女性医師のキャリア継続に必要な医師の勤務環境とそれをとりまく医療体制・医学教育・医療文化に関する研究

文献情報

文献番号
201129046A
報告書区分
総括
研究課題名
女性医師のキャリア継続に必要な医師の勤務環境とそれをとりまく医療体制・医学教育・医療文化に関する研究
課題番号
H22-医療・若手-054
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
大越 香江(京都大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年「医療崩壊」として医師不足と医師の勤務実態の劣悪さが認識されつつある。最近の医師国家試験合格者に占める女性の割合は約3分の1であり、今後女性医師は増えていくと予想されるが、妊娠・出産・育児のため、第一線を退く女性医師も多い。現在提案されている女性医師に対する育児支援、育児休業等の対策は「育児は女性がするもの」という旧来の性別分業に固執している面がある。すべての医師が勤務を継続し技術を向上できる勤務体制の提言のため、平成23年度は、22年度に京大病院内で行ったアンケート調査をもとに、男女共同参画と医師のワーク・ライフ・バランスというふたつの観点から分析を行った。
研究方法
平成22年3月、京大病院に勤務する614人の医師(雇用関係のある医師のみ)を対象にアンケート調査を行った。返信用封筒を同封した質問票を各診療科に配布し、自由意思で回答してもらった後学内便で回収した。調査に先立って学内倫理委員会の承認を得た。
 質問内容は、現在の状況、キャリア意識、WLB、仕事に対する満足度、疲労感などとした。
集計後、回答結果を点数化して因子分析を行った。全質問項目に関して平均値と標準偏差を算出し、主因子法による因子分析を3回行った。7因子構造が妥当と考えられ、うちキャリア意識、WLB、離職願望の3因子について重回帰分析をさらに行った。
結果と考察
有効回答数は200であった。キャリア意識とはスケジュール決定における自律誠意、診療技術向上のための時間、患者からの感謝、収入、控室の快適さなどと正の相関を示し、配偶者がいることと負の相関であった。WLBとはスケジュール決定における自律性と正の相関、直近1週間の勤務時間と負の相関、離職願望は患者の要求に圧倒されることと正の相関、仕事における達成感と負の相関を示した。男性医師の配偶者の55.1%が専業主婦であるが、女性医師の配偶者の83.3%が医師であった。外科と外科以外に関する分析では、外科医の勤務時間は長く、収入は少ない傾向にある。外科医は医師仲間とのチームワーク、興味深い症例をマネジメントする機会、患者からの感謝などにより満足感を得ている。疲労感は少ない傾向にある。
結論
医師のモチベーションを維持させるため、収入を外勤なしで保証し、コメディカルや専門サポートスタッフの拡充による業務軽減を図り、自律性と自己向上の機会等を充実させ、長時間労働(特に連続勤務)の禁止、効率的な教育体制の確立が求められる。

公開日・更新日

公開日
2012-05-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-04
更新日
-

文献情報

文献番号
201129046B
報告書区分
総合
研究課題名
女性医師のキャリア継続に必要な医師の勤務環境とそれをとりまく医療体制・医学教育・医療文化に関する研究
課題番号
H22-医療・若手-054
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
大越 香江(京都大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今後女性医師は増えていくと予想されるが、妊娠・出産・育児を経て第一線を退く女性医師も多い。医学部の定員を増やしても女性医師が勤務を継続できなければ医師不足は解決しない。また女性医師が勤務継続しがたい勤務環境は男性医師にとっても過酷であり、そのような環境から医師は遠ざかる。男女共同参画と医師のワークライフバランス(WLB)という観点を導入し、すべての医師が勤務を継続しキャリアアップできる勤務体制の考察を行う。
研究方法
量的研究として、京大病院で勤務する641名の医師(雇用関係のある医師のみ)を対象にアンケート調査を行った。質問内容は、現在の状況、キャリア意識、WLB、仕事に対する満足度、疲労感などとし因子分析・重回帰分析を行った。また、質的研究として臨床医として勤務する女性医師9人へのインタビューを実施した。手法は半構造化面接によるインタビューおよび撮影である。
結果と考察
アンケートの有効回答数は200であった。キャリア意識とはスケジュール決定における自律性、診療技術向上のための時間、患者からの感謝、収入、控室の快適さなどと正の相関を示し、配偶者がいることと負の相関であった。WLBとはスケジュール決定における自律性と正の相関、直近1週間の勤務時間と負の相関、離職願望は患者の要求に圧倒されることと正の相関、仕事における達成感と負の相関を示した。外科医の勤務時間は長く、収入は少ない傾向にある。外科医は医師仲間とのチームワーク、興味深い症例をマネジメントする機会、患者からの感謝などにより満足感を得ている。疲労感は少ない傾向にある。またインタビューでは、学童保育の時間延長と内容の向上、時間外のカンファランスや研究会が多いこと、など、育児と仕事に関する葛藤などの意見が見られた。
結論
制度としては、長時間労働の禁止、外勤なしでの収入保証、医療スタッフの拡充による業務の負担軽減、効果的な教育体制の確立、出産後の女性医師の段階的な復帰を可能にする柔軟な勤務時間と補助・代替要員の確保、効率の良い研修・教育システムの確立、複数主治医制、保育・教育体制整備、新たな評価軸の構築による医師の評価、女性医師の管理職への登用が求められ、女性医師個人としては、妊娠・出産までに医師としての知識・技術をある程度習得する、心理的葛藤を乗り越え、強い意志を持つ、パートナーの理解と協力、家事・育児サービスを積極的に利用することが求められる。

公開日・更新日

公開日
2012-05-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201129046C

収支報告書

文献番号
201129046Z