エリア(福祉圏)構想による障害福祉施策の総合的推進に関する事業

文献情報

文献番号
199800015A
報告書区分
総括
研究課題名
エリア(福祉圏)構想による障害福祉施策の総合的推進に関する事業
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
笠原 吉孝(東京小児療育病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害をもつ人の地域生活を支えるための施策を整えていくため、「ノーマライゼーション・プラン」で示された人口30万人を単位とする「障害保健福祉圏域」が今後のキーワードになってくる。しかし、圏域策定は進められているものの施策展開についてはまだ試行錯誤の状態であるといえる。本研究ではエリア構想に基づく障害福祉施策の推進について滋賀県の取り組みをモデルとして、そのあり方を研究する事で広域福祉圏を単位とする施策の意味、効果、課題を明らかにする事で、全国の都道府県での取り組みに普及できるノウハウを明らかにするとともに、地域格差の大きい障害福祉施策の推進に寄与することを目的とする。
研究方法
本研究の目的を達成するために、本年度は滋賀県の「福祉圏」を単位とした取り組みについてライフサイクルに応じて7つのテーマを設定して検証した。それぞれについて滋賀県において中心的役割を担っている人に研究協力者として参加依頼し研究を進めるとともに、定期な合同研究会を開催して各テーマについて意見交換を行った。また全国調査を行い各都道府県及び政令指定都市で「エリア(広域福祉圏)」を単位として進められている福祉施策の状況と課題についてまとめた。さらにシンポジウムを開催し、本研究で行っているエリア構想の成果をは検証・発表した。
結果と考察
滋賀県では、ノーマライゼーションの実現を目的として地域で暮らす障害のある人の支援事業が試みられている。それはエリア構想による福祉施策の総合的推進である。このエリア構想の現状と問題点を把握し、より効果的な施策の展開を可能とするために、本研究では以下の7つの視点ついて検討を行った。
①行政の視点から
昭和56年の「福祉圏構想」から始まる滋賀県の障害福祉施策について、その効果と課題を明らかにすると共に、平成9年度策定された「淡海障害者プラン」を軸にエリア構想に基づく地域福祉施策について施策の展開、課題を検証した。
②地域療育システムの構築について
障害児の早期発見早期療育システムについて「大津方式」を出発点として総合療育センターを核とする地域療育事業の展開と障害乳幼児から成人に至る発達を保障するシステムの構築について検証した。
③在宅支援システムの構築について
幼児期より高齢期まで生活者としての「障害者及びその家族(介護者)」を支えるために必要な地域生活支援事業の整備及び地域ケアシステムの構築について「福祉圏」を単位に進められている事業の効果及び課題を検証した。
④施設における生活支援機能について
通所施設及び入所施設において課題となる、地域生活をおくる障害児・者の支援事業の展開について、ケアマネジメントという観点でその効果及び課題を検証した。
⑤重症心身障害児のケアについて
びわこ学園を核に重症心身障害児・者の通園事業及び重症児の地域生活支援のあり方について検証した。
⑥就労支援と市民参加について
障害のある人の地域就労について、企業就労及び共同作業所における福祉的就労が進められてきたが、事業団形式に代表される新しい雇用形態が生まれている。就労支援の課題を明らかにした。またグループホームのバックアップに地域住民を組織化した運営方式についても検証した。
⑦県内の福祉圏のひとつである「甲賀福祉圏」をモデルに障害児・者に投下されている財源と資源状況を検証し、その効果を図り、より効率的な支援体制整備のあり方について検証した。
さらに研究事業をより意味のあるものとするためシンポジウムを2月大津で開催し、課題の検討を行い全国の情報を収集すると共にネットワークが組織できた。
結論
滋賀県におけるエリア構想に基づく障害福祉施策は、複数の市町村が共同してエリアにおける障害福祉ニーズの受け皿として機能することで、入所施設、通所施設、養護学校などを総合的・計画的に整備し、エリアを基本とした支援体制を創造してきた。また市町村や民間法人による先駆的な支援事業を、行政がエリア構想を背景に施策としてバックアップし、国の制度が整う前に県単事業として支援することで成果をあげてきた。これは、ライフサイクルに応じた施策をモデル事業として一つのエリアで実施し、その成果・効果を検証しながら全県エリアにシステムとして波及させていく方式である。このことは市町村の施策格差をなくし、障害のある人の地域生活を総合的に支援することを実現してきた。この方式は、他府県においてもモデルにできると思われる。
しかし、この考え方に基づく施策の推進は単純ではない。障害福祉は施設を軸に展開してきておりこれまでの行政と福祉施設の関係ではなかなか利用者主体のサービスを地域に創出できない。エリアニーズを的確に受け止め、総合的に推進するシステムが必要となる。
また、ライフサイクル全般に渡る支援を実現するためには、障害種別にとらわれず、横断的にケアが提供できる仕組みづくりが求められる。専門職をはじめとする人材を職場で抱えるのでなく、個々のニーズに対応できるようなケアシステムが求められる。

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研究報告書(紙媒体)

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