肥満・脂質代謝を標的にした機能性健康食品の免疫学的機能・安全性評価

文献情報

文献番号
201131033A
報告書区分
総括
研究課題名
肥満・脂質代謝を標的にした機能性健康食品の免疫学的機能・安全性評価
課題番号
H22-食品・若手-019
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
國澤 純(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、脂質代謝を標的にし、“やせる、太らない”を謳った多くの機能性健康食品が開発されている。脂質は免疫制御や各種免疫疾患の発症において重要な役割を担っていることを考慮すると、脂質代謝を標的とした機能性健康食品が特に油の吸収部位である腸管組織における免疫機能に影響を与え、その結果、各種免疫疾患につながる危険性が考えられる。本事業においては脂質代謝を標的とした機能性健康食品、特に機能性食用油の免疫学的機能・安全性を評価することを目的とする。
研究方法
機能性食用油のうち飽和脂肪酸を多く含むヤシ科食用油を基本組成とする食用油に焦点をあて、これらの食用油を含む餌で飼育したマウスに、ニワトリ卵白アルブミンをモデルアレルゲンとして用いる食物アレルギーモデルを適用した際のアレルギー・免疫応答について解析した。
結果と考察
ヤシ科の食用油であるパーム油を4%含む餌で飼育したマウスに食物アレルギーモデルを適用したところ、アレルギー性下痢の増悪化が認められたが、パーム油と同じくヤシ科の食用油で飼育したマウスではアレルギー性下痢の発症はコントロール群である大豆油と同程度であった。
結論
健康への影響が危惧されている飽和脂肪酸であっても、炭素鎖の長さの違いによりアレルギー発症度合いが異なること、太らないと謳われている中鎖飽和脂肪酸を多く含むヤシ油は食物アレルギーの発症にほとんど影響を示さないことが判明した。

公開日・更新日

公開日
2012-05-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201131033B
報告書区分
総合
研究課題名
肥満・脂質代謝を標的にした機能性健康食品の免疫学的機能・安全性評価
課題番号
H22-食品・若手-019
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
國澤 純(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、脂質代謝を標的にし、“やせる”“太らない”を謳った多くの機能性健康食品が開発されている。脂質は免疫制御や各種免疫疾患の発症において重要な役割を担っていることを考慮すると、脂質代謝を標的とした機能性健康食品が特に油の吸収部位である腸管組織における免疫機能に影響を与え、その結果、各種免疫疾患につながる危険性が考えられる。本事業においては脂質代謝を標的とした機能性健康食品、特に機能性食用油の免疫学的機能・安全性を評価することを目的とする。
研究方法
機能性食用油のうちジアシルグリセロールとヤシ科食用油に焦点を当て、これらの食用油を含む餌でマウスを飼育した際の腸管組織における基礎免疫機能、ならびに食物アレルギーモデルを適応した際の病態形成について解析した。
結果と考察
ジアシルグリセロールから構成される餌で飼育したマウスはトリアシルグリセロールに比べ基礎腸管免疫や食物アレルギーに関わる細胞の活性化傾向が認められた。またヤシ科の食用油のうちパーム油は腸管免疫の活性化を誘導する一方で、同じヤシ科食用油であるヤシ油は腸管免疫の機能にほとんど影響を示さないことが示された。
結論
グリセロールとの結合様式や飽和脂肪酸の長さといった形態の違いにより、腸管免疫へ与える機能が異なることが判明した。

公開日・更新日

公開日
2012-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201131033C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本事業から得られた知見は、今まで関与が示唆されていた脂質と免疫疾患との関連について、グリセロールと脂肪酸との結合様式や飽和脂肪酸の鎖長など、新たな観点から検討した結果となる。特に今回検討した食物アレルギーについては、油との関連が今までほとんど検討されていなかった項目であることから、その点からも新規学術情報の提供につながる。
臨床的観点からの成果
臨床的観点から健康への影響が危惧されている飽和脂肪酸であるが、その効果は炭素鎖の長さの違いにより異なることが示された。一方でジアシルグリセロールは2ヶ月間の摂取でやや免疫の活性化が認められた。これらの知見は食用油という日常的に摂取しているものが、免疫系に影響を与えること、またその作用は油の形態により異なることを示す臨床的に重要な知見である。
ガイドライン等の開発
今回得られた知見はまだ審議会等で参考にされたことはないが、今後、研究を進めていくことで、食の安全性に関するガイドラインの作成において、脂質と免疫という観点から重要な情報になると考えられる。
その他行政的観点からの成果
本事業から得られた知見は、国民の健康維持に直結する食品安全行政にとって重要な知見となると共に、これらを発展させることで、各種免疫疾患のリスク低減による国民の保健医療、ならびに免疫疾患等の患者数減少による医療経済の改善が期待される。
その他のインパクト
本事業の内容では、マスコミ等で取り上げられたり、公開シンポジウム等の公開を行っていないが、今回得られた知見が食用油と免疫・アレルギーという日常に密接に関連したものであることから、今後、本研究を発展させ、学術的観点と臨床的観点からの情報を集積することで、一般にも広く注目されるものと期待する。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
9件
学会発表(国内学会)
34件
うち招待講演29件
学会発表(国際学会等)
17件
うち招待講演5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
T. Obata, Y. Goto, J. Kunisawa, et al.
Indigenous opportunistic bacteria inhabit mammalian gut-associated lymphoid tissues and share a mucosal antibody-mediated symbiosis
Proc Natl Acad Sci USA , 107 (16) , 7419-7424  (2010)
原著論文2
D. Y., Kim, A. Sato, S. Fukuyama, et al.
The airway antigen sampling system: respiratory M cells as an alternative gateway for inhaled antigens
J Immunol , 186 (7) , 4253-4262  (2011)
原著論文3
J. Kunisawa, E. Hashimoto, I. Ishikawa, et al.
A pivotal role of vitamin B9 in the maintenance of regulatory T cells in vitro and in vivo
PLoS ONE , 7 (2) , 32094-  (2012)
原著論文4
7 Y. Kurashima, T. Amiya, T. Nochi, et al
Extracellular ATP mediates mast cell–dependent intestinal inflammation through P2X7 purinoceptors
Nature Communications , 3 , 1034-  (2012)
10.1038/ncomms2023

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201131033Z