国民健康保険加入世帯の実態についての分析

文献情報

文献番号
199800008A
報告書区分
総括
研究課題名
国民健康保険加入世帯の実態についての分析
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
兵頭 明和(国際医療福祉大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
市町村国民健康保険は、その発足時においては、職域保険に加入する雇用者に対して、自営業者、農業従事者が加入する制度として位置づけられていた。しかし、その後の産業構造の変化、人口の高齢化等によって、市町村国民健康保険の加入者の構造は大きく変化している。それを端的に表す現象が、国民健康保険加入世帯における所得無し世帯や無職世帯の割合の増加である。ここでいう所得とは、生の収入ではなく保険料算定の基礎となる所得であるが、いずれにせよ保険料算定の基礎となる所得がゼロである世帯が増加するということは、市町村国民健康保険の保険者にとっては保険料収入の減少、ひいては保険財政の悪化につながることになる。この所得無し世帯、無職世帯については、世帯数が増加しているということは厚生省が発表している統計で示されているが、その世帯が具体的にどういう世帯であるのかということについては詳しくはわかっていないのが実状である。そこで、本研究では、こういった所得無し世帯、無職世帯が具体的にどのような世帯であるのかについて分析を行い、医療保険制度の検討のための基礎資料とすることを目的とする。
研究方法
国民健康保険加入世帯の実態を調査した国民健康保険実態調査と、国民全体の世帯の実態を調査した国民生活基礎調査の結果を比較・分析することによって、国民健康保険における所得なし世帯、無職世帯の実態について分析を行う。
結果と考察
国民健康保険実態調査に基づいて所得無し世帯の状況と、併せて国民生活基礎調査に基づいてある程度所得無し世帯と類似すると考えられる住民税非課税世帯の状況について分析を行った。いずれの場合でも、世帯主が高年齢である世帯の割合が高く、かつ、その中では女性単独世帯の割合が高くなっている。高齢女性の単独世帯の所得の状況をみると、公的年金に依存する割合が高く、それ以外の所得のウエイトは小さい。公的年金は、老齢年金が中心と思われるが、それ以外に遺族年金等の割合もかなりあるのではないかと考えられる。国民健康保険実態調査では老齢年金のみ把握しているが、それをみると全体的に年金額は低く、かつばらつきは大きなものとなっている。高齢女性の単独世帯が多いというのは、女性の平均寿命が男性よりも長いことから、もともとは夫婦のみであったものが夫が先に死亡するケースが多く、かつ、そういった場合、自分の老齢基礎年金を受給するとともに、夫が加入していた年金制度によってはさらに遺族年金を受給することになるが、遺族年金は国民健康保険税(料)課税対象所得からは除外され、老齢基礎年金は公的年金等控除を行うとゼロとなることによって、国民健康保険制度としては所得無しとなることによると考えられる。
結論
今後、さらに高齢化が進行するとともに、国民健康保険加入世帯の中で、高齢女性の単独世帯がますます増加していくことが予想されるが、国民健康保険制度のあり方、特に保険料負担のあり方を考える上でこういった状況も考慮する必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-