文献情報
文献番号
201132038A
報告書区分
総括
研究課題名
タンパク質、核酸等の高分子医薬製剤の高感度安定性評価技術の確立に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-医薬・指定-020
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
阿曽 幸男(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
研究分担者(所属機関)
- 米谷芳枝(星薬科大学 医薬品化学研究所 創剤構築研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ヒト型抗体医薬に代表されるタンパク質や核酸などの高分子医薬は本来不安定であるため、高分子医薬を医療の現場で活用するためには一定の品質が保たれるように高度な製剤学的工夫による安定化が必要である。そのためには、製剤学的工夫による安定化効果を確認し、その最適化を行えるように、短期間で高分子医薬製剤の安定性を評価できる方法の開発が不可欠である。本研究においてはローカルな運動性の指標であるβ緩和時間の測定法を開発することを特徴とし、β緩和時間に基づいた高分子医薬製剤の安定性評価法を開発することを目的とする。また、タンパク質や核酸のローカルな分子運動性を制御することにより、高い安定性を有するタンパク質製剤および核酸医薬のリポソーム製剤の開発を目指す。
研究方法
スクロース等の6種類の添加剤として用いたβ-ガラクトシダーゼ凍結乾燥製剤を調製し、25-50℃における保存安定性を検討した。タンパク質のカルボニル炭素のNMR緩和時間を測定し、タンパク質分子のローカルな分子運動性を評価した。また、リポソームの表面水和の研究に最もよく用いられるPEG脂質で修飾したリポソームおよびそのリポプレックスの表面の水和状態を蛍光標識によるGP (generalized polarization) 測定と水の誘電緩和時間測定から検討した。
結果と考察
β-ガラクトシダーゼの失活速度は添加剤によって大きく異り、カルボニル炭素のNMR緩和時間が大きく、タンパク質の分子運動性が低いと考えられる製剤ほど失活が遅かった。凍結乾燥製剤中のβ-ガラクトシダーゼの安定性は分子運動性と関連することが示唆された。また、PEG修飾リポソームの水和状態は水の誘電緩和測定によって測定できることが明らかになった。リポプレックスの細胞内取り込みはPEG修飾リポソームの表面状態の影響を受けることが分かった。さらに、PEG修飾リポソーム表面でのPEGのマッシュルーム・ブラシ分布状態もGP測定と水の誘電緩和測定によって推定できることが示唆された。
結論
β-ガラクトシダーゼの保存安定性は構造緩和を引き起こすスケールの大きな分子運動よりも、NMR緩和時間によって表されるスケールの小さな分子運動とより密接に関連することが示された。スケールの小さな分子運動性を指標とする安定性予測の可能性が示唆された。また、PEG修飾リポソームの表面状態の違いによりリポプレックスの細胞内取り込みが影響を受けることが明らかになり、表面状態を評価する手法として、水の誘電緩和測定やGP測定が有用であることが分かった。
公開日・更新日
公開日
2015-06-29
更新日
-