医薬品の微生物学的品質確保のための新規試験法導入に関する研究

文献情報

文献番号
201132006A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品の微生物学的品質確保のための新規試験法導入に関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
室井 正志(武蔵野大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 棚元 憲一(武蔵野大学 薬学部)
  • 佐々木 次雄(医薬品医療機器総合機構)
  • 山口 進康(大阪大学 大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本薬局方には医薬品の微生物学的な品質を確保するためにいくつかの微生物試験法が規定されているが、その信頼性を保証する諸条件が十分に整えられていない。本研究では、新技術を用いた微生物の迅速同定法、迅速検出法を開発し、これらの参考情報への収載を目指す。さらに、本研究班で作成した無菌医薬品の製造に関する指針(無菌操作法と最終滅菌法)の改正を目的とした。
研究方法
微生物の迅速同定法はマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-TOFMS)を用い、微生物迅速検出法には、局方収載のCFDA-DAPI二重蛍光染色法を用いた。無菌医薬品の製造に関する指針の改正作業は医薬品医療機器総合機構および民間企業から21名を選出して行った。
結果と考察
実験室レベルで作成した1剤あるいは多剤薬剤耐性細菌株の識別能を検討した。コンピューターソフトを利用したクラスター解析を用いることでMALDI-TOF MSはこれらの薬剤耐性菌を識別できる能力を有するだけではなく、ある種の薬剤に対する異なるレベルの耐性を獲得した菌株の識別もできる可能性を見出した。また、非無菌医薬品の微生物管理における細菌数測定プロトコール作成のため、不溶性かつ非脂溶性の医薬品添加物として、滑沢剤であるタルクおよびステアリン酸マグネシウムを選び、これらに対する染色法を検討し、混入した細菌数を蛍光活性染色法(CFDA-DAPI二重染色法)により迅速に測定するためのプロトコールを決定した。さらに、“最終滅菌法による無菌医薬品の製造に関する指針” の研究班としての最終版をまとめ上げた。
結論
MALDI-TOF MSは薬剤耐性菌を識別できる能力を有するだけではなく、ある種の薬剤に対する異なるレベルの耐性を獲得した菌株の識別も可能である可能性を見出し、この手法が日本薬局方標準菌株の品質管理に有用な方法であることを示した。非無菌医薬品の微生物管理における細菌数測定プロトコール作成のために、不溶性かつ非脂溶性の医薬品添加物(滑沢剤)に対する染色法を検討し、混入した細菌数を蛍光活性染色法(CFDA-DAPI二重染色法)により迅速に測定するためのプロトコールを決定した。“最終滅菌法による無菌医薬品の製造に関する指針” の最終版をまとめ上げた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

文献情報

文献番号
201132006B
報告書区分
総合
研究課題名
医薬品の微生物学的品質確保のための新規試験法導入に関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
室井 正志(武蔵野大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 棚元 憲一(武蔵野大学 薬学部)
  • 佐々木 次雄(医薬品医療機器総合機構)
  • 那須 正夫(大阪大学 大学院)
  • 山口 進康(大阪大学 大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本薬局方には医薬品の微生物学的な品質を確保するためにいくつかの微生物試験法が規定されているが、その信頼性を保証する諸条件が十分に整えられていない。本研究では、新技術を用いた微生物の迅速同定法、迅速検出法を開発し、これらの参考情報への収載を目指す。さらに、本研究班で作成した無菌医薬品の製造に関する指針(無菌操作法と最終滅菌法)の改正を目的とした。
研究方法
微生物の迅速同定法はマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-TOFMS)を用い、微生物迅速検出法には、局方収載のCFDA-DAPI二重蛍光染色法を用いた。無菌医薬品の製造に関する指針の改正作業は医薬品医療機器総合機構、生物学的製剤の無菌性保証を担当している国立感染症研究所職員および民間企業から選出して行った。
結果と考察
マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-TOFMS)を利用した微生物の迅速同定法の検討では、BSL2レベルの微生物でも安全かつ迅速に測定できる菌体の前処理法を確立し、室内および質感再現性のよいマススペクトルプロファイルを得るための条件を設定した。これを用いることで、遺伝子配列解析で理論的に分類不可能な近縁菌種または同菌種に属する菌株、さらには1剤あるいは多剤薬剤耐性菌を識別できる可能性を見出し、この手法が日本薬局方標準菌株の品質管理に有用な方法であることを示した。
微生物の迅速検出法の確立に関する研究究では、十六改正日本薬局方に参考情報「蛍光染色による細菌数の迅速測定法」として収載された手法のうち、蛍光活性染色法(CFDA-DAPI二重染色法)について検討を行い標準的なプロトコールを作成した。
無菌医薬品の製造に関する指針(無菌操作法と最終滅菌法)の改正作業を行い、「無菌操作法による無菌医薬品の製造指針」を完成させ、監視指導・麻薬対策課より地方庁に事務連絡として発出された。また、「最終滅菌法による無菌医薬品の製造に関する指針」の研究班としての最終版をまとめ上げた。
結論
MALDI-TOFMSを利用した微生物の迅速同定法を検討し、この手法が日本薬局方標準菌株の品質管理に有用な方法であることを示した。十六改正日本薬局方に参考情報「蛍光染色による細菌数の迅速測定法」として収載された手法のうち、蛍光活性染色法について検討を行い標準的なプロトコールを作成した。「無菌操作法による無菌医薬品の製造指針」を完成させ、監視指導・麻薬対策課より事務連絡として発出された。また、「最終滅菌法による無菌医薬品の製造に関する指針」の研究班としての最終版をまとめ上げた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201132006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新たな迅速微生物同定法および迅速検出法の開発は研究機関等においても新たな方法として一般化することが可能である。特にMALDI-TOFMSを利用した新たな微生物迅速同定法はマススペクトルプロファイルのデータベース化など学問的に重要な意味を持つ。
臨床的観点からの成果
新たな迅速微生物同定法および迅速検出法の開発は臨床分野における感染症起因菌の迅速同定に多大なる影響を及ぼし、治療法の早期適用に起因するものである。また、既に作成した二つの無菌医薬品製造指針の国際調和を考慮しての見直しは、製薬業界における医薬品製造技術の向上を促し、より安全かつ有効な医薬品の提供に寄与し、国民の保健・医療・福祉の向上に大いに貢献するものである。
ガイドライン等の開発
「無菌操作法による無菌医薬品の製造指針」および最終滅菌法による無菌医薬品の製造に関する指針」を完成させ、それぞれ、平成23年4月20日、平成23年11月9日付けで、監視指導・麻薬対策課より地方庁に事務連絡として発出された。
その他行政的観点からの成果
新たな迅速微生物同定法および迅速検出法の開発は日本薬局方指定菌株の品質管理、さらにはEP、USPとの微生物試験法のハーモナイゼーションにも寄与するものである。
また、無菌医薬品製造指針の見直しは国内ではGMP指導に役立ち、国際的にもFDA無菌操作法ガイダンスやEU-GMP Annex 1並みに認知されることにつながる。
その他のインパクト
「無菌操作法による無菌医薬品の製造指針」は日本文およびその英訳版が医薬品医療機器総合機構のWebページに掲載され、国内はもとより世界的に発出された。

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
35件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
監視指導・麻薬対策課事務連絡「無菌操作法による無菌医薬品の製造指針」
その他成果(普及・啓発活動)
1件
「無菌操作法による無菌医薬品の製造指針」の日本文およびその英訳版が医薬品医療機器総合機構のWebページに掲載

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sugiyama K., Muroi M., Tanamoto K., et. al.
Deoxynivalenol and nivalenol inhibit lipopolysaccharide-induced nitric oxide production by mouse macrophage cells.
Toxicol Lett. , 192 , 150-154  (2010)
原著論文2
Ito Y., Sugimoto N., Akiyama T. et. al.
Cepaic acid, a novel xanthylium pigment from the dried outer scales of the yellow onion Allium cepa.
Tetrahedron Lett. , 50 , 4084-4086  (2009)
原著論文3
Tatebe C., Kawasaki H., Kubota H., et. al.
Analysis of residual solvent in thickeners by headspace gas chromatography using a standard addition method.
Japn. J. Food Chem. Safety , 16 , 78-83  (2009)
原著論文4
Muroi M., Shima K., Nakagawa Y., et. al.
Application of matrix-assisted laser desorption ionization-time of flight mass spectrometry for discrimination of Escherichia strains possessing highly conserved ribosomal RNA gene sequences.
Biol. Pharm. Bull. , 34 , 430-432  (2011)
原著論文5
Yoshida, T., Yoshioka, Y., Fujimura, M., et. al.
Urban aerosols induce pro-inflammatory cytokine production in macrophages and cause airway inflammation in vivo.
Biol. Pharm. Bull. , 35 , 780-783  (2010)
原著論文6
Shigeo Kojima, Satoshi Okada, Tsuguo Sasaki, et. al.
Reliability Study for Membrane-Processed Water for Injection (WFI).
PDA J. of GMP and Validation in Japan , 13 , 47-55  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201132006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,800,000円
(2)補助金確定額
3,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,516,884円
人件費・謝金 0円
旅費 173,500円
その他 109,616円
間接経費 0円
合計 3,800,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-