季節性インフルエンザワクチン及び新規製法によるインフルエンザワクチンに対応した新しい迅速安全性評価法の開発と標準化への検討

文献情報

文献番号
201132001A
報告書区分
総括
研究課題名
季節性インフルエンザワクチン及び新規製法によるインフルエンザワクチンに対応した新しい迅速安全性評価法の開発と標準化への検討
課題番号
H21-医薬・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
百瀬 暖佳(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 水上 拓郎(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 板村 繁之(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 阿戸 学(国立感染症研究所 免疫部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インフルエンザワクチンはシーズンに間に合うよう、短期間のうちに製造、出荷、国家検定を終える必要があり、高感度で迅速な安全性試験法の開発が求められている。現在までに我々は、インフルエンザワクチンの新規安全性試験法として、マーカー遺伝子の発現変動を指標とする品質管理の可能性を示した。本研究課題ではマーカー遺伝子の迅速発現解析系の開発を行い、その試験妥当性を検討することを目的とする。
研究方法
様々な活性を持つ検体を用い、遺伝子発現解析法の施設間、および試験間バリデーションを実施した。また、新規製法ワクチンを用いて、従来の動物安全性試験と遺伝子発現解析法の比較検討を行った。さらに、現行の安全性試験の一つであるマウス白血球数減少試験について、白血球数減少を惹起するメカニズム解析を行った。
結果と考察
参照品の段階希釈品、およびHAワクチンを接種したラット肺における遺伝子発現解析の結果、施設間のデータの回帰係数は概ね0.9以上であった。試験実施日、試験実施者を替えて再測定した場合も各試験データの回帰係数は0.9を超えており、安定した試験法であることが考えられる。また、新規製法ワクチンである培養細胞株由来HAワクチンとvirosomeアジュバント添加HAワクチンを用いて従来の動物安全性試験法と遺伝子発現解析法を実施したところ、試験結果には相関がみられた。今後国内に導入される可能性のある新規製法ワクチンについても、遺伝子発現解析法が適応できる可能性が示唆される。さらに、作用機序に不明な点が多いマウス白血球数減少試験に関してメカニズム解析を行った結果、インフルエンザワクチン接種に伴って誘導されるアポトーシスが、白血球数減少の実体であることが明らかとなった。
結論
遺伝子発現解析法は試験実施施設、試験実施日、試験実施者によらず、安定した試験法であることが示された。また、新規製法インフルエンザワクチンの品質管理試験法としても適応できる可能性が示唆された。さらに、現行の安全性試験であるマウス白血球数減少試験で認められる白血球数の減少は、アポトーシス誘導によるものであることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

文献情報

文献番号
201132001B
報告書区分
総合
研究課題名
季節性インフルエンザワクチン及び新規製法によるインフルエンザワクチンに対応した新しい迅速安全性評価法の開発と標準化への検討
課題番号
H21-医薬・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
百瀬 暖佳(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部 )
  • 水上 拓郎(国立感染症研究所 血液・安全性研究部 )
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部 )
  • 持田 恵子(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 板村 繁之(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 阿戸 学(国立感染症研究所 免疫部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インフルエンザワクチンはシーズンに間に合うよう、短期間のうちに製造、出荷、国家検定を終える必要があり、高感度で迅速な安全性試験法の開発が求められている。現在までに我々は、インフルエンザワクチンの新規安全性試験法として、マーカー遺伝子の発現変動を指標とする品質管理の可能性を示した。本研究課題ではマーカー遺伝子の迅速発現解析系の開発を行い、その試験妥当性を検討することを目的とする。
研究方法
様々な活性を持つ検体を用い、遺伝子発現解析法の解析手法間、施設間、およびアッセイ間バリデーションを実施した。また、新規製法ワクチンを用いて、従来の動物安全性試験と遺伝子発現解析法の比較検討を行った。さらに、現行の安全性試験の一つであるマウス白血球数減少試験について、試験精度の再評価と、白血球数減少を惹起するメカニズム解析を行った。
結果と考察
全粒子ワクチンおよび高濃度HA原液を接種したラット肺における遺伝子発現解析の結果、異なる解析手法間のデータの回帰係数は概ね0.8以上であり、相関が見られた。異なる施設間のデータの回帰係数は概ね0.9以上、異なるアッセイ間の回帰係数は0.9を超えており、遺伝子発現解析は安定した試験法であると考えられた。培養細胞由来とvirosome型のワクチンでも、従来法と遺伝子発現解析法に相関が見られ、今後導入の可能性がある新規製法ワクチンについても、遺伝子発現解析法が適応できる可能性が示唆された。マウス白血球数減少試験では、現行のマウス系統、週齢で合否判定基準0.2 U/mLが再現性良く測定できることが確認されたが、高濃度HA原液で有意な白血球数減少活性を認める検体はほとんど無く、試験対象を小分け製品から高濃度原液へ変更する事、およびその規格値について充分に検討する必要性が考えられた。本試験の作用機序には不明な点が多いが、他臓器への移動による白血球数減少は否定され、ワクチン接種に伴って誘導されるアポトーシスがその実体であることが明らかとなった。
結論
遺伝子発現解析は従来法と相関があり、安定した試験法であることが示された。また、新規製法ワクチンへも適応できる可能性が示唆された。マウス白血球数減少試験では、試験対象の高濃度原液への変更、およびその規格値の検討が必要であることが示された。白血球数が減少する機序については、アポトーシス誘導による事が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201132001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまでワクチンの安全性は、検体を接種された動物の生体反応を指標に管理されてきた。本研究では、インフルエンザHAワクチンにつき、試験動物の生体反応をマーカー遺伝子の発現変動として捉える遺伝子発現解析法を構築した。遺伝子発現解析法は従来の安全性試験法と比較して個体差が小さい、感度が高いという利点を有していることを明らかとした。また、複数のマーカー遺伝子を用いることでパラメータ数が増え、試験の安定性が増すことが期待される。
臨床的観点からの成果
従来の安全性試験では接種から1週間を要するが、遺伝子発現解析法では検定接種後2日目に試験が終了する。試験期間の短縮化は、インフルエンザHAワクチンの迅速な供給に大きく貢献できる。さらに近い将来、国内でも使用される可能性のある培養細胞由来のインフルエンザHAワクチン、およびvirosomeアジュバント含有インフルエンザHAワクチンにも遺伝子発現解析法が適応可能であることを明らかにした。
ガイドライン等の開発
特記事項なし。
その他行政的観点からの成果
マウス白血球数減少試験はこれまでにも試験精度が度々議論されてきたが、高濃度HA原液を試験対象とすることで精度を改善できる可能性を示した。また、ワクチン投与に伴う白血球数減少の原因がアポトーシス誘導であることを明らかとした。マウス白血球数減少試験は、末梢白血球の減少を惹起する因子や白血球数減少の機序が不明なために代替法の開発が遅れているが、本研究で機序の一端が解明されたことはその足がかりとなりうる。
その他のインパクト
国立感染症研究所の公式Webページ内で公表している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Haruka Momose, Jun-ichi Imai, Isao Hamaguchi et al.
Induction of Indistinguishable Gene Expression Patterns in Rats by Vero Cell-Derived and Mouse Brain-Derived Japanese Encephalitis Vaccines
Japanese Journal of Infectious Diseases  (2010)
原著論文2
Haruka Momose, Takuo Mizukami, Masaki Ochiai et al.
A New Method for the Evaluation of Vaccine Safety Based on Comprehensive Gene Expression Analysis
Journal of Biomedicine and Biotechnology  (2010)
原著論文3
Haruka Momose, Takuo Mizukami, Madoka Kuramitsu et al.
Establishment of a new quality control and vaccine safety test for influenza vaccines and adjuvants using gene expression profiling.
PLoS One  (2015)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
2017-05-30

収支報告書

文献番号
201132001Z