文献情報
文献番号
201132011A
報告書区分
総括
研究課題名
術中大量出血時の凝固障害機序の解明と止血のための輸血療法の確立-手術中の大量出血をいかにして防ぐか-
課題番号
H21-医薬・一般-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
荻野 均(東京医科大学 外科学第二講座)
研究分担者(所属機関)
- 高松 純樹(愛知県赤十字血液センタ-)
- 梛野 正人(名古屋大学医学部附属病院 消化器外科)
- 稲田 英一(順天堂大学医学部附属病院 麻酔科)
- 板倉 敦夫(埼玉医科大学 産婦人科)
- 上田 裕一(天理よろづ相談所病院)
- 大北 裕(神戸大学医学部附属病院 心臓血管外科)
- 宮田 茂樹(国立循環器病研究センター 輸血管理室)
- 佐々木 啓明(国立循環器病研究センター 心臓血管外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
胸部大動脈手術や肝切除術、および「産科DIC」による大量出血の原因のうち、凝固障害によるものでは止血の諸因子を適切に補充すること以外に止血法がない。術中大量出血や産科DIC時に発生する凝固障害の本態の解明、有効な輸血療法の確立を目標とする。
研究方法
1)胸部大動脈手術:① 周術期フィブリノーゲン(F)値が出血量に与える影響についての前向き観察研究、② 心臓血管外科手術での大量出血に対する濃縮F製剤の止血効果と予後に関する検討、 2)肝切除術:肝切除と膵頭十二指腸切除術(PD)の凝固線溶関連因子の測定、 3)産科緊急症例や産科DICにおける術前貯血、出血、濃縮F製剤の効果に関する検討:① 帝王切開周術期出血≧2000ml症例の術前合併症、出血量、輸血量、周術期血算、凝固検査についての検討、② 産科DICによる止血困難例における濃縮F製剤投与優先の新プロトコールの検討、③ 産科自己血貯血中のF濃度の変化に関する検討。
結果と考察
1)プロタミンによるヘパリン中和直後にF値は低下(150 mg/dl)したが、その後増加し40分後に200 mg/dlまで上昇。それに伴い出血は減少。急性大動脈解離ではF値は109 mg/dlまで低下。②32例に濃縮F製剤2.3±0.8 gを使用した結果、F濃度は102.6±43.8→180.6±40.4 mg/dlに上昇し凝固機能は回復。心臓血管外科手術の48例(24.6%)に、5.3±6.8 (2―18) gの濃縮F製剤を使用。最低F値と濃縮F製剤使用量は,<50 mg/dl: 15.7 g:、―100 mg: 5.0 g、―150 mg/dl: 5.1 g、―200 mg/dl:2.9 g、>201 mg/dl: 3.8 gで、濃縮F製剤の有効性を確認。2)肝切除例はPDに比較しVWF抗原/ADAMTS13活性上昇を認め、血栓性合併症例でより高い傾向にあり、活性上昇には出血量より残肝容積が有意に相関。 3)帝王切開において、出血<3000 mlでは同種血輸血率は低く、出血≧3000mlでは、RCCとFFP投与比は1:0.9。大部分で術後F値は100 mg/dl。 ② 新プロトコールにより輸血量は減少。 ③妊婦自己血にはFが多く含まれ貯血期間中も軽度濃度低下のみ。
結論
胸部大動脈手術および産科DICでの大量出血による凝固障害、特に急性低F血症に対する濃縮F製剤の必要性、有効性が確認されつつある。
公開日・更新日
公開日
2012-06-06
更新日
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