文献情報
文献番号
201132024A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤性肺障害における遺伝子マーカーに関する遺伝子学的検討等に係る研究
課題番号
H21-医薬・一般-033
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
久保 惠嗣(信州大学医学部 内科学第一講座)
研究分担者(所属機関)
- 河野 修興(広島大学大学院医歯薬学総合研究科分子内科学)
- 巽 浩一郎(千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学)
- 徳田 均(社会保険中央総合病院呼吸器内科)
- 太田 正穂(信州大学医学部法医学)
- 花岡 正幸(信州大学医学部内科学第一講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難治疾患・癌疾患治療に用いられている新規の薬剤は、分子標的薬として作用点が明確なうえに薬剤効果も優れているが、薬剤性肺障害の報告例も増加している。薬剤性肺障害は、使用する薬剤により同一民族間および人種間で発症頻度に差異が見られ、薬剤性肺障害に対して感受性・抵抗性を示す遺伝的素因の存在が疑われる。特に、分子標的薬ゲフィチニブ、新規抗リウマチ薬レフルノミド、抗癌薬ブレオマイシン、ボルテゾミブ等の細胞障害性薬剤により間質性肺炎やびまん性肺胞障害(diffuse alveolar damage: DAD)を招来する頻度は、海外に比べ日本人で高いことから、日本人特有の肺障害をもたらす共通の遺伝子素因や遺伝的背景の存在が示唆される。
研究方法
Ⅰ、解析したサンプル
解析に使用した症例は、薬剤性肺障害患者33例と薬剤性肺障害非発症例35例である。これらのサンプル血液から自動DNA抽出器(Quick Gene, FUJIFILM Co.)を用いてDNAを得た。
Ⅱ、全ゲノム網羅的な相関解析
Affymetrix社のGeneChip Human Mapping 500K Array Set (500,568 SNPs)を用いて、全ゲノム網羅的な相関解析(GWAS: genome-wide association study)を行った。
解析に使用した症例は、薬剤性肺障害患者33例と薬剤性肺障害非発症例35例である。これらのサンプル血液から自動DNA抽出器(Quick Gene, FUJIFILM Co.)を用いてDNAを得た。
Ⅱ、全ゲノム網羅的な相関解析
Affymetrix社のGeneChip Human Mapping 500K Array Set (500,568 SNPs)を用いて、全ゲノム網羅的な相関解析(GWAS: genome-wide association study)を行った。
結果と考察
GWAS解析で、2種類以上の単塩基多型(SNPs)と相関を示した遺伝子は5つあった。その中で、call rateが高くHWE値が外れていない遺伝子は、HIVEP3(human immuno-deficiency virus type I enhancer binding protein 3)であった。この遺伝子内の8つのSNPsにおいて、薬剤性肺障害発症群と非発症群との比較で、強い有意差(P < 2.7 x 10-4)を認めた。
HIVEP3遺伝子は、急性炎症やアポトーシスなど免疫反応に中心的役割を果たす転写因子と競合作用をする転写因子を調節する遺伝子と考えられている。HIVEP3遺伝子の異常が、薬剤性肺障害の際の過剰な炎症反応に関係する可能性がある。
HIVEP3遺伝子は、急性炎症やアポトーシスなど免疫反応に中心的役割を果たす転写因子と競合作用をする転写因子を調節する遺伝子と考えられている。HIVEP3遺伝子の異常が、薬剤性肺障害の際の過剰な炎症反応に関係する可能性がある。
結論
HIVEP3遺伝子が薬剤性肺障害の発症に関与する可能性が示唆された。今後、検体数を増やした再現性の確認と、肺障害に関わる機序の解明が必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-07-13
更新日
-