有害作用標的性に基づいた発達期の化学物質暴露影響評価手法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201133006A
報告書区分
総括
研究課題名
有害作用標的性に基づいた発達期の化学物質暴露影響評価手法の確立に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 淳(国立大学法人 東京農工大学 大学院 農学研究院 動物生命科学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 勉(星薬科大学 薬品毒性学教室 )
  • 手島 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部 )
  • 渡辺 渡(九州保健福祉大学 薬学部 動物生命薬科学科)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生 研究所 安全性生物試験研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
13,560,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
発達期の神経毒性、免疫毒性、発がん性に関して、ラットやマウスを用いた暴露実験を行い、有害作用を受ける標的細胞系譜の同定とその影響メカニズムの解明に基づいた評価系の構築を目指す。
研究方法
23年度は、In vivo神経発達評価では既に実施しているマンガン(Mn)やクロルピリフォス (CPF)の他、新たにニコチン(NIC)について、海馬歯状回でのニューロン新生に関わる分子発現解析を実施した。Mnではマウスでゲノムのメチル化解析も継続した。In vitro神経発達評価では、MnとNICを用いてES細胞分化誘導による評価系の構築を継続した。免疫機能評価では、メタミドフォス(MMP)による抗体産生能への影響とゲノムのメチル化変動解析を実施した。感染感受性評価では、MMPの解析を継続し、新たにCPFやMnによる影響を検討した。発がん感受性評価では、ラットENU経胎盤投与モデルを利用してNICの解析を終了した。
結果と考察
In vivo神経発達評価では、検索物質の全てでニューロン新生・移動への影響を検出し、今までに例のないニューロン新生障害物質の検出系としての活用を目指す。また、エピジェネティックな分子変化が不可逆的な障害検出に期待の高いことを見出した。In vitro神経発達評価では、MnとNICを用いてES細胞分化誘導に対する影響検出系の有用性を見出した。免疫機能評価では、MMPの評価により抗体産生能の抑制作用と、成熟後での影響の回復性を見出し、胸腺、脾臓のゲノムのメチル化変動遺伝子を捉えた。感染感受性評価では、MMPではRSウイルス培養マクロファージに対する直接作用を検証できたが、CPFやMnでは同様の影響を見出さなかった。発がん感受性評価では、ENUの経胎盤投与により安定した中枢神経腫瘍誘発性を確認したが、NICの評価では影響は認めなかった。
結論
In vivo及びin vitro神経発達評価では、用いた指標の新規神経発達影響評価系としての有効性を見出し、殊にエピジェネティックな分子変化の検出は意義が高い。免疫機能と感染感受性評価では、それぞれ抗体産生能、標的細胞培養系に対する感染実験の反応性に期待が高い。発がん感受性評価ではNICの評価を終了した。

公開日・更新日

公開日
2012-05-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201133006B
報告書区分
総合
研究課題名
有害作用標的性に基づいた発達期の化学物質暴露影響評価手法の確立に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 淳(国立大学法人 東京農工大学 大学院 農学研究院 動物生命科学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 勉(星薬科大学 薬品毒性学教室 )
  • 手島 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部 )
  • 渡辺 渡(九州保健福祉大学 薬学部 動物生命薬科学科 微生物学研究室 )
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
発達期の神経毒性、免疫毒性、発がん性に関して、ラットやマウスを用いた暴露実験を行い、有害作用を受ける標的細胞系譜の同定とその影響メカニズムの解明に基づいた評価系の構築を目指す。
研究方法
In vivo神経発達評価では、クロルピリフォス(CPF) 、アクリルアミド(ACR) 、ニコチン (NIC) 、マンガン(Mn)の暴露評価として海馬歯状回でのニューロン新生を中心とした分子発現解析を実施した。Mnではマウスでゲノムのメチル化解析も実施した。In vitro神経発達評価では、MnとNICを用いて各種培養細胞系やES細胞の分化誘導に対する影響評価を実施した。免疫機能評価では、CPFとメタミドフォス(MMP)による細胞性免疫への影響とMMPによるゲノムのメチル化変動を解析した。感染感受性評価ではCPF、MMP、MnによるRSウイルス感染病態への影響を検討した。発がん感受性評価では、ラットENU経胎盤投与モデルを利用してMnとNICの発がん修飾作用を検討した。
結果と考察
In vivo神経発達評価では、検索物質の全てでニューロン新生・移動への影響を検出し、今までに例のないニューロン新生障害物質の検出系としての活用を目指す。また、エピジェネティックな分子変化が不可逆的な障害検出に期待の高いことを見出した。In vitro神経発達評価では、各種培養細胞系やES細胞の分化誘導に対する影響検出の有用性を見出した。免疫機能評価では、CD4陽性T細胞のサブセットの存在比率の変化や抗体産生能への影響が鋭敏な指標と判断され、胸腺、脾臓のゲノムのメチル化変動遺伝子も捉えた。感染感受性評価では、標的細胞とサイトカイン産生影響評価系を確立した。発がん感受性評価では、ENUの経胎盤投与により安定した中枢神経腫瘍誘発性を確認したが、MnとNICの評価では影響は認めなかった。
結論
In vivo及びin vitro神経発達評価では、用いた指標の新規神経発達影響評価系としての有効性を見出し、殊にエピジェネティックな分子変化の検出は意義が高い。免疫機能と感染感受性評価では、それぞれ抗体産生能、標的細胞培養系に対する感染実験の反応性に期待が高い。発がん感受性評価では腫瘍の誘発性が安定したモデルであることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2012-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201133006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
神経発達評価では、海馬歯状回でのニューロン新生・移動の異常指標は、感度・不可逆性検索の点で優れており、全身毒性に影響されないニューロン発達障害検出系であることを見出し、エピジェネティックな発現制御の関わる新規標的分子も見出した。また、新たに神経の運命決定影響評価系を確立した。免疫機能評価と感染感受性評価では、それぞれT細胞のサブセットの比率、感染初期のサイトカイン変動の反応性に期待が高い。ENU経胎盤モデルは安定した中枢神経腫瘍を誘発性し、化学物質の発達期暴露発がん評価系として期待が高い。
臨床的観点からの成果
今回の研究成果には、臨床的事項に該当する物は含まれていない。
ガイドライン等の開発
神経発達評価で変動が見出された海馬歯状回でのニューロン新生・移動に関連する指標は、今後の国内外での神経発生毒性試験ガイドライン策定ないし改訂の際の短期スクリーニングを目的としたサテライト指標としての導入が期待される。
その他行政的観点からの成果
ニューロン新生をエンドポイントとした発達期神経毒性評価により、コリン作動性のCPFやNICで影響を認めたことより、コリンエステラーゼ阻害作用のある有機リン系農薬等の新たな神経毒性の可能性が見出され、今後これらの物質のリスク評価の際に重要な基礎資料となり得る。ニューロン新生に関連して神経幹細胞でエピジェネティックな遺伝子発現制御を受ける分子群は、成熟後での脳の高次機能の破綻指標として期待できる。
その他のインパクト
本研究では、神経系ないし免疫系を構成する主要な細胞成分に着目し、発達過程でのその細胞系譜に対する分化あるいは機能指標を導入して検索しているため、化学物質による毒性表現として捉えられる表現型の変化を捉えている。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
26件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shibutani, M., Woo, G-H., Fujimoto, H., et al.
Assessment of developmental effects of hypothyroidism in rats from in utero and lactation exposure to anti-thyroid agents
Reprod. Toxicol. , 28 (3) , 297-307  (2009)
原著論文2
Saegusa, Y., Fujimoto, H., Woo, G-H., et al.
Developmental toxicity of brominated flame retardants, tetrabromobisphenol A and 1,2,5,6,9,10-hexabromocyclododecane, in rat offspring after maternal exposure from mid-gestation through lactation
Reprod. Toxicol. , 28 (4) , 456-467  (2009)
原著論文3
Saegusa, Y., Woo, G-H., Fujimoto, H., et al.
Gene expression profiling and cellular distribution of molecules with altered expression in the hippocampal CA1 region after developmental exposure to anti-thyroid agents in rats.
J.Vet. Med. Sci. , 72 (2) , 187-195  (2010)
原著論文4
Saegusa, Y., Woo, G-H., Fujimoto, H., et al.
Sustained production of Reelin-expressing interneurons in the hippocampal dentate hilus after developmental exposure to anti-thyroid agents in rats
Reprod. Toxicol. , 29 (4) , 407-414  (2010)
原著論文5
Ohishi, T., Wang, L., Ogawa, B., et al.
No effect of sustained systemic growth retardation on the distribution of Reelin-expressing interneurons in the neuron-producing hippocampal dentate gyrus in rats
Reprod. Toxicol. , 30 (4) , 591-599  (2010)
原著論文6
Hachisuka, A., Nakamura, R., Sato, Y., et al.
Effects of perinatal exposure to the brominated flame-retardant hexabromocyclododecane (HBCD) on the developing immune system in rats
Kokuritsu Iyakuhin Shokuhin Eisei Kenkyusho Hokoku. , 128 , 58-64  (2010)
原著論文7
Watanabe, W., Shimizu, T., Sawamura, R., et al.
Effects of tetrabromobisphenol A, a brominated flame retardant, on the immune response to respiratory syncytial virus infection in mice
Int. Immunopharmacol. , 10 (4) , 393-397  (2010)
原著論文8
Watanabe, W., Shimizu, T., Sawamura, R., et al.
Functional disorder of primary immunity responding to respiratory syncytial virus infection in offspring mice exposed to a flame retardant, decabrominated diphenyl ether, perinatally
J. Med. Virol. , 82 (6) , 1075-1082  (2010)
原著論文9
Fujimoto, H., Woo, G-H., Inoue, K., et al.
Impaired oligodendroglial development by decabromodiphenyl ether in rat offspring after maternal exposure from mid-gestation through lactation
Reprod. Toxicol. , 31 (1) , 86-94  (2011)
原著論文10
Ogawa, B., Ohishi, T., Wang, L., et al.
Disruptive neuronal development by acrylamide in the hippocampal dentate hilus after developmental exposure in rats
Arch. Toxicol. , 85 (8) , 987-994  (2011)
原著論文11
Takahashi, M., Inoue, K., Koyama, N., et al.
Life stage-related differences in susceptibility to acrylamide-induced neural and testicular toxicity
Arch. Toxicol. , 85 (9) , 1109-1120  (2011)
原著論文12
Ohishi, T., Wang, L., Akane, H., et al.
Adolescent hyperactivity of offspring after maternal protein restriction during the second half of gestation and lactation periods in rats
J. Toxicol. Sci. (in press)  (2012)
原著論文13
Ogawa, B., Wang, L., Ohishi, T., et al.
Reversible aberration of neurogenesis targeting late-stage progenitor cells in the hippocampal dentate gyrus of rat offspring after maternal exposure to acrylamide
Arch. Toxicol. (in press)  (2012)
原著論文14
Saegusa, Y., Fujimoto, H., Woo, G-H., et al.
Transient aberration of neuronal development in the hippocampal dentate gyrus after developmental exposure to brominated flame retardants in rats
Arch. Toxicol. (in press)  (2012)
原著論文15
Wang, L., Ohishi, T., Shiraki, A., et al.
Developmental exposure to manganese chloride induces sustained aberration of neurogenesis in the hippocampal dentate gyrus of mice
Toxicol. Sci. (in press)  (2012)
原著論文16
Fujimoto, H., Woo, G-H., Inoue, K., et al.
Increased cellular distribution of vimentin and Ret in the cingulum induced by developmental hypothyroidism in rat offspring maternally exposed to anti-thyroid agents
Reprod. Toxicol. (in press)  (2012)
原著論文17
Ohishi, T., Wang, L., Akane, H., et al.
Reversible aberration of neurogenesis affecting late-stage differentiation in the hippocampal dentate gyrus of rat offspring after maternal exposure to manganese chloride
Reprod. Toxicol. (in press)  (2012)
原著論文18
Nakamura, R., Kimura, Y., Matsuoka, H., et al.
Effects of transplacental and trans-breast milk exposure to the organophosphate compound chlorpyrifos on the developing immune system of mice
Kokuritsu Iyakuhin Shokuhin Eisei Kenkyusho Hokoku. , 129 , 105-110  (2011)
原著論文19
Konno, K., Sawamura, R., Sun, Y., et al.
Antiviral activities of diarylheptanoids isolated from Alpinia officinarum against respiratory syncytial virus, poliovirus, measles virus and herpes simplex virus type 1 in vitro
Nat. Prod. Commun. , 6 (12) , 1881-1884  (2011)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
2018-05-29

収支報告書

文献番号
201133006Z