腸管出血性大腸菌汚染食品中の毒素プロファイリングに即応した実践的集団感染制圧システムの構築

文献情報

文献番号
201131037A
報告書区分
総括
研究課題名
腸管出血性大腸菌汚染食品中の毒素プロファイリングに即応した実践的集団感染制圧システムの構築
課題番号
H22-食品・若手-023
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 美帆(同志社大学 生命医科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 伸二(大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 )
  • 内藤 幹彦(国立医薬品食品衛生研究所 機能生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腸管出血性大腸菌(STEC)による感染は、下痢や出血性大腸炎ばかりでなく時に溶血性尿毒症症候群 (HUS)や脳症等、重篤な合併症を併発する。Shiga toxin (Stx)はSTECが産生する主要な病原因子であり、Stx1、Stx2の2つのファミリーからなる。Stxには様々なバリアントが存在し、臨床分離株によっては複数の異なったタイプのStxを産生し、このことが症状の重篤化に関係していると言われている。本研究では、1)市販牛肉、患者からSTECを単離し、そのSTEC血清型、Stx遺伝子、Stxバリアントの同定を行う、1)をもとに、2)独自に開発した多価型ペプチドライブラリー法並びに新たに確立した多価型ペプチドシート合成技術を併用し、Stx2バリアントに対する阻害モチーフの開発を行う。3)Stx阻害ペプチドのStx毒性阻害機構の解析を行うことを目的とする。
研究方法
stx遺伝子のスクリーニングはマルチプレックスPCR法、stx陽性菌分離はコロニーハイブリダイゼーション法を用いた。Stx2dに対する多価ペプチドの同定は、多価型ペプチドライブラリー法と多価ペプチドシート合成技術を用いて行った。THP1細胞をStxで処理し、細胞の形態観察及び色素排除法等で細胞死を起こす細胞株を探索した。Stx処理細胞の各種タンパク質の発現及びカスパーゼ活性化等をウェスタンブロット法により解析した。
結果と考察
小児下痢症患者便検体EHEC3株、牛肉7株のSTECを新たに分離した。また食肉から型別できないsxt1遺伝子を持ったSTEC、stx2バリアントのstx2-0118、stx2d、stx2e遺伝子が見つかった。多価型ペプチドライブラリー法と多価型ペプチドシート合成技術を用い、最終的にStx2dBサブユニットに強く結合し、かつStx2よりもStx2dに対し高い阻害活性を有するペプチドモチーフを2種同定した。本法を用いることで、これまで不可能とされてきたバリアント間の微細な構造の相違を認識する特異性の高い阻害ペプチドを初めて同定することができた。StxによるTHP1細胞のアポトーシスはStx阻害ペプチドによって阻害されなかった。したがってStx阻害ペプチドのStx阻害作用はStxによるアポトーシス関連分子の活性化の阻害によらない新たな作用機構の可能性がある。
結論
市販牛肉、臨床からSTEC株を新たに計10株単離された。stx2バリアントはstx2d, stx2e, stx2-O188が実際に分離された。Stx2よりもバリアントStx2dに対し高い阻害活性をもつ阻害ペプチドを最終的に2種類同定した。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201131037B
報告書区分
総合
研究課題名
腸管出血性大腸菌汚染食品中の毒素プロファイリングに即応した実践的集団感染制圧システムの構築
課題番号
H22-食品・若手-023
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 美帆(同志社大学 生命医科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 伸二(大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 )
  • 内藤 幹彦(国立医薬品食品衛生研究所 機能生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腸管出血性大腸菌(STEC)による感染は、下痢や出血性大腸炎だけでなく、時にHUSや脳症等の重篤な合併症を併発する。Shiga toxin (Stx)はSTECが産生する主要な病原因子であり、Stx1、Stx2の2つのファミリーからなる。Stxにはさまざまなバリアントが存在しており、臨床分離株によっては、複数の異なったタイプのStxを産生し、このことが症状の重篤化に関係していることが明らかになりつつあるが、その詳細については不明である。本研究は1)近畿地方の食肉牛、食品、臨床現場、各々からSTEC株を分離し、STEC血清型、Stx遺伝子、Stxバリアントを同定すること、2) 1)をもとに、我々が独自に開発した多価型ペプチドライブラリー法と、今回新たに確立した多価型ペプチドシート合成技術(特願2010-019731)を併用し、各Stxバリアントに対する特異的阻害ペプチドモチーフを開発すること、3)さらに同定されたStx阻害ペプチドのStx毒性阻害機構の解析を行うことを目的とする。
研究方法
Stx遺伝子スクリーニングはマルチプレックスPCR法、stx陽性菌分離はコロニーハイブリダイゼーション法を用いた。Stx2dに対する多価ペプチドの同定は多価型ペプチドライブラリー法、多価型ペプチドシート合成技術を用いた。Stx処理により細胞死をおこす細胞の各種タンパク質の発現及びカスパーゼ活性化等をウェスタンブロット法により解析した。
結果と考察
食品47検体から15株、食肉牛900検体から171株、臨床患者1171検体から90株のSTEC株が分離された。Stx2バリアントはStx2d, Stx2e, Stx2-0118を検出した。2dBHに強く結合し、Stx2dの毒性を抑制するペプチドモチーフを計8種同定することができ、さらにStx2に比べStx2dに対する阻害活性の強いペプチドモチーフを最終的に2種同定した。この結果は、本法を用いてバリアント特異的な阻害ペプチドを各々同定することが原理的に可能であることを証明している。Stx阻害ペプチドのStx毒性阻害作用は、Stxによるアポトーシス関連分子の活性化阻害によらない新たな作用機構の可能性がある。
結論
家畜牛糞便、市販牛肉、臨床からSTEC株計276株(ほぼstx1/stx2両陽性菌あるいはstx2単独陽性菌)を分離した。Stx2よりもStx2dに対して高い阻害活性をもつ多価ペプチドモチーフを2種類同定した。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201131037C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまでに我々が独自に開発した多価型ペプチドライブラリー法と今回新たに確立した多価型ペプチドシート合成技術を併用することで、Stx2バリアントのStx2dに対して高い阻害活性をもつ阻害ペプチドを同定した。本法により、これまで不可能とされてきたバリアント間の微細な構造の違いを認識する特異的モチーフの取得を初めて可能にした。
臨床的観点からの成果
臨床患者1171検体から90株のSTEC株が分離された。分離されたSTECからはO157:H7、O157:H-、 O26:H-、O26:H11、O145:H-が検出され、stx遺伝子はstx1/stx2両陽性株、stx1/stx2d両陽性株、stx1単独陽性株、stx2単独陽性株、stx2d単独陽性株が検出された。またバリアントはStx2d、Stx2e、Stx2-O118が検出された。
ガイドライン等の開発
該当せず
その他行政的観点からの成果
食品47検体から15株、食肉牛900検体から171株のSTEC株が実際に分離された。牛から単離されたSTEC株の血清型は、O22:H8、O130:H24、O17:H11、O153:H25、stx遺伝子はO22:H8とO153:H25はstx1とstx2の両陽性、O130:H24とO17:H21はstx2単独陽性であった。食肉由来のSTEC株からはstx1単独陽性株、stx2単独陽性株、stx1/stx2両陽性株が検出された。
その他のインパクト
2011年、本ペプチドがサルにおいてStx2の毒性を顕著に抑制することが証明され(Steams-kurosawa D.J.,et.al, Pediatr.Nephrol.,2011)、このことがNature medicine(2011.Vol.17.No.7)のnewsに紹介された。2012年4月8日付読売新聞に「O157ベロ毒素を無害化」と本研究が紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
3件
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
Stx2阻害4価ペプチドおよびこのStx2阻害4価ペプチドを含む治療薬
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2013-13746
発明者名: 西川喜代孝、高橋美帆、三井貴瑛、山崎伸二
出願年月日: 20130128
特許の名称
ペプチドのスクリーニング方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第5718574号
発明者名: 西川喜代孝、高橋美帆、加藤美帆子
権利者名: 学校法人同志社
出願年月日: 20100129
取得年月日: 20150327
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Watanabe-Takahashi M, Tsutsuki K, Takenaka Y,et.al
Identification of a Peptide-based neutralizer that potently inhibits both Shiga toxins 1 and 2 by targeting specific receptor-binding regions.
Infect. Immun. , 81 (6) , 2133-2138  (2013)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201131037Z