国際化を踏まえた医薬品・医療機器の安全性情報の伝達に関する研究

文献情報

文献番号
201132020A
報告書区分
総括
研究課題名
国際化を踏まえた医薬品・医療機器の安全性情報の伝達に関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-023
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 美保子(川崎医療福祉大学医療情報学科)
研究分担者(所属機関)
  • 小出 大介(東京大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ICHでは医薬品個別症例安全性報告(ICSR)の国際規格を、標準開発団体を通じて開発し、これに基づいたICH実装ガイドを開発するプロジェクトが進んでいる。本研究は、ISO/HL7 ICSR規格の円滑な国内導入を支援することを目的として、同規格草案の検証と実装前国内テストを平成21年度~23年度の3年間を通じて実施することを目的とした。また、ICH実装ガイドのメンテナンスについて考察した。
研究方法
複数ベンダーの簡易ツールにより、模擬症例データを用いてテストを行い、ICH実装ガイド草案に問題が無いか検証した。模擬症例としては、平成18年度厚生労働科学研究にて作成された模擬症例をもとに、11件の模擬症例データを用いた。ガイドラインおよび規格草案としては、ISO/HL7 ICSR規格草案、HL7 Version 3 Normative Edition 2008、ISO 21090:2011 Harmonized data types for information interchange、ICH実装ガイド草案等を用いた。
結果と考察
実装ガイド草案に基づいて開発された4つの簡易ツールを用いて、模擬症例でXMLインスタンスを作成したところ、スキーマエラーの発生状況はツールにより、大きく異なった。理由として空の属性値の扱いがあり、実装ガイドには出力しない場合のルールも記載した方が良いと考えられた。また繰り返しの範囲や、HL7の必須項目についてもICH実装ガイドにおける明示が必要と考えられた。その他、ツール間の差異を分析し対処策を提案した。実装ガイドについてはパブリックコメントがあり、修正を要すると考えられた点についてコメントを提出した。さらに、実装ガイドに関わる要素を整理しメンテナンスについて考察した。
結論
4つの簡易ツールを用いて模擬症例によるインスタンスの作成を試み、実装ガイド草案を検証した。結果として、実装ガイドに明記すべき事項が何点か見出され、実装ガイドの修正・改良を要する点についてはパブリックコメントに提出した。ISO/HL7 ICSR規格は平成23年度中に国際規格として成立した。今後実装ガイドが最終化され各国への導入が進むことになるが、国際規格に基づいた実装ガイドを日・米・EUの3地域にわたり継続的に運用していくためには、変更管理のプロセスを確立することが必須となっている。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201132020B
報告書区分
総合
研究課題名
国際化を踏まえた医薬品・医療機器の安全性情報の伝達に関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-023
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 美保子(川崎医療福祉大学医療情報学科)
研究分担者(所属機関)
  • 小出 大介(東京大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ICHでは個別症例安全性報告(ICSR)のデータ項目と電子仕様が策定されており、国内ではICH仕様に準拠した医薬品電子副作用報告(企業報告)が実施されている。一方、近年、欧米では標準開発団体(SDO)の規格を行政上の要件として指定する方向にあり、ICHではSDOで開発される国際規格に基づいてICH実装ガイドを策定するプロジェクトを開始した。本研究はISO/HL7 ICSRの円滑な国内導入を支援することを目的として、規格草案の検証と実装前国内テストを実施する。
研究方法
ICSR規格はHL7で草案が作成され、これをISO/HL7規格として制定する方向で進むこととなった。各研究年度において、その時点で入手可能な最新の規格草案、ICH実装ガイド草案、関連規格を用いた。テストデータとしては平成18年度厚生労働科学研究で作成した模擬症例を用いた。
結果と考察
平成21年度は主にISO/HL7 ICSR規格草案の詳細情報モデルを、ICH ICSRの項目に照らし合わせて検討した。その結果、ICH ICSRの要件が正しく表現されていない箇所、解釈は正しいもののモデル上でいずれの表現が適切か明らかでない場合、文法上の制約からICH要件を表現できない場合などがあり、これを整理して対応を検討した。平成22年度は20例の模擬症例データでテストを行い、主として実装仕様上の問題点を明らかにした。またデータタイプ規格の国際動向を調査し影響を考察した。平成23年度は4種のツールによるテストを行い、スキーマエラーやツール間の差異(空の属性値の扱い、要素の出現順、HL7必須項目、繰り返し範囲など)を纏め、ICH実装ガイドの修正・追加等の改善案を提案した。またISO/HL7 ICSR規格が成立したことから、ICH実装ガイドの維持管理に関わる要因を整理し考察した。
結論
ISO/HL7 ICSR規格の円滑な国内導入支援を目的として、3年間を通じて規格開発の段階に合わせて、規格草案の検証と実装前国内テストを実施してきた。研究結果は、時宜を得て標準開発団体、ICH実装ガイドにコメント提供され、規格開発、実装ガイドの策定に貢献することができた。SDOにより開発された規格に基づいたICH実装ガイドの作成はICH ICSRが初めてであり、医薬品情報の国際規格化とその国内導入に関する組織、プロセス、課題に関する有用な知見を提供し得たと考える。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201132020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究におけるISO/HL7 ICSR仕様の検証方法、テスト方法、テスト結果は、国内で実装例の極めて少ないHL7 V3に関する経験として、有用な情報を提供するものである。またISO、HL7という規格団体を通じたICH実装ガイドの作成はICSRが初めてであり、医薬品情報の国際規格化とその国内導入に関する組織、プロセス、課題に関する有用な知見を提供し得ると考えられる。
臨床的観点からの成果
ICH E2B個別症例安全性報告(ICSR)ガイドラインは、臨床的観点を踏まえて医薬品安全性報告に関わる日米EUの専門家グループが開発したものである。そのガイドラインに基づいた電子規格としてISO/HL7 ICSR の開発が進められた。本研究ではISO/HL7 ICSR規格草案を、ICH E2Bガイドラインに照らし合わせて極めて厳密な検証を行いICH E2B要件に適う、精緻な電子規格の開発に貢献できた。
ガイドライン等の開発
平成21~23年度は個別症例安全性報告(ICSR)のISO/HL7規格草案をICH仕様に照らし合わせて検証し、その結果はICH E2B(R3)実装ガイド草案に反映された。また、テスト的に開発されたシステム間の差異とその要因、実装ガイドの改善点を明らかにし、その結果はICH実装ガイドに反映された。さらに国際規格に基づいた実装ガイドの開発にあたり、コピーライト等の課題の整理と対応に協力した。本研究は、ICH E2B(R3)個別症例安全性報告・実装ガイドの開発に直接的に貢献した。
その他行政的観点からの成果
我が国ではICH個別症例安全性報告(ICSR)ガイドラインに準拠した医薬品電子副作用報告(企業報告)が行われており、企業から医薬品医療機器総合機構に提出される副作用報告の90%以上が電子的に報告されている。ICHのE2B(R3)実装ガイドが平成24年11月にStep 4に到達し、我が国でも電子副作用報告制度への導入が予定されている。本研究の結果は、国際調和に基づいた国内電子副作用報告制度に直接的に貢献するものである。
その他のインパクト
2011年度・医療情報学連合大会において「医薬品国際規格開発の実際と国内導入に向けての課題」と題するシンポジウムを開催し、本研究の成果を報告した。医療情報学連合大会は、病院関係者、医療情報システムベンダ、製薬企業、その他、幅広い関係者が一堂に会する学術大会であり、本研究の成果を広く提供し、国内導入に向けての課題を議論した。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
小出 大介、岡田 美保子、増田 剛他
ICHの新しい電子的副作用報告への対応
薬剤疫学 , 14 (1) , 60-61  (2009)
原著論文2
小出大介、岡田美保子
「医薬品個別症例安全性報告(ICSR)」規格草案のテストと評価.
医療情報学 , 31 (1) , 171-174  (2011)
原著論文3
岡田美保子
医薬品国際規格開発の実際と国内導入に向けての課題
医療情報学 , 31 (1) , 169-170  (2011)
原著論文4
小出大介
ICH-E2B(R3)実装ガイドについて
医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス (Pharmaceutical and Medical Device Regulatory Science). , 43 (2) , 104-109  (2012)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201132020Z