食品汚染カビ毒の実態調査ならびに生体毒性影響に関する研究

文献情報

文献番号
201131022A
報告書区分
総括
研究課題名
食品汚染カビ毒の実態調査ならびに生体毒性影響に関する研究
課題番号
H22-食品・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
局 博一(東京大学 大学院農学生命科学研究科獣医学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 良子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 渋谷 淳(東京農工大学 農学部獣医学科)
  • 佐藤 敏彦(北里大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
14,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
フザリウム属菌が産生するカビ毒であるT-2トキシン、HT-2トキシン、ゼアラレノンおよびペニシリウム属菌が産生するシトリニンの食品汚染実態と分析法の検討、これらのカビ毒の生体毒性評価、日本人のカビ毒曝露量評価のためのモデル開発を行った。
研究方法
汚染実態調査では、11種類全170試料について、LC-MS/MSを用いたフザリウムトキシンの測定を行った。毒性評価試験では、心電図記録による心機能影響、酸素消費量測定による心筋細胞影響、胃滞留試験による催吐作用、d-ROM/BAP法、グルタチオン測定による血液や細胞の酸化ストレス度測定、免疫細胞毒性、および全身臓器の病理組織観察を行った。曝露評価では日本人の米摂取量を例にとって、サンプル数の相違による母集団推計のばらつき度を確率論的モデルにより検討した。
結果と考察
汚染実態調査では、T-2トキシンとHT-2トキシンは半数以上の試料で検出され、ゼアラレノンは国産小麦、国産大麦、ハトムギ、雑穀米、コーングリッツなど半数以上の試料で検出された。汚染濃度について、T-2トキシンの平均濃度が1 ng/gを超えた試料はハトムギとコーングリッツ、HT-2トキシンの平均濃度が1 ng/gを超えた試料は国産小麦、ハトムギ、コーングリッツ、シリアル及び胚芽入り加工品であった。毒性評価試験では、高濃度のT-2トキシンによる不整脈誘発作用および比較的低濃度での心筋細胞ミトコンドリア機能への直接影響が観察された。また、T-2トキシン、HT-2トキシンによる酸化ストレス影響、シトリンとオクラトキシンAとの共存による相乗的な複合影響がみられた。シトリンの90日間経口投与により、卵巣相対重量の増加、子宮粘膜変化、腎尿細管の増殖性変化が認められた。曝露評価では、米の摂取量を例にした場合、サンプル数の相違による95%タイルで比較した場合、50サンプル以上あれば、誤差範囲は上下20%程度におさまることが確かめられた。
結論
わが国の食品中のフザリウムを中心にしたカビ毒の汚染実態が明らかになりつつある。T-2トキシンおよびHT-2トキシンは毒性が高く、臓器や細胞に毒性を有すことが明らかになった。食品および飼料中のこれらのフザリウム毒素の汚染状況のモニタリングを継続して実施する必要がある。またわが国における汚染実態を踏まえた規制値を検討する必要性がある。

公開日・更新日

公開日
2012-05-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201131022Z