自家産米摂取によってカドミウム曝露を受けた農家に対する砒素と鉛の複合曝露とその健康影響

文献情報

文献番号
201131027A
報告書区分
総括
研究課題名
自家産米摂取によってカドミウム曝露を受けた農家に対する砒素と鉛の複合曝露とその健康影響
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-食品・一般-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
香山 不二雄(自治医科大学 医学部 環境予防医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 兵剛(秋田大学大学院医学系研究科医学専攻環境保健学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
12,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
鉱山による土壌汚染農地で収穫される米を摂取して居る農家住民の健康調査を行い、尿中および血中のカドミウム(Cd)、鉛、ヒ素(As)を測定し、腎機能、骨密度への影響がないか調査した。また、被験者の自家産米中CdおよびAs濃度を測定し、過去の同被験者の米中Cd濃度を比較し、湛水管理の実施状況および曝露量評価を行うことを目的とした。
研究方法
上流に鉱山があった水系から5つの部落を、上流に鉱山はなかった水系から1つの部落を選択して健康診断を行った。自家産米の提出、身長・体重・握力測定、採血・採尿、骨密度の測定、質問票調査を行った。一般的な血液・尿検査に加え、血液中Cd・鉛濃度、尿中Cd・総As濃度を測定した。腎機能指標として尿中α1-ミクログロブリン・β2-ミクログロブリン濃度を測定した。また、農家の自家産米中のCd・As濃度も測定した。健康診断終了後は、受診結果を受診者全員に個人結果報告書として発送した。また部落毎に報告会を開催した。異常所見の見られた受診者には個別に健康相談、保健指導などを行い、さらに、精密検査や治療が必要な方には近くの病院・医院を紹介した。
結果と考察
6カ所の集落で40歳以上の農家548人中346人が健康診断を行った(受診率59.0%)。そして、この地域での平成21年度から3年間の調査を集計すると、集落数12 箇所、受診者数975人となった(受診率70.5%)。昨年度と同様に、米中Cd濃度が0.4ppm以上の米はなく、栽培中の湛水管理による米中Cd濃度低減効果と考えられた。また、米中As濃度は国内の既報の値と比較して高くはなく、湛水管理による米中Asの増加は無いことが明らかとなった。一方、血中・尿中Cd濃度はともに高齢者で高い値を示し、過去の曝露による高度の体内蓄積が示唆されたが、血中鉛、尿中Asの値は高くはなかった。そして、調査した12 集落のデータを水系別に解析した結果、上流に鉱山がなかった水系よりも上流に鉱山・製錬所があった水系の方が血中・尿中Cd濃度は高く、特に70歳以上の女性では腎機能への影響が統計学的に有意に認められた。また、カドミウム腎症が疑われる方も数人存在した。
結論
この地域の農家では高度の経口Cd曝露を受けたために腎機能への影響が現れていること、しかしこの程度の鉛や砒素の曝露ではCdによる腎機能障害に対する複合的な影響はほとんどないことが考えられた。

公開日・更新日

公開日
2012-09-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201131027Z