文献情報
研究課題名
職場における新たな精神疾患罹患労働者に対する業務遂行レベル最適化メンタル対応(業務的対応)の評価
研究代表者(所属機関)
高尾 総司(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、精神疾患罹患労働者の業務遂行レベルを最適化(健康を損なうことのない範囲で最大の業務遂行レベルを達成)するためのメンタル対応について、従来の「医療的対応」と本研究で提起する「業務的対応」とを、業務遂行レベルおよび勤怠の点において比較検証することを目的としている。
研究方法
平成23年度は、昨年度に引き続き(1)研究協力事業場(東京・大阪)における導入支援及びデータの収集、(2)事業化モデルの検討、(3)本対応の適用が容易でない場合の修正案の検討、などを継続実施した。
結果と考察
(1)においては、目標の協力事業場数を確保するため大阪市周辺2,000社に説明会の開催案内を送付し、参加を希望する事業場102社の中から99社(111名)の参加を得た。最終的に12社の協力を得ることが確定した。(2)においては、以下三種類の事業化モデルの検討を行った。①簡便なメールによる相談、②人事労務担当者への導入支援業務、③人事労務担当者への研修機会の提供。いずれも、本研究の成果を速やかに活用可能にするために期待ができる。(3)においては、特に研究協力企業が中小規模を中心としたことから、①大企業における修正モデルの検討を、大企業の人事労務担当者や専属産業医と行った。また適用される法律等の違いだけでなく、事業場風土が大きく異なることから当然に修正が必要となる②自治体における修正モデルについても検討を行った。
結論
以上より、平成22年度よりの協力事業場(東京)に対しては、導入の継続支援とともに、事前に定めた評価指標の評価を実施するため、データ収集に努めた。さらに、平成23年度より新たに研究協力事業場となった協力事業場(大阪)については、今年度より導入支援を開始し、今後の復職したケースに関するデータ収集・評価を行う準備が整った。
研究報告書(紙媒体)
文献情報
研究課題名
職場における新たな精神疾患罹患労働者に対する業務遂行レベル最適化メンタル対応(業務的対応)の評価
研究代表者(所属機関)
高尾 総司(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、精神疾患罹患労働者の業務遂行レベルを最適化(健康を損なうことのない範囲で最大の業務遂行レベルを達成)するためのメンタル対応について、従来の「医療的対応」と本研究で提起する「業務的対応」とを、業務遂行レベルおよび勤怠の点において比較検証することを目的とた。
研究方法
平成22年度は、①研究協力事業場の募集、②研究協力事業場との打合せ及び事前データの収集を実施した。平成23年度は、引き続き、③研究協力事業場(東京・大阪)における導入支援及びデータの収集、④事業化モデルの検討、⑤本対応の適用が容易でない場合の修正案の検討、などを継続実施した。
結果と考察
①においては、日本産業衛生学会自由集会等の場も活用しつつ、都内2,000社に事前のニーズ把握のためのアンケートを送付し、回答のあった74社のうち説明会の開催案内を希望する事業所の中から39社(57名)の参加を得た。その後、最終的に7社の協力を得ることが確定し、2010年12月までに研究協力に関する協定書を締結した。②においては、ケース対応にかかる情報収集を必須とするため、個人情報保護を適切に行うために、まずは、各社の就業規則などの事前情報を収集することに努めた。また、人事担当者向けの研修会については、集合形式で実施が完了した。③については、目標の協力事業場数を確保するため大阪市周辺2,000社に説明会の開催案内を送付し、参加を希望する事業場102社の中から99社(111名)の参加を得て、最終的に12社の協力を得ることが確定し、研究協力事業場(東京・大阪)における導入支援及びデータの収集を行った。④については以下三種類の事業化モデルの検討を行った(簡便なメールによる相談、人事労務担当者への導入支援業務、人事労務担当者への研修機会の提供)。⑤については本対応の適用が容易でない場合の修正案の検討、などを継続実施した。特に研究協力企業が中小規模を中心としたことから、大企業における修正モデルの検討を、大企業の人事労務担当者や専属産業医と行った。また適用される法律等の違いだけでなく、事業場風土が大きく異なることから当然に修正が必要となるため、自治体における修正モデルについても検討を行った。
結論
以上より、平成22年度よりの協力事業場(東京)に対しては、導入の継続支援とともに、事前に定めた評価指標の評価を実施するため、データ収集を行った。さらに、平成23年度より新たに研究協力事業場となった協力事業場(大阪)については、今年度より導入支援を開始し、同様にデータを収集した。東京・大阪の協力事業場を合わせて、業務遂行レベルおよび勤怠に関する記述を行った。
研究報告書(紙媒体)
行政効果報告
成果
専門的・学術的観点からの成果
メンタル休職者の復職後の業績・勤怠データを収集した。これまでこうした記述データはない。復帰後の平均業績評価は女性、40歳代が低く、平均勤怠評価は女性、40歳未満で低かった。復帰後3半期の業績評価の推移、6ヶ月間の勤怠評価の推移については、男性は業績評価が徐々に改善するのに対し、女性は復帰を含む半期が一番高く、以降は低下する傾向が見られた。療養期間別の業績・勤怠評価については、いずれも60日を超え90日以下の群が最も良好であった。ただし、疾病の重症度によって規定されている可能性は否定しえない。
臨床的観点からの成果
医療職主導で行われてきたメンタル対応の負の影響として、人事労務担当者の医療職への過度の依存により、むしろ人事労務担当者の、ひいては企業のメンタルヘルスへの「対応力」のようなものを阻害してきた面にも目を向ける必要がある。本研究成果の職場における活用状況からは、適切に主治医や産業医の専門的観点からの助言・指導を勘案しつつも、企業の人事担当者自身が対応の道筋を明確に想定しながら的確にメンタル対応ができるようになった点は大きな成果である。
ガイドライン等の開発
業務的メンタル対応のフローおよび書式集を作成し、報告書として公開することで広く利用可能にした。また協力事業所において、書式のカスタマイズを自ら行ってもらったプロセスから、導入に際して障害となりやすい点についても知見を得ることができた。さらに、実際の導入のための重要なポイントについてのフィードバックをもとに4種の書式を選択したミニマムセットを作成した。対応に必要な要素は、人事研修(原則の理解)、書式の使用、定期的な事例対応報告会によるフォローアップ、であった。
その他行政的観点からの成果
職場におけるメンタル対応を推進するために、産業医に精神医学を教えなければならない、あるいは精神科医に産業医学を教えなければならないとの対策が示唆されてきた。もちろん、こうした対策の重要性には変わりないが、現在進行中の問題への即時の効果は期待しにくい。この点において、本研究において構築された業務的メンタル対応は、職場における非医療リソースである人事労務担当者だけで運用可能であり、こうしたギャップを埋めるものとして期待できる。
その他のインパクト
平成23年以降の日本産業衛生学会の自由集会および平成23年12月の同学会中四国大会シンポジウムにおいて、本方式を紹介した。紙媒体では、保健文化社「健康管理」誌において継続して連載を行い、ビジネスレーバートレンド誌に平成23年7月号、平成24年5月号に掲載され、本方式を採用した埼玉県春日部市の事例について平成26年9月号で紹介された(地公災の情報誌でも紹介)。その他、日本生産性本部発行の「メンタルヘルス白書2011」、月刊人事労務平成25年9月号でも概要を紹介した。
発表件数
原著論文(和文)
3件
平成23年 メンタルヘルス白書(日本生産性本部)
平成25年 月刊人事労務
平成26年 岡山県医師会報等
その他論文(和文)
10件
健康管理誌にて連載で紹介している。また、「健康管理は社員自身にやらせなさい」(保健文化社)、「もう悩まない ストレスチェック制度」(労働新聞社)を発刊。
学会発表(国内学会)
5件
日本産業衛生学会にて毎年自由集会を開催している。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(普及・啓発活動)
10件
日本医師会認定産業医研修会を岡山労災病院、国立岡山医療センターにおいて、導入支援のための研修をNPO法人の協力を得て、継続定期的に多数開催している。
特許
主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)
収支報告書