生鮮食品を共通食とする原因不明食中毒の発症機構の解明

文献情報

文献番号
201131044A
報告書区分
総括
研究課題名
生鮮食品を共通食とする原因不明食中毒の発症機構の解明
課題番号
H23-食品・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
大西 貴弘(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部第4室)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 良子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 鎌田 洋一(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部第3室)
  • 野崎 智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 黒田 誠(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析センター)
  • 八幡 裕一郎(国立感染症研究所 感染情報センター)
  • 佐藤 宏(山口大学 農学部)
  • 久米田 裕子(大阪府立公衆衛生研究所 細菌課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、生鮮魚介類もしくは獣肉を共通食とする原因不明食中毒が増加している。これまでの申請者らの研究から、ヒラメ場合ではKudoa septempunctataが、獣肉、特に馬肉の場合ではSarcocystis fayeriが原因微生物の一つであることを明らかにしている。本研究ではこれらの寄生虫の毒性メカニズムを明らかにし、原因不明食中毒の発症防止策を策定することを目的とする。
研究方法
原因不明食中毒の発生を防止するために、K.septempunctataおよびS. fayeriがどのようにして本食中毒を発症させるのかを明らかにする必要がある。そのために本研究ではこれら寄生虫の病原因子の解明、全ゲノム解析、疫学的調査・解析を実施した。また、K. septempunctataおよびS. fayeriの迅速検査法の開発に関する研究もあわせて行った。また、K. septempunctata以外のクドア属の寄生実態についても調査を行った。
結果と考察
腸管でK. septempunctataの胞子からアメーバ状の胞子原形質が放出され、この胞子原形質が腸管細胞に侵入することによって下痢が発症することを明らかにし た。疫学調査の結果、潜伏期の中央値は5時間で範囲は1.8-15.0時間であり、喫食量が多いと潜伏期が短くなることを明らかにした。K. septempunctata感染率の高い養殖場で胞子の保有率を8か月間調査したところ、検出頻度は20-80%とばらつくことが明らかになった。また、水温上昇とK. septempunctataの毒性との間には相関性は見られなかった。サバ、イシダイ、イシガキダイから新種の粘液胞子虫を分離した。メジマグロを原因食とする食中毒事例のKudoa種はKudoa neothunniである可能性が非常に高いことが示唆された。S. fayeriの病因物質の遺伝子のクローニングを行った。両寄生虫のゲノム解析を開始するとともに、迅速検査法の確立にも着手した。
結論
今回の研究から、K. septempunctataによる下痢発症機構およびその毒性の詳細が明らかになった。また、S. fayeriに関してもその毒性のもととなる原因物質のクローニングに成功した。今後発症機構の解析および検査法の開発をさらに進め、これらの寄生虫による食中毒の防止法につなげていきたい。

公開日・更新日

公開日
2012-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201131044Z