食品衛生監視員による食品衛生監視手法の高度化に関する研究

文献情報

文献番号
201131006A
報告書区分
総括
研究課題名
食品衛生監視員による食品衛生監視手法の高度化に関する研究
課題番号
H21-食品・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
豊福 肇(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 日佐和夫(東京海洋大学大学院教授)
  • 高橋正弘(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授)
  • 畝山智香子(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第3室長)
  • 川森文彦(静岡県環境衛生科学研究所微生物部ウイルス班長)
  • 清水俊一(北海道立衛生研究所感染症センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
12,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SPS協定により、WTO加盟国の衛生措置(監視指導もその一部)はリスクベースあることが求められている。国民の健康の保護のため、リスクベースの監視指導計画を策定し、科学的データ、特にリスクに基づき優先順位をつけ、効率的な監視指導を行うことが求められる。
そこで本研究では食品衛生監視員(以下、「食監」という。)の高度な、リスクベースの監視を支援するための研究を行った。
研究方法
Risk rangerを汚染菌量の概念を入れて改良し、さらに対象食品を増やし、改良版risk rangerを用いて、監視による入力項目の変化とそれに伴う相対リスクを推定し、リスクを低下させる効果の大きい効果的な監視指導のあり方などを検討した。民間企業の工場監査チェックリスト内容を根拠の明確化を行うとともに、実証試験を行った上で、チェックリストの解析検討を行った。平成18年度食中毒事件詳報を用い、病因物質別に潜伏期間、下痢、嘔吐、腹痛、頭痛、関節痛及び悪心の症状の発現率について解析した。全国食中毒事件録20年分を解析し原因食品と病因物質の組み合わせでのリスク及びカンピロバクター食中毒のリスクランキングを行った。揮発性有機化合物の食品中の濃度について文献収集とデータ抽出を継続した。
結果と考察
半定量的なリスクランキングツール(Risk Ranger)が食品衛生監視員の監視項目の優先順位付けに活用できる可能性が示唆された。食中毒リスクの高かった組み合わせは件数ではきのこ類と植物性自然毒(52.5件),カキ(生食品)とノロウイルス(39.8件),患者数では魚類(調理加工食品)とその他の大腸菌(224.8人),めん・米飯・穀物類とノロウイルス(110.2人),めん・米飯・穀物類とその他の大腸菌(109.2人)の順であった。カンピロバクターの食中毒リスクが高い食品は鶏肉(生食品)、食肉類(生食品)等であった。食中毒菌でも感染メカニズムにより、潜伏期や症状も異なる。実際の事例ではある程度、発症時間や発症率に幅はあるが、その幅を超える場合には、他の感染源による暴露を疑う必要性、またこのような解析の正確性を増すため、正確な聞き取り調査の実施の必要性が考えられた。
結論
科学的データを根拠に、リスクの低減につながる食品衛生監視指導を効果・効率的に行うことにより、限られた財政・人的資源でも、高度な監視指導が行えると考えられた。そのためには食監の教育訓練が重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201131006B
報告書区分
総合
研究課題名
食品衛生監視員による食品衛生監視手法の高度化に関する研究
課題番号
H21-食品・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
豊福 肇(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 日佐和夫(東京海洋大学大学院教授)
  • 高橋正弘(神奈川県立保健福祉大学教授)
  • 畝山智香子(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第3室長)
  • 川森文彦(静岡県県境衛生科学研究所微生物部ウイルス班長)
  • 清水俊一(北海道立衛生研究所感染症センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SPS協定により、WTO加盟国の衛生措置(監視指導もその一部)はリスクベースあることが求められている。国民の健康の保護のため、リスクベースの監視指導計画を策定し、科学的データ、特にリスクに基づき優先順位をつけ、効率的な監視指導を行うことが求められる。
そこで本研究では食品衛生監視員(以下、「食監」という。)の高度な、リスクベースの監視を支援するための研究を行った。
研究方法
ニーズの高かった研修資料やマニュアルの作成、監視の高度化に伴うリスクの低減効果を推定する上での実行可能性や機能性の点か選定し(Risk Ranger)、その改良を行った。平成18~20年度食中毒詳報を病因物質、施設別、発生要因別に解析し、リスク因子の解析を行った。また、平成18年度食中毒事件詳報を用いて、病因物質ごとに、潜伏時間、症状の発現率について解析した。ISO22000と食品衛生監視との比較検討、食中毒事件録を用いての病因物質、原因食品及びそれらの組み合わせによるリスクランキング、文献から、異臭等の苦情の原因となりやすい揮発性有機化合物の濃度に関する情報を収集、監視回数の決定因子の解析、監視記録の保管及び食中毒解析システムの解析等を行った。全国食品衛生監視員協議会研修大会の1924件の発表抄録をExcelのdata sheet化を行った。
結果と考察
違反対応及び苦情処理対応のマニュアルの作成、研修用資料の作成を行った。改良版Risk Rangerにおいても食品衛生監視の定性的効果を半定量的に把握できることが示唆された。健康被害を起こしやすい食品で,弁当,きのこ類,すし類の順であった。食中毒の原因施設は、飲食店が多く、中でも酒場、焼肉店、次いで、旅館、仕出し屋が多かった。原因食品は生または半生状態の食肉が多かった。汚染要因は、①非加熱食品の摂取・汚染されていた原材料の使用、②調理従事者による汚染が大部分を占めた。増殖要因は、①室温または高温での食品の放置、②調理から消費までの経過時間が、残存要因は①不十分な加熱温度および時間、②不十分な再加熱および時間などが多くなった。
潜伏時間は、成書の記載されている範囲とほぼ一致していた。
揮発性有機化合物の食品中の濃度について約25000件のデータベース化を行った。
結論
リスクに基づく、科学的、効果的な食品衛生監視指導を行うためのデータ、種々の監視ツールまたそれを行う監視員の教育資料等を作成した。これらを活用することにより、効果的な監視指導を行い、食品由来のリスク低減効果が図られると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201131006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
揮発性有機化合物の食品中の濃度について文献収集とデータ抽出し、約25000件のデータベースを構築した。、初級、中級食監研修のシラバス及びそれに基づく研修資料を作成した。民間の工場監査チェックリストを国際的食品安全マネジメントシステムであるISO22000の審査と比較検討した。
臨床的観点からの成果
食中毒の潜伏時間を解析したところ、成書の記載されている範囲とほぼ一致していたが、それより極端に短い患者は、本当にその食中毒の原因食品による患者か、正確な判断が求められると考えられた。
症状については、全ての病因物質で下痢、発熱、嘔吐、腹痛および頭痛を発症した。ただし、病因物質によっては、下痢、嘔吐の回数や、高温を発する発熱の発生頻度に差があり、これら情報を正確に患者から聞き取ることにより、より正確な病因物質の究明に役立つと考えられた。
ガイドライン等の開発
違反食品対応及び苦情食品対応マニュアル、食品衛生監視員の初級・中級研修シラバス、食品衛生関心が自習するために必要となる図書等リスト、食品衛生監視員の研修用教材(食品衛生法及び関係法規の概要、食品関係法令、監視員の心得、施設監視、食中毒調査、苦情処理、内部告発対応)、ノロウイルスによる食中毒疑い時に使用する食中毒調査票、食品中に含まれる揮発性有機化合物質リストと濃度に関するデータベース、
その他行政的観点からの成果
食品安全マネジメントシステムの営業者向けトレーニング教材として英国食品基準庁のケータリング及び食品販売店のマネージャー及び従業員向けDVD及びトレーニング資料一色を翻訳吹き替えて作成し、厚生労働省食品安全行政講習会で試写し、好評を博した。また、過去の食品衛生監視員協議会で発表された調査研究内容を検索できるようにし、さらに実際に読みたい抄録を全部pdf化を行った。
その他のインパクト
厚生労働省食品安全行政講習会(平成24年4月12日)で研究の成果を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
19件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成24年度食品安全行政講習会での講義

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
高橋正弘、池田恵、中村丁次他
食品カテゴリーのリスクランキング設定への疫学的アプローチ
神奈川県立保健福祉大学誌 , 7 (1) , 37-47  (2010)
原著論文2
高橋正弘、赤堀正光、池田恵他
食中毒事件調査解析システムの構築における入力・出力項目の検討
獣医疫学雑誌 , 14 (2) , 139-145  (2010)
原著論文3
日佐和夫
高度化及びグローバル化に対応した工場監査手法の開発検討
調理食品と技術 , 17 (1) , 36-48  (2011)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201131006Z