文献情報
文献番号
199800012A
報告書区分
総括
研究課題名
保健医療福祉連携支援のコーディネート機能のあり方と情報化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
関田 康慶(東北大学大学院経済学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
保健医療福祉システムにおける望ましい連携コーディネートのあり方、およびコーディネートを支援する情報化や情報システムについて提言する。
研究方法
保健医療福祉システムの連携を促進させるコーディネート機能について、病院の医療ソーシャルワーカー(以下、MSWとする)の視点から実態調査を行ない、患者レコードによる全国レベルのデータベースを構築し、その分析を通じて目的達成を図る。
本研究の推進に先立ち、MSWのコーディネート機能を次のように定義する。MSWのコーディネート機能:「MSWのコーディネート機能とは『患者や家族が主体的に医療を受けつつQOLの向上や低下予防を図れるよう、患者と院内外の様々な社会資源とを、包括的に調整しながら適切かつ円滑に結びつける機能』である。この機能は、保健・医療・福祉システムにおけるインターフェースとして、システムの効果的・効率的な運営にも重要な役割を果たす。」
本研究の参加協力者として、全国各地の病院勤務MSWを、300名を目標に募集する。募集に際しては地域的偏在のないよう配慮する。
本研究における検討課題の検証のために、パイロット・スタディを行なう。パイロット・スタディのフィールドは、本研究のコア・メンバー(MSW)が所属する透析医療機関4施設(1病院、3外来診療所)とする。パイロット・スタディでは、透析患者対象のニーズ調査を実施するとともに、患者ニーズに対応して行なったコーディネートについて記録する。調査者はMSW、医事課職員、看護婦の3職種で分担する。コーディネートの記録は、設計したフォームに記録する。そして、ニーズ調査とコーディネートの記録の結果をもとに、ニーズ分析とコーディネート分析を行なう。分析に際し、患者を「性」、「65歳を基準とした年齢区分」、「慢性腎不全の原疾患」の3変量で属性分類する。また、透析患者のニーズに関する仮説を提示し、検証する。分析および検証は単純集計とクロス集計を用い、χ2検定を行なう。
パイロット・スタディの終了後、その結果を踏まえて、本調査のための調査票(個票)を設計する。調査票設計は、東北大学大学院経済学研究科の関田研究室作成モデルを、プロジェクト参加協力者中の調査票設計メンバーに提示し、その検討結果をモデル修正に反映させる。調査項目は、ニーズに関する項目、コーディネートに関する項目、コーディネートの評価に関する項目を中心に、患者属性、病院属性、MSW属性についても調査する。患者名、病院名、MSW名などのプライバシーに関する部分は調査項目に入れず、調査関係者のプライバシー保護に配慮する。
本調査は、参加協力MSWが自らコーディネートを実施したケースについて調査票を用いた面接調査を行なう。その結果をデータベース化し、それをもとに医療ソーシャルワーク、行動科学、情報科学、社会心理、サービス評価等の視点から分析する。分析手法は、多変量解析や分布関数分析などを含む多面的な統計解析を駆使し、コーディネート機能について解析するとともに、それらの成果に基づき、コーディネート支援のための情報化と情報システムについて提言する。データベースはソフトを問わない標準ファイルとし、Excel、Access、SPSS、汎用機においても対応可能なように設計する。さらに、データベース利用のためのプロトコールを作成し、原則として本研究の参加協力者間の共有化を図り、多くの視点からの分析と提言を期待する。
本研究の推進に先立ち、MSWのコーディネート機能を次のように定義する。MSWのコーディネート機能:「MSWのコーディネート機能とは『患者や家族が主体的に医療を受けつつQOLの向上や低下予防を図れるよう、患者と院内外の様々な社会資源とを、包括的に調整しながら適切かつ円滑に結びつける機能』である。この機能は、保健・医療・福祉システムにおけるインターフェースとして、システムの効果的・効率的な運営にも重要な役割を果たす。」
本研究の参加協力者として、全国各地の病院勤務MSWを、300名を目標に募集する。募集に際しては地域的偏在のないよう配慮する。
本研究における検討課題の検証のために、パイロット・スタディを行なう。パイロット・スタディのフィールドは、本研究のコア・メンバー(MSW)が所属する透析医療機関4施設(1病院、3外来診療所)とする。パイロット・スタディでは、透析患者対象のニーズ調査を実施するとともに、患者ニーズに対応して行なったコーディネートについて記録する。調査者はMSW、医事課職員、看護婦の3職種で分担する。コーディネートの記録は、設計したフォームに記録する。そして、ニーズ調査とコーディネートの記録の結果をもとに、ニーズ分析とコーディネート分析を行なう。分析に際し、患者を「性」、「65歳を基準とした年齢区分」、「慢性腎不全の原疾患」の3変量で属性分類する。また、透析患者のニーズに関する仮説を提示し、検証する。分析および検証は単純集計とクロス集計を用い、χ2検定を行なう。
パイロット・スタディの終了後、その結果を踏まえて、本調査のための調査票(個票)を設計する。調査票設計は、東北大学大学院経済学研究科の関田研究室作成モデルを、プロジェクト参加協力者中の調査票設計メンバーに提示し、その検討結果をモデル修正に反映させる。調査項目は、ニーズに関する項目、コーディネートに関する項目、コーディネートの評価に関する項目を中心に、患者属性、病院属性、MSW属性についても調査する。患者名、病院名、MSW名などのプライバシーに関する部分は調査項目に入れず、調査関係者のプライバシー保護に配慮する。
本調査は、参加協力MSWが自らコーディネートを実施したケースについて調査票を用いた面接調査を行なう。その結果をデータベース化し、それをもとに医療ソーシャルワーク、行動科学、情報科学、社会心理、サービス評価等の視点から分析する。分析手法は、多変量解析や分布関数分析などを含む多面的な統計解析を駆使し、コーディネート機能について解析するとともに、それらの成果に基づき、コーディネート支援のための情報化と情報システムについて提言する。データベースはソフトを問わない標準ファイルとし、Excel、Access、SPSS、汎用機においても対応可能なように設計する。さらに、データベース利用のためのプロトコールを作成し、原則として本研究の参加協力者間の共有化を図り、多くの視点からの分析と提言を期待する。
結果と考察
パイロット・スタディの結果は次のとおりである。血液透析患者690名(外来657名、入院33名)を対象に、ニーズ調査として調査票(個票)による面接調査を1998年4~5月に実施した。調査実施率は96.5%だった。調査対象者の約9割はADLがほぼ自立しており、各種医療福祉サービス利用中のケースは少数だった。しかし、将来はサービス利用を検討するとの回答がサービス項目ごとに9~23%あり、医療福祉サービスに対する潜在的なニーズが確認された。各種医療福祉サービス、移植なとに関する患者側の情報不足がみられた、等。
さらに、ニーズ調査で得られたデータを用いて、患者ニーズに関する仮説を検証した。その結果、通院介助のニーズには、「65歳を基準とした年齢区分」や「原疾患」に関連性のあることが確認された。また、世帯人数の多さは、家庭介護力に必ずしも直結しないこと、「治療に関する不安」と「人間関係に関する不安」との間に関連性のあることが示された。
次いで、断面的記録法により、1998年5月の5日間にMSWが行なった延べ34ケース(患者18名)のコーディネート内容をコーディネート・シートに記録した。コーディネートの対象者は、患者、家族、院内スタッフの占める割合が多かった。院外の対象者は、他の病院のMSW、患者の職場関係者、友人であった。そして、コーディネートの手段では、「面接」や「打合せ」など直接対話型の手段に最も多くの時間が費やされていた。コーディネート分類では、経済関連のコーディネート諸項目が全体の5割以上を占めた。単一の項目では「コーディネートに伴う心理的レベルでの対応」が2割弱で最も大きな割合を占めた。医療費関連のコーディネート、在宅ケア関連のコーディネート、他施設への受診や入院に関するコーディネートでは、「65歳を基準とした年齢区分」や「原疾患」が関連性のある変量であり、とくに年齢区分との関連性が確認された、等。
パイロット・スタディの結果から、以下の点について考察した。
第1に、「65歳を基準とした年齢区分」は透析患者ニーズと関連性の強い変量であると思われた。ニーズの傾向として、在宅ケア関連ニーズなど65歳以上の患者に生じ易いニーズと、医療費関連ニーズなど65歳未満の患者に生じ易いニーズがみられた。特に高齢患者の場合は、元来の腎機能障害に加えて、加齢に伴う様々な要因がニーズを誘発することから、若年患者に比べて多くのニーズを有すると思われた。
第2に、「原疾患」は「65歳を基準とした年齢区分」に次いで透析患者ニーズと関連性の強い変量であると思われた。特に糖尿病は年々増加傾向にあり、他の原疾患に比べて障害の重度化・重複化を招きやすく、各種ニーズにつながる可能性の高い疾患であるといえる。
第3に、透析患者に対するコーディネートの開始にあたってニーズを把握する際に、「65歳を基準とした年齢区分」や「原疾患」によるニーズのパターンを参考にすることが可能であると思われた。
第4に、本来個別的なニーズに適切に対応するコーディネートを行なうには、ニーズ把握に有効なインディケーターを増やすことが重要である。パイロット・スタディのニーズ分析でとりあげた3変量以外の変量を、様々な視点から抽出し、検証する必要がある。
第5に、コーディネートに伴う心理的レベルでの対応が比較的多くなされていたことは、コーディネーター(この場合はMSW)が単なるエージェントではなく、患者の心理的レベルにおいても何らかの役割を果たしていることを示唆していると思われた。
第6に、コーディネート機能の体系化にむけて、ニーズやコーディネートに関する仮説の提示と検証を行ない、ニーズ・パターンとコーディネート・パターンとの効果的な「組み合わせモデル」を示すことは有効であると考える。
第7に、本調査にあたっての留意事項として、調査対象の拡大、継続的記録法によるコーディネート全体像の把握、コーディネート機能の妥当性を検証するための評価の実施と分析、以上3点の必要性を認めた。
本調査の結果は、以下のとおりである。
本調査のための調査票(個票)を設計した。調査票モデルを、本研究の参加協力者による調査票設計メンバーに提示して検討を依頼し、Version14まで修正を重ねた。調査票は「病院属性」、「MSW属性」、「コーディネート開始時の患者属性」、「コーディネート前の患者の状態・状況」、「コーディネートの内容」、「コーディネート後の患者の状態・状況」、「コーディネートの評価」、の7種類で1セットとした。
第一次調査は1999年2~3月に実施し、現時点での回収調査票は約300ケースである。現在、回収ケースを入力、テスト分析中である。
参加協力者の意見から、第一次調査に用いた調査票Version14では、精神科におけるニーズやコーディネートを把握しにくく、評価もしづらいことが明らかになった。そのため、精神科向け調査票のVersionを検討・設計中である。
また、第一次調査期間以内にコーディネートが終了せず、調査票回収不可能なケースもあり、引き続き調査を継続中である。
さらに、ニーズ調査で得られたデータを用いて、患者ニーズに関する仮説を検証した。その結果、通院介助のニーズには、「65歳を基準とした年齢区分」や「原疾患」に関連性のあることが確認された。また、世帯人数の多さは、家庭介護力に必ずしも直結しないこと、「治療に関する不安」と「人間関係に関する不安」との間に関連性のあることが示された。
次いで、断面的記録法により、1998年5月の5日間にMSWが行なった延べ34ケース(患者18名)のコーディネート内容をコーディネート・シートに記録した。コーディネートの対象者は、患者、家族、院内スタッフの占める割合が多かった。院外の対象者は、他の病院のMSW、患者の職場関係者、友人であった。そして、コーディネートの手段では、「面接」や「打合せ」など直接対話型の手段に最も多くの時間が費やされていた。コーディネート分類では、経済関連のコーディネート諸項目が全体の5割以上を占めた。単一の項目では「コーディネートに伴う心理的レベルでの対応」が2割弱で最も大きな割合を占めた。医療費関連のコーディネート、在宅ケア関連のコーディネート、他施設への受診や入院に関するコーディネートでは、「65歳を基準とした年齢区分」や「原疾患」が関連性のある変量であり、とくに年齢区分との関連性が確認された、等。
パイロット・スタディの結果から、以下の点について考察した。
第1に、「65歳を基準とした年齢区分」は透析患者ニーズと関連性の強い変量であると思われた。ニーズの傾向として、在宅ケア関連ニーズなど65歳以上の患者に生じ易いニーズと、医療費関連ニーズなど65歳未満の患者に生じ易いニーズがみられた。特に高齢患者の場合は、元来の腎機能障害に加えて、加齢に伴う様々な要因がニーズを誘発することから、若年患者に比べて多くのニーズを有すると思われた。
第2に、「原疾患」は「65歳を基準とした年齢区分」に次いで透析患者ニーズと関連性の強い変量であると思われた。特に糖尿病は年々増加傾向にあり、他の原疾患に比べて障害の重度化・重複化を招きやすく、各種ニーズにつながる可能性の高い疾患であるといえる。
第3に、透析患者に対するコーディネートの開始にあたってニーズを把握する際に、「65歳を基準とした年齢区分」や「原疾患」によるニーズのパターンを参考にすることが可能であると思われた。
第4に、本来個別的なニーズに適切に対応するコーディネートを行なうには、ニーズ把握に有効なインディケーターを増やすことが重要である。パイロット・スタディのニーズ分析でとりあげた3変量以外の変量を、様々な視点から抽出し、検証する必要がある。
第5に、コーディネートに伴う心理的レベルでの対応が比較的多くなされていたことは、コーディネーター(この場合はMSW)が単なるエージェントではなく、患者の心理的レベルにおいても何らかの役割を果たしていることを示唆していると思われた。
第6に、コーディネート機能の体系化にむけて、ニーズやコーディネートに関する仮説の提示と検証を行ない、ニーズ・パターンとコーディネート・パターンとの効果的な「組み合わせモデル」を示すことは有効であると考える。
第7に、本調査にあたっての留意事項として、調査対象の拡大、継続的記録法によるコーディネート全体像の把握、コーディネート機能の妥当性を検証するための評価の実施と分析、以上3点の必要性を認めた。
本調査の結果は、以下のとおりである。
本調査のための調査票(個票)を設計した。調査票モデルを、本研究の参加協力者による調査票設計メンバーに提示して検討を依頼し、Version14まで修正を重ねた。調査票は「病院属性」、「MSW属性」、「コーディネート開始時の患者属性」、「コーディネート前の患者の状態・状況」、「コーディネートの内容」、「コーディネート後の患者の状態・状況」、「コーディネートの評価」、の7種類で1セットとした。
第一次調査は1999年2~3月に実施し、現時点での回収調査票は約300ケースである。現在、回収ケースを入力、テスト分析中である。
参加協力者の意見から、第一次調査に用いた調査票Version14では、精神科におけるニーズやコーディネートを把握しにくく、評価もしづらいことが明らかになった。そのため、精神科向け調査票のVersionを検討・設計中である。
また、第一次調査期間以内にコーディネートが終了せず、調査票回収不可能なケースもあり、引き続き調査を継続中である。
結論
MSWのコーディネート機能を定義し、透析医療機関をフィールドに「患者ニーズ調査(個票の調査票を用いた面接調査)と分析」、および「コーディネートの記録と分析」の2つの枠組みからなるパイロット・スタディを実施した。そして、パイロット・スタディの結果を踏まえて、本調査のための調査票(個票)を作成し、全国各地の病院勤務MSW約150名の参加協力を得て第一次調査を行った。現在、約300ケースを回収し、入力、テスト分析中である。調査は1999年度も継続し、サンプル数の蓄積とコーディネート機能に関する分析および情報化への提言を行なう。
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公開日・更新日
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