かび毒の毒性評価法およびデトキシケーションに関する研究

文献情報

文献番号
201131036A
報告書区分
総括
研究課題名
かび毒の毒性評価法およびデトキシケーションに関する研究
課題番号
H22-食品・若手-022
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成23年度はかび毒の毒性を抑制(デトキシケーション)しうる食品由来成分の同定を進め、仮にかび毒混入が生じた場合でも同毒性が低減されうる食品の開発にむけた基礎データの集積を図った。
研究方法
トリコテセン系かび毒に対して、緑茶カテキンの一つであるエピガロカテキンガレートの効果を細胞毒性の指標となるMTTアッセイにより検討した。さらにそのメカニズムについて、各種生化学的手法を用いて検討を進めた。各種生化学的手法としてGlutathione含量の測定にはDTNB法を、細胞内活性酸素の測定には蛍光プローブ、ジクロロフルオレセイン誘導体を用いて、細胞内Thioredoxin1含量はWestern blot法により評価した。
なお、MTTアッセイにはマウスマクロファージ様細胞株RAW264を、メカニズム解析には主にヒト肝癌細胞株HepG2を用いて検討した。
結果と考察
本研究よりトリコテセン系かび毒により誘導されるマウスマクロファージ様細胞の細胞毒性を緑茶内に含まれるカテキン類が減弱させる効果を示すことが明らかとなった。その効果はトリコテセン系かび毒が誘発するアポトーシスを同カテキン類が阻害することがその分子基盤の一つであることが示唆された。一方、白血球系細胞と比較しトリコテセン系かび毒に対して感受性の低いヒト肝ガン由来細胞株は、細胞毒性を呈しない濃度では細胞内を還元状態にシフトさせていることが明らかとなった。またその還元状態には細胞内のGlutathioneではなくThioredoxin1の蓄積が関与している可能性も明らかにした。抗酸化作用は緑茶カテキンの生理活性の一つである。以上の結果から、トリコテセン系かび毒のデトキシケーションには緑茶カテキン類が有効であること、またその機序は抗酸化作用によるアポトーシスの阻害である可能性が推測された。
結論
トリコテセン系かび毒であるDON、NIV、T-2 およびHT-2の毒性について、マウスマクロファージ様細胞に対する細胞毒性をメルクマールに同毒性を低減出来る食品由来成分として緑茶カテキン類を同定した。さらにトリコテセン系かび毒に対して白血球系細胞と比較して耐性を持つヒト肝ガン由来細胞株HepG2を用いた検証で、緑茶カテキンの抗酸化作用がトリコテセン系かび毒の毒性低減に有効であることも示唆した。HepG2細胞は細胞内の主要な還元分子の一つであるThioredoxin1をアップレギュレーションすることによりトリコテセン系かび毒により惹起される細胞毒性に対して適応している可能性あることから、抗酸化作用を有する分子が同毒性の低減に有効であることが推察された。
 

公開日・更新日

公開日
2012-05-23
更新日
-

文献情報

文献番号
201131036B
報告書区分
総合
研究課題名
かび毒の毒性評価法およびデトキシケーションに関する研究
課題番号
H22-食品・若手-022
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
かび毒の毒性評価法およびそのデトキシケーションについて乳幼児も摂取する可能性のある同毒素にも留意して実施した。初年度では、新規な毒性評価法の構築を目的に、ヒトマクロファージ様細胞を用いたToll-like receptor(TLR)シグナルに対する各種かび毒の影響について解析を行った。最終年度は、かび毒のデトキシケーションを指向した研究として、トリコテセン系かび毒の毒性に対する緑茶カテキン類の効果とその作用メカニズムについて検討した。
研究方法
ヒトマクロファージ様細胞にTHP-1を用いTLRシグナルに対する各種かび毒の影響について同シグナル下流に位置する転写因子NF-kBの活性化に対する作用を、NF-kB依存性レポーター活性を指標に検討した。かび毒のデトキシケーション研究には、マウスマクロファージ様細胞RAW264とヒト肝癌由来細胞株HepG2を用い、トリコテセン系かび毒により惹起されるRAW264の細胞毒性に対する緑茶カテキン類の効果を主にMTT法により検討、またHepG2が示すトリコテセン系かび毒耐性機序を細胞内還元物質であるGlutathioneとThioredoxin1含量を指標に検討した。
結果と考察
トリコテセン系かび毒については、今回構築した評価系はリスクプロファイルの提供に用いることが可能と考えられる結果を得た。デトキシケーションについては、トリコテセン系かび毒により誘導されるRAW264細胞の細胞毒性を緑茶内に含まれるカテキン類が減弱させる効果を示すこと、またその効果はトリコテセン系かび毒が誘発するアポトーシスを同カテキン類が阻害することがその分子基盤の一つであることが示唆された。さらに、白血球系細胞と比較しトリコテセン系かび毒に対して感受性の低いHepG2は、細胞毒性を呈しない濃度では細胞内を還元状態にシフトさせていること、またその還元状態へのシフトには細胞内のGlutathioneではなくThioredoxin1の蓄積が関与している可能性も明らかにした。抗酸化作用は緑茶カテキンの生理活性の一つである。以上の結果から、トリコテセン系かび毒のデトキシケーションには緑茶カテキン類が有効であること、またその機序は抗酸化作用によるアポトーシスの阻害である可能性が示唆された。
結論
TLRシグナルに対する影響を指標としたバイオアッセイ系が、一部のかび毒のリスクアナリシスに使用できる可能性を明らかにした。また、トリコテセン系かび毒については、その毒性低減に緑茶カテキン類が有効である可能性を見いだした。

公開日・更新日

公開日
2012-05-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201131036C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Toll-like receptorシグナルに対する影響を指標としたバイオアッセイ系が、一部のかび毒のリスク評価に応用できる可能性を明らかにした。また、トリコテセン系かび毒については、その毒性低減に緑茶カテキン類が有効である可能性を示した。尚、 毒性低減の分子機序については、緑茶カテキン類が有する抗酸化作用が関与している可能性も示唆した。
臨床的観点からの成果
特記事項なし
ガイドライン等の開発
今後ガイドライン改訂等の基礎的資料となりうる毒性データが得られた。
その他行政的観点からの成果
本研究は基礎研究として実施されたものであるが、デトキシケーションについては、今後本研究の成果をかび毒による健康被害の防止に応用された場合には、行政的にも大きな成果をもたらす可能性を内包していると考えられる。
その他のインパクト
かび毒の毒性評価のみならず、同健康被害に対してセーフティーネット的アプローチについても検討を進めたことは、食の安心・安全に直結する研究という意味で社会的インパクトがあったと考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sugiyama, K., Kawakami, H., Kamata, Y., et al.
Effect of a combination of deoxynivalenol and nivalenol on lipopolisaccharide-induced nitric oxide production by mouse macrophages
Mycotoxin Res.  (2011)
原著論文2
Sugiyama, K., Kinoshita, M., Kamata, Y., et al.
(-)-Epigallocatechin gallate suppresses the cytotoxicity induced by trichothecene mycotoxins in mouse cultural macrophages
Mycotoxin Res.  (2011)
原著論文3
Sugiyama, K., Kinoshita, M., Kamata, Y., et al.
Thioredoxin-1 contributes to protection against DON-induced oxidative damage in HepG2 cells
Mycotoxin Res.  (2012)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201131036Z