赤血球製剤を含めた血液製剤の病原体不活化法の開発と不活化評価法の開発

文献情報

文献番号
201132013A
報告書区分
総括
研究課題名
赤血球製剤を含めた血液製剤の病原体不活化法の開発と不活化評価法の開発
課題番号
H21-医薬・一般-015
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所 血液 安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 下池 貴志(国立感染症研究所 ウイルス2部)
  • 鈴木 光(日本赤十字社中央血液研究所)
  • 太組 一朗(日本医科大学武蔵小杉病院)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液安全性研究部)
  • 水澤 左衛子(国立感染症研究所 血液安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
6,030,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤の安全性向上のため、1)赤血球製剤において病原体不活化が可能な新しい不活化法の開発、2)これまで培養が困難であったために従来の不活化法による評価が実施されたことのなかったC型肝炎ウイルス(HCV)の不活化の評価とモデルウイルスであるウシ下痢症ウイルス(BVDV)との比較、3)核酸増幅法の精度管理のためのE型肝炎ウイルス(HEV)の国内標準品の作製、4)不活化評価のためにin vitroで増殖可能なヒト血漿由来のHEV株の分離、を目的に研究を実施した。
研究方法
昨年度開発した紫外線照射による赤血球製剤の病原体不活化法の不活化効率に与える種々の因子(照射量、検体の液層の厚さ、ヘマトクリット値)を検討した。また、HCVの不活化では、60℃液状加熱、40%エタノール処理、紫外線照射による不活化を検討した。HEVの国内標準品は、WHOの国際標準品作製と共同で作製し、力価は国内血漿分画製造所を含む多施設参加の国際共同研究によって決定した。また、HEV陽性ヒト血漿をヒト肝癌細胞株に添加し、継代することによって培養細胞で増殖可能な HEV株の分離を行った。
結果と考察
紫外線照射による赤血球製剤の不活化は、照射量に比例して不活化効率は向上したが、ヘマトクリットが低いほど指数的に不活化効率が向上することが判明した。全血製剤と同等のヘマトクリット値でも4Log低下し、実用化が期待できる効果を確認できた。また、HCVは60℃の液状加熱、40%エタノール処理、紫外線照射によって容易に不活化できた。これらの結果は、モデルウイルスとして用いられてきたBVDVと完全に一致していた。また、HEVの国内標準品(候補品)を作製し、その力価は国際標準品と一致していた。さらに献血者由来の血漿から細胞で増殖可能なHEVを2株分離することに成功した。これらのウイルスは、血液製剤の安全性評価に貢献すると考えられた。
結論
紫外線照射による赤血球製剤の病原体不活化の条件を検討し、全血と同等なヘマトクリット値でも不活化効果が得られた。また、検討した不活化法ではHCVとBVDVの不活化効率は極めて類似しており、BVDVはモデルウイルスとして適したウイルスであることを明らかにできた。また、HEVの国内標準品をWHOの国際標準品と共同で作製することができ、国際的な共同研究で力価を決定することができた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-11
更新日
-

文献情報

文献番号
201132013B
報告書区分
総合
研究課題名
赤血球製剤を含めた血液製剤の病原体不活化法の開発と不活化評価法の開発
課題番号
H21-医薬・一般-015
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所 血液 安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 下池 貴志(国立感染症研究所 ウイルス2部)
  • 鈴木 光(日本赤十字社中央血液研究所)
  • 太組 一朗(日本医科大学武蔵小杉病院)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液安全性研究部)
  • 水澤 左衛子(国立感染症研究所 血液安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤の安全性向上のため、1)赤血球製剤において病原体不活化が可能な新しい不活化法の開発、2)これまで培養が困難であったために従来の不活化法による評価が実施されたことのなかったC型肝炎ウイルス(HCV)の不活化の評価とモデルウイルスであるウシ下痢症ウイルス(BVDV)との比較、3)核酸増幅法の精度管理のためのE型肝炎ウイルス(HEV)の国内標準品の作製、4)不活化評価のためにin vitroで増殖可能なヒト血漿由来のHEV株の分離、5)パルボウイルスB19(B19)国内標準品作製、6)血液製剤のプリオン病に関する情報収集と評価、を目的に研究を実施した。
研究方法
紫外線照射による赤血球製剤の病原体不活化法の不活化効率に与える種々の因子を検討した。また、HCVの不活化では、60℃液状加熱、8%と40%エタノール処理、紫外線照射による不活化と4℃における安定性を検討した。HEVの国内標準品は、WHOの国際標準品作製と共同で作製し、力価は国内血漿分画製造所を含む多施設参加の国際共同研究を行った。また、HEV陽性ヒト血漿をヒト肝癌細胞株に添加し、継代することによって培養細胞で増殖可能な HEV株の分離を行った。
結果と考察
紫外線照射による赤血球製剤の不活化は、全血製剤と同等のヘマトクリット値でも4Log程度の不活化効果が得られた。また、HCVは60℃の液状加熱、40%エタノール処理、紫外線照射によって容易に不活化できた。一方、8%エタノール処理では全く不活化されなかった。これらの結果は、モデルウイルスとして用いられてきたBVDVと完全に一致していた。また、HEVの国内標準品(候補品)を作製し、その力価は国際標準品と一致していた。さらに献血者由来の血漿から細胞で増殖可能なHEVを2株分離することに成功した。これらのウイルスは、血液製剤の安全性評価に貢献すると考えられた。
結論
紫外線照射によって赤血球製剤の病原体不活化が可能であった。全血と同じヘマトクリット値でも溶血を生じることなく高い不活化効果が得られたが、照射による赤血球抗原の変化や酸素運搬能など実用化に向けた更なる研究が必要である。また、HCVとBVDVは検討した不活化法に対して極めて類似した挙動を示し、BVDVはHCVのモデルウイルスとして適したウイルスであることを初めて明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201132013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
赤血球製剤の病原体不活化法は実用化された方法はなく、輸血医療の安全性向上のためには開発が急がれている。我々の方法は、化学物質を添加することなく紫外線照射のみで病原体を不活化できる独創的な方法である。全血と同じヘマトクリット値であっても病原体の不活化が期待でき、溶血もほとんど認められないので、実用化にむけた更なる検討をする必要があると考えられる。また、これまで評価されていなかったHCVの不活化法に対する感受性を初めて明らかにすることができた。
臨床的観点からの成果
これまで全く方法がなかった赤血球製剤の病原体不活化法の実用化に期待が持てる成果が得られた。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
HCVがモデルウイルスとして用いられてきたウシ下痢症ウイルス(BVDV)と極めて類似した不活化法に対しての感受性を有していることが明らかになり、BVDVはHCVのモデルウイルスとして適していたことが確認できた。また、これまでBVDVを用いて蓄積されてきた血漿分画製剤の安全性の評価がHCVに対する安全性を反映していると考えられた。また、E型肝炎ウイルスとパルボウイルスB19の国内標準品を作成し、国立感染症研究所から供与している。輸血用血液や原料血漿のNAT試験の精度向上に寄与すると考えられた。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-06-09
更新日
2018-06-21

収支報告書

文献番号
201132013Z