高齢者を対象とした医療・福祉・行政を連携する情報システムの評価研究

文献情報

文献番号
199800014A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者を対象とした医療・福祉・行政を連携する情報システムの評価研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
長瀬 淑子(東大病院中央医療情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 片町伊十(片町病院)
  • 高橋泰(国際医療福祉大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遠隔医療は1970年代から研究され25年の歴史を持っているが、それは主として病理や放射線等の分野で病院間の画像伝送を主とした遠隔医療支援システムを中心として開発されてきた。しかし、この数年は在宅医療支援システムへの関心が高まりつつあり研究が進んできている。しかし、TV電話を活用した在宅医療システムの事例などが中心となっている単体のシステムの実験が多く、福祉および行政が連携した本格的在宅医療システムは例をみない。本研究は実際に稼動開始した医療と福祉を連携するシステムを取り上げて、その住民や医療関係者、行政などに与える影響を評価することを目的としている。
研究方法
この研究の対象に選定した長野県下伊那郡南信濃村は長野県の南部、愛知県と静岡県との県境にある赤石山脈の麓に位置し、平成10年度現在人口約2,500人、その内高齢化率が37%に達している。高齢化率は30年あまりの間に5倍近くにまで増加しており、現在、総世帯数967世帯でそのうち高齢者が居る世帯は64.6%の625世帯にのぼっている。その内訳は、1人暮らしの老人世帯は14.1%の136世帯、二人暮らしの老人世帯は18.3%の177世帯で、高齢化率は今後ますます高くなることが予想される。また、在宅の寝たきり老人の数は37名であり、高齢化の進展とともにその数は増加傾向にあるが、施設介護の整備が追いつかない状況にあり在宅での介護を余儀なくされている。一方、介護する家族も高齢化してきており、ヘルパーや看護婦などの確保も難しく、医師の高齢化の問題など厳しい状況にある。このような状況の中、平成10年3月から既存のCATV回線を利用した在宅医療システムの導入が実施されることとなった。本研究は、実際に稼動している医療と福祉を連携する情報システムを取り上げて、その住民や医療関係者、行政などに与える影響を評価することを目的としているが、かかる研究は、システムが稼動を開始した時点を選んで行うことが必要である。この南信濃村のシステムはまさにこの研究に最適で、この時期を除いては行うことができない。評価方法としては、このシステムが稼動を始める前のデータと稼動後のデータの両方を収集し比較する方法を取った。特に稼動後のデータについては1年分のデータだけでは変化をみることが不可能な場合があるので、継続的に複数年のデータの入手が必要である。この考えの下、第1年目の平成10年度は下記のデータの収集を行った。(1)行政側からの情報収集:1人口、高齢者数等の住民基本情報、2在宅患者の住居分布、3情報システムの概要(2)福祉側および情報発信者としての患者側からの情報収集:1患者の基本情報、2情報システムの利用状況、3情報システム使用上での問題点、4運用システム上の変化・問題点(訪問回数、ヘルパーの負担など)(3)医療側からの情報収集:1情報システム導入後の診療上の変化(往診の回数など)、2機器による診療の信頼度、3情報システム導入による問題点
結果と考察
情報収集の方法は資料の提供と聞き取り調査の両面から実施したが、その結果から下記にような評価モデルを構築した。今年度は、これらのデータの取得の可能性が示されたので、次年度は更に調査を継続し実際のデータにより評価を行う。(1)医療側からの評価:最も重要な点は、患者の健康状態がこのシステムの導入によってどのように変化したかという点であるが、これは短期的には客観的データが取り難いので、医師および患者のアンケートによるデータをもってこれに代える。また、医師の往診の回数の変化については客観的なデータを得られるので、この両者を指標として、医療の内容と効率性を代表させる。(2)行政としての評価:医療
費の変化が最も興味ある点であるが、短期間では得難いデータのため同じ月の診療費で比較する。(3)福祉としての評価:訪問看護婦、ヘルパーなどの訪問回数とアンケートによる評価の二つの側面からおこなう。
結論
新しい技術である情報技術が在宅医療に導入され、それが医療の中に定着するまでを稼動直後のシステムを例として、医療上、福祉上および行政上の有効性と問題点を実地の調査によって行うことは、今後の推進上に多いに役立つと思われる。

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