国民および医療関係者との副作用情報にかかるリスクコミュニケーション方策に関する調査研究:副作用の効果的な情報伝達手法の検討

文献情報

文献番号
201132017A
報告書区分
総括
研究課題名
国民および医療関係者との副作用情報にかかるリスクコミュニケーション方策に関する調査研究:副作用の効果的な情報伝達手法の検討
課題番号
H21-医薬・一般-020
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科 / 大学院 スポーツ・健康科学研究科 健康情報科学領域 予防医学)
研究分担者(所属機関)
  • 漆原 尚巳(京都大学医学部)
  • 折井 孝男( NTT東日本関東病院 )
  • 小橋 元(独立行政法人放射線医学総合研究所)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 (所属部局名) 医学部)
  • 高橋 英孝(東海大学医学部)
  • 田倉 智之(大阪大学医学部)
  • 山本 美智子(鈴鹿医療科学大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品および医療機器(以下、医薬品)における安全対策情報のリスクコミュニケーション(以下、リスコミ)に関する諸課題については、「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」最終提言においても指摘されており、喫緊の課題である。医薬品のベネフィットとリスクとのバランスについては、「国民、患者・消費者」(以下、患者)に対して、科学的不確実性を考慮した十分なリスコミ、すなわち患者の健全な「医療決定」における「説明」と「関与」の一層の進展が必要である。さらに、提供される安全対策情報の「透明性」と「信頼性」が担保されるべきである。なお、情報が適切に共有されない場合、その改善に向けての課題は情報提供側にあるとする考えは尊重されるべきである。
研究方法
本研究は、初年度、22年度から継続的に検討してきた個別分担課題について各論的に進め、「医薬品安全性のリスクコミュニケーションに関する提言」をまとめた。さらに、その解説を提言ごとに整理して、「医薬品安全性のリスクコミュニケーションに関する提言の解説」も作成した。
結果と考察
同提言では、具体的に以下があげられた。
1.「医薬品医療機器情報提供ホームページ」利活用の進展(医療関係者の利活用促進、国民・患者の認知および利活用促進、システム構築における改善、医薬品安全対策情報の「国民・患者」との共有化、承認情報から安全性情報までの連続性)
2.「患者向医薬品ガイド」(位置づけおよび配布計画、作成対象範囲の拡大、フォーマットの改善
3.医薬品安全対策における「国民・患者」の関与(「国民・患者」関与のしくみ、ユーザーテスト導入、患者団体の選択手順策定、患者団体への「学び支援」)
4.医薬品リスク管理計画におけるリスコミ(「医薬品に関する評価中のリスク等の情報」の透明性確保、厚生労働省、PMDA におけるコミュニケーション部局の創設、医薬品安全対策におけるクライシスコミュニケーション、医薬品安全対策におけるリスコミ方策の適正な予算措置)
結論
本研究は患者参加の対話型医療(Shared Decision Making)の実現を目指す端緒となることが望まれる。さらには、未来に向けて、社会における医薬品への信頼性を向上させ、安全で満足度の高い医療システムの実現が期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201132017B
報告書区分
総合
研究課題名
国民および医療関係者との副作用情報にかかるリスクコミュニケーション方策に関する調査研究:副作用の効果的な情報伝達手法の検討
課題番号
H21-医薬・一般-020
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科 / 大学院 スポーツ・健康科学研究科 健康情報科学領域 予防医学)
研究分担者(所属機関)
  • 漆原 尚巳(京都大学 大学院 医学研究科)
  • 折井 孝男( NTT東日本関東病院 薬剤部)
  • 小橋 元(独立行政法人放射線医学総合研究所)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 高橋 英孝(東海大学 医学部)
  • 田倉 智之(大阪大学 医学部)
  • 山本 美智子(鈴鹿医療科学大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品行政における安全性情報について、「国民・患者」および「医療関係者」に対する適切なリスクコミュニケーション(以下リスコミとする)のあり方を探るものである。「国民・患者」に対しては、医薬品のベネフィットとリスクの科学的不確実性のバランスについて、十分なコミュニケーションが不可欠である。近年、諸外国で、医薬品のリスコミの積極的な取り組みが始められているが、わが国でも、早急に医薬品安全性情報の提供を強化するため、「国民・患者」とのリスコミを進展させる基盤の検討が必要である。一方、「医療関係者」に対しても、効果的な情報伝達の方策について検討する必要がある。
研究方法
初年度および22年度は、
1.国民・患者とのリスコミ課題(欧米の医薬品安全性情報の効果的提供、医薬品安全性情報の提供に関する意識調査、マスコミ関係者との意見交換、「患者向医薬品ガイド」の検討、国民・患者のヘルスリテラシーの向上・支援の取り組み、障害をもった患者に対する医薬品安全性情報の提供手法、等)、
2.医療関係者とのリスコミ課題(欧米の医薬品安全性情報の効果的提供、薬剤師に対する医薬品安全性情報の提供に関する意識調査、等)
について個別課題の検討を進め、その上で、23年度は「医薬品安全性情報のリスクコミュニケーションに関する提言」および「医薬品安全性情報のリスクコミュニケーションに関する提言の解説」も整理した。
結果と考察
同提言では、具体的に以下等があげられた。
1.「医薬品医療機器情報提供ホームページ」利活用の進展(医療関係者の利活用促進、国民・患者の認知および利活用促進、システム構築における改善、医薬品安全対策情報の「国民・患者」との共有化、承認情報から安全性情報までの連続性)
2.「患者向医薬品ガイド」(位置づけおよび配布計画、作成対象範囲の拡大、フォーマットの改善
3.医薬品安全対策における「国民・患者」の関与(「国民・患者」関与のしくみ、ユーザーテスト導入、患者団体の選択手順策定、患者団体への「学び支援」)
4.医薬品リスク管理計画におけるリスコミ(「医薬品に関する評価中のリスク等の情報」の透明性確保、厚生労働省・PMDA におけるコミュニケーション部局の創設、医薬品安全対策におけるクライシスコミュニケーション、医薬品安全対策におけるリスコミ方策の適正な予算措置)
結論
患者・消費者および医療関係者に対して、十分な副作用情報を提供し共有する情報基盤(リスコミ)が進展することで、社会における医薬品への信頼性を向上させるとともに、安全で満足度の高い医療の実現が期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201132017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国民・患者がもつ医薬品に対するベネフィットの期待と、マスメディア等が扱う副作用・訴訟の報道との齟齬は、医療に対する社会の認識を不安定でバランスを欠いたものとする危険がある。大きな期待の反動で不信感が広まることは、国民・患者および医療関係者は勿論のこと、医薬品行政にとっても好ましい状況とは言えない。本研究の取り組みの中で、国民・患者が、医薬品のベネフィットとリスクのバランス(医療の科学的不確実性)を理解し、医療関係者の真摯な取り組みを認識することで、医療に対する信頼が醸成されることが期待される。
臨床的観点からの成果
国民・患者が適切な形で参加する「医薬品の安全対策情報に係るリスコミ」は、容易に進展するものではない。しかし、本研究により、国民・患者が、医薬品の安全性提供の助言者として、社会的役割を主体的に担う基盤の緒を開くことが期待される。さらには、本研究のネットワークが母体となって、製造者・供給者、医療関係者、患者、マスコミ、行政関係者等が参画して、複眼的視点で関与する「安全確保システム」を整備するための、継続的な対話の基盤の萌芽となると考えられる。
ガイドライン等の開発
「医薬品安全性のリスクコミュニケーションに関する提言」および「医薬品安全性のリスクコミュニケーションに関する提言の解説」を作成し、1.医薬品医療機器情報提供ホームページの利活用の進展、2.患者向医薬品ガイドの、3.医薬品安全対策における「国民・患者」の関与、4.医薬品リスク管理計画におけるリスクコミュニケーションの視点から提言を行った。
その他行政的観点からの成果
医薬品医療機器情報提供ホームページ、患者向医薬品ガイド等の医薬品安全性情報に関する行政情報提供における国民・患者及び医療関係者のリスコミのあり方に関する資料を整理し報告した。とくに、利用者の視点に立つデザインのあり方について報告した。
その他のインパクト
日本薬学会第131年会シンポジウム「医薬品・医療機器の安全性情報とリスクコミュニケーション」(S33、2011年3月31日)にて、薬学会員等を対象に啓発を行った。読売新聞(2010年12月7日)社会保障・安心、日本「学び支援」見劣りにて、わが国の患者団体の学び支援のあり方についてコメントした。日経メディカルオンライン(2011年4月1日)にて、「医薬品の副作用を患者にどう伝えるか:リスクコミュニケーションのすすめ」インタビューを受け、同誌ホームページ上で広く啓発を行った。

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
1件
Workshop "Environmental History in Asia", Shanghai Jiao Tang University, Shanghai, March 14, 2010
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
読売新聞(2010年12月7日)社会保障・安心、日本「学び支援」見劣り、日経メディカルオンライン(2011年4月1日)「医薬品の副作用を患者にどう伝えるか:リスクコミュニケーションのすすめ」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
杉森裕樹、種市摂子、丹波泰子、他
医薬品および医療機器の安全性におけるリスクコミュニケーション
医療と検査機器・試薬 , 33 (3) , 361-365  (2010)
原著論文2
杉森裕樹、折井孝男
医療で求められるリスクコミュニケーションとは-対話に基づく医薬品の安全性情報の共有
月刊薬事 , 53 (3) , 307-312  (2011)
原著論文3
須賀万智, 小田嶋剛, 折井孝男, 他
医薬品情報に関するアンケート調査: 医薬品情報に対する意識と情報収集の実態について
日本医療・病院管理学会誌 , 48 (5) , 49-55  (2011)
原著論文4
杉森裕樹、折井孝男
医薬品・医療機器の安全性情報とリスクコミュニケーション
日本薬学会誌 , 132 (5) , 531-531  (2012)
原著論文5
山本美智子
欧米における医薬品の安全性に関するリスクコミュニケーションの取り組み
日本薬学会誌 , 132 (5) , 533-548  (2012)
原著論文6
中山健夫
医薬品のリスク・マネジメントにおけるエビデンス診療ギャップ:レセプト分析からの視点
日本薬学会誌 , 132 (5) , 549-554  (2012)
原著論文7
小島正美
メディアとのコミュニケーションをどう進めるか
日本薬学会誌 , 132 (5) , 555-559  (2012)
原著論文8
広瀬 誠
患者向け医薬品情報提供改善・情報啓発支援事業
日本薬学会誌 , 132 (5) , 561-562  (2012)
原著論文9
Hisashi Urushihara, Yuko Doi, Masaru Arai, et al.
Oseltamivir prescription and regulatory actions vis-à-vis abnormal behavior risk in Japan: drug utilization study using a nationwide pharmacy database
PLos ONE , 6 (12) , 28483-28483  (2011)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201132017Z