジウム「化学物質と環境・健康」(仙台及び東京) において一般市民を対象に本研究の内容を講演した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
35件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
河上強志,伊佐間和郎,中島晴信 他
ガスクロマトグラフィー質量分析法による水性塗料及び水性接着剤中の有機スズ化合物の分析
薬学雑誌  (2010)
原著論文2
伊佐間和郎,河上強,志土屋利江 他
キャピラリー電気泳動法による家庭用品塗膜の鉛溶出量調査
生活衛生  (2010)
原著論文3
Sugibayashi, K., Todo, H., Oshizaka, T. et al.
Mathematical model to predict skin concentration of silicone membrane to predict skin concentration of drugs as an animal testing alternative.
Pharm. Res.  (2010)
原著論文4
Hanioka, N., Tanabe, N., Jinno, H. et al.
Functional characterization of human and cynomolgus monkey UDP-glucuronosyltransferase 1A1 enzymes
Life Sci.  (2010)
原著論文5
Hanioka, N., Yamamoto, M., Tanaka- Kagawa, T. et al.
Functional characterization of human cytochrome P450 2E1 allelic variants: in vitro metabolism of benzene and toluene by recombinant enzymes expressed in yeast cells.
Arch. Toxicol.  (2010)
原著論文6
Kawakami, T., Isama, K., Matsuoka, A. et al.
Analysis of phthalic acid diesters, monoester, and other plasticizers in polyvinyl chloride household products in Japan.
Environ. Sci. Health Part A  (2011)
原著論文7
Y, TakaharHanioka N,Hanioka N, Takahara Y, Takahara Y, et al.
Hydrolysis of di-n-butyl phthalate, butylbenzyl phthalate and di (2-ethylhexyl) phthalate in human liver microsomes.
Chemosphere  (2012)
原著論文8
Kawakami T, Isama K, Nishimura T
Survey of primary aromatic amines originating from azo dyes in commercial textile products in direct contact with skin and in commercial leather products in Japan.
J. Environ. Chem.  (2012)
原著論文9
Miyake Y, Mayumi K, Jinno H, et al.
cDNA Cloning and Functional Analysis of Minipig Uridine Diphosphate-Glucuronosyltransferase 1A1.
Biol. Pharm. Bull.  (2012)
原著論文10
Kokawa Y, Kishi N, Jinno H, et al.
Effect of UDP-glucuronosyltransferase 1A8 polymorphism on raloxifene glucuronidation.
Eur. J. Pharm. Sci.  (2013)

公開日・更新日

公開日
2016-06-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201133009Z