労働災害の発生抑制を目指した,経済学(ゲーム理論)に基づくヒューマンエラー発生確率の定量化手法の開発とそのリスクアセスメントへの導入

文献情報

文献番号
201130010A
報告書区分
総括
研究課題名
労働災害の発生抑制を目指した,経済学(ゲーム理論)に基づくヒューマンエラー発生確率の定量化手法の開発とそのリスクアセスメントへの導入
課題番号
H22-労働・若手-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
牧野 良次(独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 有司(独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
  • 和田 祐典(独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
  • 熊崎 美枝子(横浜国立大学大学院環境情報研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,労働災害に関する危険性・有害性等の調査(リスク評価)における災害発生確率の評価精度向上と労働災害による死傷者数の減少に貢献するため,経済学(経済学的思考法の必要性は後述する)における最重要概念である「インセンティブ(誘因)」の考え方を理論的基礎として,ヒューマンエラー発生確率の定量化手法を開発する.
研究方法
本研究では経済学的分析手法を用いてヒューマンエラー発生メカニズムを解析し,発生確率の定量化手法を解析する.ヒューマンエラー発生確率が「従業員や経営者といったステークホルダーの『駆け引き』の結果に依存して変化する」と理解し,モデル化する点が,先行研究とは異なる本研究の特色である.これはエラー発生メカニズムを理解するひとつの強力な方法と期待され,本研究が経済学的分析手法を導入する理由である.
結果と考察
平成23年度では,事故事例データベースから関連する498件の事故事例を抽出し人的要因・組織要因に着目した事故分類を行い「事故データに基づくヒューマンエラー発生状況の調査」と題して誌上発表した.また,ヒューマンエラー発生メカニズム分析の一例として,「Are Flexible Workers Truly More Accident-prone?」と題した研究においてアンケートデータを用いた統計分析を行い,労働災害において「インセンティブ」という考え方を適用することの有効性を示すことができた.さらに,台湾の国立雲林科技大学,私立弘光科技大学,労工安全衛生研究所,および工業安全衛生協会を訪問し,台湾の労働安全衛生の現状および行政事情についてヒアリング調査を行った.
結論
既存の事故事例データベースでは事故原因としてハードウェアに関する記述が多く,人的要因・組織要因に関する記述が相対的に少なかった.近年の労働災害,産業事故の背景要因として「安全文化」のレベルが低いことがあげられていることも考えれば,今後の事故調査においては人や組織の行動を詳細に検討する必要があると考えられる.ヒューマンエラー発生メカニズムとしては「違反行為」が事故に繋がっていることが統計分析によって示唆された(事故事例データベースでもこの傾向は読み取れる).純粋なうっかりミス防止のほかに,違反行為を防止するための工夫が労働現場で必要であると考えられる.

公開日・更新日

公開日
2012-11-19
更新日
-

文献情報

文献番号
201130010B
報告書区分
総合
研究課題名
労働災害の発生抑制を目指した,経済学(ゲーム理論)に基づくヒューマンエラー発生確率の定量化手法の開発とそのリスクアセスメントへの導入
課題番号
H22-労働・若手-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
牧野 良次(独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 有司(独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
  • 和田 祐典(独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
  • 熊崎 美枝子(横浜国立大学大学院環境情報研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
労働災害に関する「危険性・有害性等の調査(リスク評価)」における災害発生確率の評価精度向上と労働災害による死傷者数の減少に貢献するため,経済学(経済学的な思考方法の必要性について後に説明)における最重要概念である「インセンティブ(誘因)」の考え方を理論的基礎として,「ヒューマンエラー発生確率の定量化手法」を開発する.
研究方法
本研究では経済学的分析手法を用いてヒューマンエラー発生メカニズムを解析し,発生確率の定量化手法を解析する.ヒューマンエラー発生確率が「従業員や経営者といったステークホルダーの『駆け引き』の結果に依存して変化する」と理解し,モデル化する点が,先行研究とは異なる本研究の特色である.これはエラー発生メカニズムを理解するひとつの強力な方法と期待され,本研究が経済学的分析手法を導入する理由である.
結果と考察
事故事例データベースから関連する498件の事故事例を抽出し人的要因・組織要因に着目した事故分類を行い「事故データに基づくヒューマンエラー発生状況の調査」と題して誌上発表した.また,ヒューマンエラー発生メカニズム分析の一例として,「Are Flexible Workers Truly More Accident-prone?」と題した研究においてアンケートデータを用いた統計分析を行い,労働災害において「インセンティブ」という考え方を適用することの有効性を示すことができた.さらに,台湾の国立雲林科技大学,私立弘光科技大学,労工安全衛生研究所,および工業安全衛生協会を訪問し,台湾の労働安全衛生の現状および行政事情についてヒアリング調査を行った.
結論
結論 既存の事故事例データベースでは事故原因としてハードウェアに関する記述が多く,人的要因・組織要因に関する記述が相対的に少なかった.近年の労働災害,産業事故の背景要因として「安全文化」のレベルが低いことがあげられていることも考えれば,今後の事故調査においては人や組織の行動を詳細に検討する必要があると考えられる.ヒューマンエラー発生メカニズムとしては「違反行為」が事故に繋がっていることが統計分析によって示唆された(事故事例データベースでもこの傾向は読み取れる).純粋なうっかりミス防止のほかに,違反行為を防止するための工夫が労働現場で必要であると考えられる.研究全体として一定の進捗を見たがヒューマンエラー発生確率の定量化には至らなかった.今後の研究課題としたい.

公開日・更新日

公開日
2012-11-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201130010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
労働災害の原因となるヒューマンエラー発生とその低減対策についてゲーム理論を用いた研究を行った.労働者や経営者の「インセンティブ(誘因)」に着目したという点は従来にない研究アプローチである.成果の例として,雇用形態(非正規雇用,正規雇用)と労働災害には統計的に有意な関係は見られないこと,職場内での規則違反が事故要因としては重要であること等をアンケートデータに基づいた統計解析により明らかにした.
臨床的観点からの成果
特記事項なし
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
1件
Safety Science誌に論文「Are Flexible Workers Truly More Accident-prone? New evidence from Japan」を投稿,現在査読中
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
牧野良次,熊崎美枝子,松倉邦夫,他
事故データに基づくヒューマンエラー発生状況の調査
安全工学 , 51 (2) , 106-112  (2012)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201130010Z