アラキドン酸補給の安全性に関する研究

文献情報

文献番号
201131016A
報告書区分
総括
研究課題名
アラキドン酸補給の安全性に関する研究
課題番号
H22-食品・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
浜崎 智仁(富山大学 和漢医薬学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 奥山 治美(金城学院大学 脂質栄養オープンリサーチセンター)
  • 大原 直樹(金城学院大学 薬学部)
  • 内藤 由紀子(国立循環器病研究センター 病態ゲノム医学部)
  • 螺良 愛郎(関西医科大学 医学部)
  • 小林 哲幸(お茶の水女子大学 大学院 )
  • 永田 伴子((財)食品薬品安全センター秦野研究所)
  • 橋本 道男(島根大学 医学部)
  • 守口 徹(麻布大学 生命・環境科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
8,584,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アラキドン酸(ARA)補給の安全性につき、多方面から検討することを目的とした。ヒトでの研究は、すでに終了しているものを再検討した。
研究方法
1.ARA補給の安全性に関する研究(総括及び疫学調査)(浜崎・奥山)
1-2.食生活と血液中のARA等の関係について(鈴木)
2.脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)でのARA投与の影響(大原)
3.ラットの大腸炎モデルでのARA補給の影響(内藤)
4. 胎仔期のARAが乳癌発症に及ぼす影響(in vitro、マウス、ラット)(螺良)
5. マウスの炎症性疾患モデルでのARAの影響(小林)
6.ラットでの発癌プロモーション過程へのARAの影響(永田)
7.ラットの網膜、NK細胞活性、骨格筋に及ぼすARA投与の影響(橋本)
8.老若マウスの脳機能に及ぼすARAの影響(守口)
結果と考察
以下の5項目に分けて記載する。
1.脳機能・脳卒中への影響 
ARAの慢性投与は、n-3系脂肪酸欠乏を亢進させ自発運動量を増やした(守口)。SHRSPへのARA投与は、雌の血清中リン脂質濃度を低下させた(大原)。
2.眼組織・運動機能に及ぼす影響 
魚油欠乏ラットにARAを13週間投与すると、報酬餌をとりきる時間を短くした。3ヶ月で右眼での網膜電位の低下が抑えられた(橋本)。眼組織の異常が出やすいマウス(C57BL/6)ではARA投与により、♀胎児の眼組織のリゾリン脂質が増加した。(小林)。
3.発癌と発癌プロモーションへの影響 
ヒト乳癌細胞株を移植したヌードマウスでARA投与は乳癌細胞を増殖促進した(螺良)。発癌プロモーションモデルでは、膀胱の乳頭腫発生がARA投与で増えた(永田)。
4.アレルギー・炎症性疾患・免疫能への影響 
n-6系脂肪酸をラットに投与すると、炎症関連分子群が多くなった(小林)。魚油欠乏ラットにARAを投与したところNK活性が低下した。老齢ラットでは下肢骨格筋の酸化ストレスが増加した(橋本)。薬物誘導大腸炎モデルラットでは高用量ARA投与で炎症が亢進する所見が得られた(内藤)。 
5.情報収集・摂取量評価 
介入試験で、DHAの多い魚油の摂取は血中のARAを増加させ、EPAの多い魚油の摂取はARAを低下させる傾向があった(鈴木)。健常女性132名での検討で、血中ARAは顔面のシミ面積(全員)とあるいはシワの長さ(30代女性のみ)と強い正の相関が見られた(浜崎)。
以上、多くの研究で、ARAは用量依存的に悪影響を及ぼす結果が得られた。ARA代謝物が増えたことが原因の一つと考えられる。

結論
ARAの補給には問題がある。

公開日・更新日

公開日
2012-05-01
更新日
-

文献情報

文献番号
201131016B
報告書区分
総合
研究課題名
アラキドン酸補給の安全性に関する研究
課題番号
H22-食品・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
浜崎 智仁(富山大学 和漢医薬学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 奥山 治美(金城学院大学 脂質栄養オープンリサーチセンター)
  • 大原 直樹(金城学院大学 薬学部)
  • 内藤 由紀子(国立循環器病研究センター 病態ゲノム医学部)
  • 螺良 愛郎(関西医科大学 医学部)
  • 小林 哲幸(お茶の水女子大学 大学院)
  • 永田 伴子((財)食品薬品安全センター秦野研究所)
  • 橋本 道男(島根大学 医学部)
  • 守口 徹(麻布大学 生命・環境科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
主に動物実験でアラキドン酸(ARA)補給の安全性につき以下の点を検討した。
研究方法
1.ARA補給の安全性に関する研究(疫学と総括)
1-2.食生活と血液中のARA等の関係
2.脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)でのARA投与の研究
3.ラットの大腸炎モデルでのARA補給の研究
4. 胎仔期のARAが乳癌発症に及ぼす影響
5. マウスの炎症性疾患モデルでのARAの影響
6.ラットでの発癌プロモーション過程へのARAの影響
7.ラットの網膜、NK細胞活性、骨格筋に及ぼすARA投与の影響
8.老若マウスの脳機能に及ぼすARAの影響

結果と考察
結果を以下の5点にまとめた。
1.脳機能・脳卒中への影響 
ARAの慢性投与は、n-3系脂肪酸欠乏を亢進させ自発運動量を増やし運動機能を低下させた。SHRSPへのARA投与は、雌の血清中リン脂質濃度を低下させた。
2.眼組織・運動機能に及ぼす影響 
魚油欠乏ラットにARAを13週間投与すると報酬餌をとりきる時間を短くした。3ヶ月で右眼での網膜電位の低下が抑えられた。眼組織の異常が出やすいマウス(C57BL/6)ではARA投与により、♀胎児の眼組織のリゾリン脂質が増加した。
3.発癌と発癌プロモーションへの影響 
ヒト乳癌細胞株を移植したヌードマウスでARA投与は乳癌細胞を増殖促進した。発癌プロモーションモデルでは膀胱の乳頭腫発生が増えた。
4.アレルギー・炎症性疾患・免疫能への影響 
n-6系脂肪酸をラットに投与すると炎症関連分子群が多くなった。n-3系脂肪酸投与ではその逆となった。魚油欠乏ラットにARAを投与したところNK活性が低下した。老齢ラットでは下肢骨格筋の酸化ストレスが増加した。薬物誘導大腸炎モデルラットでは高用量ARA投与で炎症が亢進した。 
5.情報収集・摂取量評価
介入試験で、DHAの多い魚油の摂取は血中のARAを増加させ、EPAの多い魚油の摂取はARAを低下させる傾向があった。400名を超す疫学調査でも似た結果が得られた。健常女性132名での検討で、血中ARAは顔面のシミ面積(132名)とあるいはシワの長さ(30代女性のみ)と強い正の相関が見られた。
計画以上の成果が得られた。多くの研究でARAは用量依存的に悪影響を及ぼす結果となった。恐らく、ARA代謝物が増えたことが原因の一つと考えられる。
結論
ARAの補給には問題がある。

公開日・更新日

公開日
2012-05-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201131016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アラキドン酸(ARA)の代謝物を減らす医薬品が有効だが、ARAがサプリメントとなり、その安全性が問題となった。動物実験でARA油を補給すると、癌、炎症性の亢進、運動機能低下(活動性は増えることがある)などが認められた。またマウス胎児で眼の奇形が発生し、疫学調査では女性の皮膚に好ましくない影響を与える可能性が高い。そこで、一般者にARA油を補給することは避けるべきだ。ARAを一言で表すと、無益な活動を増やすといえる。ただし、最近の当班の研究で、ARAはNK活性を低下させることが判明した。
臨床的観点からの成果
なし。
ガイドライン等の開発
なし。
その他行政的観点からの成果
なし。
その他のインパクト
日本脂質栄養学会のARAに関するシンポジウム(2012年)では、育児用粉ミルクへの母乳程度のARAとDHAの補給は問題ないとされた。しかし、ARA油には発がん促進、加齢ラットの速筋の萎縮、n-3系脂肪酸の欠乏状態の促進、ある種のマウスでは眼の奇形性等が認められ、また女性の横断的調査では、赤血球中のARA%と顔のシミと皺に相関が認められた。なお、マウスの催奇形性を示したARAは餌の0.6エネルギー%であり、不特定の人にサプリメントとして与える場合の危険性に留意する必要性がある。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
日本日本脂質栄養学会21回大会(2012)のシンポジウム6題を含む
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshizawa K, Sasaki T, Kuro M et al
Arachidonic acid supplementation during gestational, lactational and post-weaning periods prevents retinal degeneration induced in a rodent model.
Br J Nutr 2012 Aug 6:1-9. [Epub ahead of print]  (2012)
原著論文2
Yoshizawa K, Uehara N, Kimura A et al
Promoting effect of arachidonic acid supplementation on N-methyl-N-nitrosourea- induced pancreatic acinar cell hyperplasia in young Lewis rats
Oncology Letters Epub: http://www.spandidos-publications.com/ol/forthcoming.jsp , 5 , 76-82  (2013)
10.3892/ol.2012.1009
原著論文3
Hamazaki-Fujita N, Itomura M, Hamazaki K et al
Relationship among Skin Conditions, Mood and Polyunsaturated Fatty Acids in RBCs in Healthy Women
J Cosmet Sci , 63 , 303-310  (2012)
原著論文4
Yoshizawa K, Emoto Y, Kinoshita Y et al.
Arachidonic acid supplementation does not affect N-methyl-N-nitrosourea-induced renal preneoplastic lesions in young Lewis rats
Oncology Letters , 5 , 1112-1116  (2013)
10.3892/ol.2013.1162
原著論文5
Juman S, Hashimoto M, Katakura M et al.
Effects of Long-Term Oral Administration of Arachidonic Acid and Docosahexaenoic Acid on the Immune Functions of Young Rats
Nutrients , 5 , 1949-1961  (2013)
10.3390/nu5061949
原著論文6
Yoshizawa K, Emoto Y, Kinoshita Y et al.
N-nitrosourea-incuded cerebellar hypoplasia in rats: effect of arachidonic acid supplementation during the gestational, lactational and post-weaning periods
Exp Ther Med , 6 (3) , 627-634  (2013)
原著論文7
Naito Y, Ji X, Tachibana S, et al.
Effects of arachidonic acid intake on inflammatory reactions in dextran sodium sulphate-induced colitis in rats
Br J Nutr , 114 , 734-745  (2015)
10.1017/S000711451500224X

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201131016Z