文献情報
文献番号
201131055A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児用食品中のビスフェノール系化合物の汚染実態の解明及びその健康影響評価
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-食品・若手-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中尾 晃幸(摂南大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
- 角谷 秀樹(摂南大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,960,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品の安全性確保のため、過去より厚生労働省等を中心に多くの食品・食事試料中の有害化学物質による汚染調査が行われ、国民に情報提供がなされてきた。しかし、乳幼児用食品中のBPAやTBBPA等による汚染実態及びその健康影響評価に特化した研究は、現在まで皆無に等しい。本研究の目的は、環境中で大量に使用されているビスフェノール系化合物に焦点を当て、乳幼児食品・食事中の汚染実態と1日摂取量の解明並びに健康影響評価を行うことである。
研究方法
研究方法はビスフェノール系化合物の高精度迅速型分析法の構築を行い、乳幼児食品中の上記化合物による汚染実態の解明を行った。次に、健康影響評価としてTBBPA曝露マウスにおける体内動態に関する検討を行った。分析法の構築では、高速溶媒抽出装置等により分析時間の短縮を図り、全工程を3日以内で達成可能な分析法の構築を目指した。構築した分析法を採用し、粉ミルク、離乳食調理用食品の分析を行った。健康影響評価では、各臓器、組織、血液、排泄物中のTBBPAとその代謝物を上記分析方法で定量した。
結果と考察
分析法の構築では、ブランク値が極めて低い分析法に改良され、種々の食品試料に適用できるようになった。乳幼児食品中の汚染実態は粉ミルクから3.3?3.8 ng/gの濃度で検出された。野菜類及びいも類についても同様の結果が得られ、食品への汚染は軽度であると言及された。次に、TBBPA及びその代謝物等の体内動態では、24時間後の糞及び尿中にTBBPA未変化体が全投与量の約40%が排泄されていることが明らかとなり、体内蓄積量が少ないことが判明した。さらに、代謝物の分析を行ったところ、グルクロン酸抱合による代謝物が尿中で高った。
結論
高精度迅速型分析法の構築に成功し、一部の乳幼児用食品の汚染実態が明らかとなった。その汚染レベルは1グラムあたり数ナノグラムであり、比較的低濃度であった。まだ検体数が乏しく、多数の食品、陰膳試料などを検討試料とし、汚染実態の解明に努めたい。 健康影響評価では、マウス体内で速やかに排泄されるものの、一部は全身に分布し、臓器中に検出されることが判明した。また、グルクロン酸抱合体として尿中に排泄される経路も確認した。興味深いことに、肝臓中で脱ハロゲン化された化合物が検出されたことより、これら代謝物による二次的な毒性影響の可能性も示唆される結果となり、今後の課題といえる。
公開日・更新日
公開日
2012-06-06
更新日
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