蛇毒抗毒素に関するWHOガイドライン改訂等に伴う、抗毒素製剤等の効率的製造・品質管理対応に関する研究

文献情報

文献番号
201132010A
報告書区分
総括
研究課題名
蛇毒抗毒素に関するWHOガイドライン改訂等に伴う、抗毒素製剤等の効率的製造・品質管理対応に関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-012
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
山本 明彦(国立感染症研究所 細菌第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 銀永 明弘(一般財団法人 化学及血清療法研究所 第一製造部)
  • 大隈 邦夫(一般財団法人 化学及血清療法研究所 品質保証部)
  • 玉那覇 康二(沖縄県衛生環境研究所 衛生科学班)
  • 一二三 亨(独立行政法人 国立病院機構災害医療センター 救命救急科)
  • 小崎 俊司(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科)
  • 櫻井 信豪(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 品質管理部)
  • 見理 剛(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 岩城 正昭(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 鳥羽 通久(財団法人 日本蛇族学術研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
WHOが示した蛇抗毒素のガイドライン(WHO-GL)に照らした蛇毒抗毒素製剤の検証、及びこのGLをモデルに国内で製造するウマ抗毒素製剤(ジフテリア、ボツリヌス等)の適応を検証することを目的とした。
研究方法
国家品質管理と各国およびWHO-GLの全体に係わる検証を国立感染症研究所の研究者が担当し、現行の製剤について、製造技術の改良と実製造への検証と製造工程中の品質管理法に関しては化学及血清療法研究所が担当し、蛇抗毒素製剤のウマ免疫用抗原としての蛇毒のWHO-GL対応については日本蛇族学術研究所(蛇研)と沖縄県衛生研究所(沖縄衛研)が担当し、ボツリヌス抗毒素を例としてWHO-GL対応は大阪府立大学を中心に化学及血清療法研究所、国立感染症研究所が担当した。臨床現場での抗毒素製剤の利用状況調査は国立病院機構災害医療センターを中心に実施し、製造におけるGMP適応の検証については医薬品医療機器総合機構を中心に検討した。
結果と考察
蛇毒抗毒素製剤の出発材料であるウマ免疫用抗原である蛇毒採取、毒素管理については、採毒する蛇の個別管理、採毒後の毒素管理、等については、品質に影響を与える各工程の手順を設けて記録を残すシステムを構築した。
抗毒素の製造工程・管理については、ウイルスクリアランスの方法を確立した。
品質管理試験については、日本においてはWHO-GLの推奨よりも多くの試験を行っているが、主な活性1つについての管理試験が妥当であると結論された。
市販後の使用実態調査については、具体的なシステムの構築が急務であることが明らかとなった。
結論
アジア、アフリカ諸国では多くの毒蛇による咬傷は公衆衛生上大きな問題であり、治療効果が望める品質の良い抗毒素の製造方法と品質管理はWHO-GLが示すとおり、共通の課題であるが、国内の蛇咬傷患者数およびその重篤性は、それほど大きくない。蛇毒の採取できる施設、人員も限られる一方、海外で見られる蛇の生態、毒素採取を目的とする蛇管理センターは必要としない。わが国で製造・品質管理するウマ抗毒素製剤は、ハブ抗毒素、マムシ抗毒素、ガスえそ抗毒素、ジフテリア抗毒素及びボツリヌス抗毒素の計5種類がある。WHO-GLの示した製造工程の複数の項目を検証した結果、これらを実際の製造で達成するためには、薬事法における製造認可承認の一部変更の手続きを必要とする。厚生労働省(国)が数種の抗毒素製品を発注し、管理保管する国有品についても、どのように対応するか、具体化するために製造所、行政当局、および専門家による協議が必要である。

公開日・更新日

公開日
2012-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201132010B
報告書区分
総合
研究課題名
蛇毒抗毒素に関するWHOガイドライン改訂等に伴う、抗毒素製剤等の効率的製造・品質管理対応に関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-012
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
山本 明彦(国立感染症研究所 細菌第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 銀永 明弘(一般財団法人 化学及血清療法研究所 第一製造部)
  • 大隈 邦夫(一般財団法人 化学及血清療法研究所 品質保証部)
  • 玉那覇 康二(沖縄県衛生環境研究所 衛生科学班)
  • 一二三 亨(独立行政法人 国立病院機構災害医療センター 救命救急科)
  • 小崎 俊司(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科)
  • 櫻井 信豪(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 品質管理部)
  • 見理 剛(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 岩城 正昭(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 鳥羽 通久(財団法人 日本蛇族学術研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
WHOでは医薬品に関する総括的な国際規制・ハーモナイズを討議するECBSにおいて、蛇毒ウマ抗毒素製剤の製造、品質管理及び規制方法に関するWHOガイドライン(WHO-GL)が示し、検討することが示された。これを踏まえて、国内製剤の製造、品質管理及び規制方法にかかる問題点を整理し、WHO-GLに準拠した方法を確立することを目的とした。
研究方法
1.ハブ及びマムシウマ抗毒素の製造工程(ペプシン消化工程)においてウイルスクリアランスの適用を調査した。
2.WHO-GLの毒蛇の管理および毒素の管理方法の検証とともに、マムシおよびハブの飼育及び採毒に関する管理マニュアの作成し、組織作りや教育訓練、職員研修法などの実施の必要性を検討した。
3.抗毒素の市販後の有効性や安全性についての追跡調査として、マムシ抗毒素とセファランチンおよび、その他の治療法の有効性について2回目のアンケート調査を実施した。
4.蛇毒抗毒素と生産工程上に共通点の多い蛇毒以外のジフテリア、ボツリヌス等の抗毒素製剤についても今後蛇抗毒素WHO-GLの影響が及ぶことを見越して品質管理試験など中心に分析を試みた。
結果と考察
1.ハブウマ抗毒素において、ペプシン消化工程が有するウイルス不活化能力をモデル試験により評価した結果、3種類のモデルウイルスを用いたウイルスクリアランスが確立された。
2.WHO-GLをモデルにハブの採毒マニュアルを作成した。
3.マムシ抗毒素およびセファランチンの使用実態および有効性判断をアンケート調査した結果、マムシ抗毒素の有効性が実証された。
4.日本においては多くの活性測定が規定されているが、WGLでは、どの蛇抗毒素についても1つの主要な活性、抗致死活性のみでの品質管理を規定していて、抗出血毒活性による品質管理を再考する必要清が明らかとなった。
結論
蛇毒抗毒素製剤の原材料である採取した蛇毒の個体の健康管理と採毒記録等のソフトについては、マニュアル等の作成を含めて対応策が具体化された。
製造工程におけるウイルスクリアランスでは、実製造で実施しているペプシン消化工程でのウイルス不活化が機能していることを確認した。
蛇毒抗毒素以外の抗毒素製剤についてのWHO-GL検証では、ウマ免疫用抗原の確保は製造所内での調達(菌培養と毒素精製)が可能となることから、他の生物学的製剤に適応したGMP対応の経験が生かされるため、蛇毒抗毒素のWHO-GL対応よりも比較的ソフト対応は容易なことが予想された。

公開日・更新日

公開日
2012-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201132010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
WHOでは医薬品に関する総括的な国際規制・ハーモナイズを討議するECBSにおいて、蛇毒ウマ抗毒素製剤の製造、品質管理及び規制方法に関するWHOガイドライン(WHO-GL)が示し、検討することが示された。これを踏まえて、国内製剤の製造、品質管理及び規制方法にかかる問題点を整理し、WHO-GLに準拠した方法を確立することを目的として研究をすすめ、本邦においては実施可能であることが明らかとなった。
臨床的観点からの成果
毒蛇咬傷は、毒蛇が多く生息する熱帯亜熱帯地域において重要な疾患と認識されてきた。その中で蛇毒抗毒素は、毒蛇を中和する唯一の薬品として毒蛇咬傷に対する第一選択薬であるにもかかわらず、その認識が不十分であった。WHOガイドラインの提唱により有効な薬剤の生産管理を実現する点で有用である。本邦においては、独自の品質管理法がなされてきていたが、市販後調査が不十分であった。本研究班の活動により、抗毒素製剤の臨床医における意識調査と効力の調査が実現でき、その重要性を伝えることができた。
ガイドライン等の開発
本研究は、WHOの提唱するガイドラインについて、本邦での適用の可能性を研究課題としたために新たなガイドライン等の開発は行っていない。
その他行政的観点からの成果
本邦においては、その製造コストと需要の関係から、蛇毒抗毒素の製造は企業としての採算成立が困難なものである。現在、蛇毒抗毒素の製造所は、1社である。当然、製造方法の改善や品質管理、市販後調査などを拡大改良する余裕はこの製造所にはない。WHOガイドラインへの対応による国際化の流れも、製造所のみでは対応できない状態であった。本研究は、このような事態を打開する役割を果たし、さらに、ウマ由来の抗毒素製剤についてもその対策を示すことができた。
その他のインパクト
蛇毒抗毒素の臨床での使用実績を調査してゆく過程で明らかになった毒蛇咬傷の判別が付きにくいことが臨床医や医療関係者で問題となっていた事態の改善のために、毒蛇咬傷の判別のためのパンフレットを作成し、関係機関に配布した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
「ヘビの判別と毒蛇咬症の診断」パンフレットを作成し関係各所に配布

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Umeda, K., Seto, Y., Kohda, et al.
Genetic characterization of Clostridium botulinum associated with type B infant botulism in Japan.
J. Clin. Microbiol. , 47 , 2720-2728  (2009)
原著論文2
Umeda, K., Seto, Y., Kohda, et al.
A novel multiplex PCR method for Clostridium botulinum neurotoxin type A cluster typing.
Microbiol Imuunol. , 54 , 308-312  (2010)
原著論文3
高橋元秀
クロストリジウム属菌感染症と抗毒素療法
日本集中治療医学会誌 , 44 (4) , 253-255  (2010)
原著論文4
一二三亨、高橋元秀、諸熊一則 他
Clostridium perfringens 感染患者に対する治療用ウマ抗毒素製剤の存在を知っていますか?
日本集中治療医学会誌 , 17 , 287-289  (2010)
原著論文5
鳥羽通久、松尾加代子
日本産のヘビ類に寄生する吸虫類
爬虫両棲類学会報 , 16 , 70-78  (2010)
原著論文6
Hifumi. T,, Yamamoto, A., Morokuma, K.et al.
Surveillance of the Clinical Use of Mamushi (Gloydius blomhoffii) Antivenom in Tertiary Care Centers in Japan.
Jpn. J. Infect. Dis. , 64 , 372-376  (2011)
原著論文7
Morokuma, K., Kobori, N., Fukuda, T.,et al.
Experimental Manufacture of Equine Antivenom againt Yamakagashi (Rhabdophis tigrinus).
Jpn. J. Infect. Dis. , 64 , 397-402  (2011)
原著論文8
Hifumi. T,, Yamamoto, A., Morokuma, K.et al.
Clinical Efficacy of Antivenom and Cepharanthine for the Treatment of Mamushi (Gloydius blomhojJIl) Bites in Tertiary Care Centers in Japan
Jpn. J. Infect. Dis. , 66 (1) , 26-31  (2013)
原著論文9
Hifumi. T,, Sakai, A., Yamamoto, A., et al.
Clinical Characteristics of Yamakagashi (Rhabdophis tigrinus) Bites: a National Survey in Japan, 2000-2013.
J. Inten. Care , 2 , 19-  (2014)
原著論文10
Hifumi. T,, Sakai, A., Yamamoto, A., et al.
Effect of antivenom therapy of Rhabdophis tigrinus (Yamakagashi snake) bites.
J. Inten. Care , 2 , 44-  (2014)
原著論文11
Silva. A., Hifumi. T,, Sakai, A., Yamamoto, A., et al.
Rhabdophis tigrinus is not a pit viper but its bites result in venom-induced consumptive coagulopathy similar to many viper bites.
J. Inten. Care , 2 , 43-  (2014)
原著論文12
Hifumi T, Taki H, Yamamoto A, Ato M,et.al.
Update of antivenom supply for redback spider bites in Japan.
J Intensive Care , 3 (1) , 7-  (2015)
原著論文13
Hifumi T, Sakai H, Kondo Y, Yamamoto A,et.al.
Venomous snake bites: clinical diagnosis and treatment.
J Intensive Care , 3 (1) , 16-  (2015)
原著論文14
Hifumi T, Masahiro Murakawa, Atsushi Sakai, Akihiko Ginnaga, Akihiko Yamamoto,et.al.
Potentially fatal coagulopathy secondary to yamakagashi (Rhabdophis tigrinus) bites that completely recovered with antivenom treatment.
Acute Medicine & Surgery , 2 (2) , 123-126  (2015)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201132010Z