文献情報
文献番号
199701023A
報告書区分
総括
研究課題名
少子化についての専門的研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
平山 宗宏(日本子ども家庭総合研究所)
研究分担者(所属機関)
- 阿藤誠(国立社会保障・人口問題研究所)
- 浅子和美(一橋大学経済研究所)
- 高野陽(日本子ども家庭総合研究所)
- 伊部英男(国際長寿センター)
- 鈴木不二一(連合総合生活開発研究所)
研究区分
心身障害研究費補助金 分野名なし 事業名なし
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
0円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
21世紀を目前にひかえた現在のわが国にとって、「少子化」問題は、保健、福祉のみならず、社会、経済、労働、人口学などあらゆる分野にかかわる最重要の課題といえる。これまで、各専門分野においては、それぞれの立場から、少子化の要因、少子化をふまえた上での、あるいは出生率を高めるための政策のあり方、少子社会における子育て支援のあり方等について、論じられてきた。しかし、関連諸分野を含めた、学際的な調査研究というものはほとんどなされてこなかったといえよう。今回、厚生省大臣官房政策課および児童家庭局企画課との協議の上で、関連する分野のさまざまな研究者による研究班を組織し、以下に述べる研究を行った。
研究方法
以下の5つの分担研究班を組織し、検討を行った。
分担研究1(分担研究者:阿藤誠)晩婚化・非婚化の要因をめぐる実証研究
分担研究2(分担研究者:浅子和美)子育て支援策の効果に関する研究
分担研究3(分担研究者:高野陽)社会環境が妊娠・出産・育児に及ぼす影響に関する研究
分担研究4(分担研究者:伊部英男)少子化対策に関する国際比較研究
分担研究5(分担研究者:鈴木不二一)少子社会に対する企業及び労働組合の意識と対応に関する調査研究
分担研究1(分担研究者:阿藤誠)晩婚化・非婚化の要因をめぐる実証研究
分担研究2(分担研究者:浅子和美)子育て支援策の効果に関する研究
分担研究3(分担研究者:高野陽)社会環境が妊娠・出産・育児に及ぼす影響に関する研究
分担研究4(分担研究者:伊部英男)少子化対策に関する国際比較研究
分担研究5(分担研究者:鈴木不二一)少子社会に対する企業及び労働組合の意識と対応に関する調査研究
結果と考察
分担研究1では、少子化の要因としての「未婚」の問題について、主として社会学の立場から、検討を行った。すなわち、従来あまりとりあげられることのなかった、(1)加齢とともに、結婚に関する本人の判断はどのように変化していくか、(2)「未婚」の地域差はどのような形をとっているか、ということについて、実証的に考察することを試みた。
分担研究2では、まず、子育て支援策に対するニーズとその効果についての検討を行った。すなわち、文献研究によって子育て支援策の効果をみる分析視点を明らかにし、これにもとづいて「平成9年結婚と出産・育児に関する基礎調査」(平成9年厚生省大臣官房政策課調査室実施)の再集計を行った。
次に、都道府県レベルでの子育て環境整備と出生率に関する研究を行った。その結果、(1)年齢別出生率から出産行動の地域差がみられることが明らかとなった。また、(2)労働・産業構造因子と出生率の関係からは、女性の労働環境を整備することが出生率の向上(子育て環境の整備)にプラスにはたらくことが明らかになった。(3)県民意識と出生率との関係からは、地縁因子はプラスに、満足因子はマイナスにはたらくことから、地域性を重視した個別の施策を展開していく必要性が指摘された。(4)子育て支援策と出生率の関係からは、働きながらの子育てをサポートする施策とともに、個人のライフスタイルに合致した多様な選択肢を用意することが効果的であることが示唆された。
分担研究3では、少子化の原因としての家族関係、学業や就労、心配事やストレスなどの社会環境の影響を、母子保健学的、心理学的、社会学的視点から分析し、今後の少子化対策、さらに個人生活の改善への方向性を求めることを目的に調査研究を行った。すなわち、全国の20代から30代の男女(約12300人)にアンケート調査を実施し、有効回答7078件を分析対象とした。また、少子化の要因や対策についての有識者を対象としたアンケート調査も実施した。また、育児への困難感を高めるひとつの要因ともいえる、いわゆる「三歳児神話」について、文献的検討を行った。アンケート調査の結果からは、(1)家族関係については、青年の「離家年齢」と結婚の関連を検討する場合、社会・文化的要因を十分考慮する必要があること、(2)心配事やストレスについては、仕事、経済、家族など生活基盤に関する心配事が多く上げられ、その影響は心身両面に広範囲にわたっていることが明らかとなり、子どもが生まれてからの支援だけでなく、それ以前から、若い世代の男女それぞれが生活基盤の安定感、将来に対する安心感をもてるような施策が必要であると考えられること、(3)対人関係については、交友関係が広くないこと、非婚・晩婚の理由に対人関係がわずらわしいからと回答するなど、対人関係が築きにくい傾向が認められること等が明らかとなった。
分担研究4では、近年のわが国の出生率低下に影響を与えている制度的諸要因が、他の先進国ではどのように評価され、どのような少子化対策がとられているかを国際共同研究を通じて明らかにし、これをふまえてわが国の出生率回復に向けての望ましいポリシー・ミックスを提言することを目的に研究を行った。より具体的には、各国の家族政策、税制、医療・年金、雇用の各分野における諸施策の中で少子化対策と考えられる施策とその効果について、わが国にとって何が参考になり、どのような妥当性があるかという観点から国際比較研究を行った。今年度は文献レビューをもとに、国ごとに比較研究すべきテーマの選定と分析の方向性を検討し、下記の論稿をまとめた。
(1)伊部英男(国際長寿センター)「少子高齢社会日本の課題」、(2)都村敦子(日本社会事業大学)「家族政策の国際比較研究」、(3)白波瀬佐和子(国立社会保障・人口問題研究所)「少子化の国際比較-家族政策からみた育児支援対策-」、(4)金澤史男(横浜国立大学)「税制からみた少子化対策の国際比較-所得税制を中心に-」、(5)府川哲夫(国立社会保障・人口問題研究所)「少子化対策-社会保険-」、(6)井口泰(関西学院大学)「雇用システムと少子化問題」。
分担研究5では、少子化に関連する要因のうち、女性にとっての職業生活と家庭生活の両立をめぐる問題群に焦点をあて、企業の人事労務担当者や労働組合に対するヒアリングを行い、事例研究的に、女性の職業生活支援にかかわる具体的施策とその運用実態、問題点を探った。また、これとともに、女性の職業生活という視点から少子化をめぐる先行研究の論点整理を行った。
分担研究2では、まず、子育て支援策に対するニーズとその効果についての検討を行った。すなわち、文献研究によって子育て支援策の効果をみる分析視点を明らかにし、これにもとづいて「平成9年結婚と出産・育児に関する基礎調査」(平成9年厚生省大臣官房政策課調査室実施)の再集計を行った。
次に、都道府県レベルでの子育て環境整備と出生率に関する研究を行った。その結果、(1)年齢別出生率から出産行動の地域差がみられることが明らかとなった。また、(2)労働・産業構造因子と出生率の関係からは、女性の労働環境を整備することが出生率の向上(子育て環境の整備)にプラスにはたらくことが明らかになった。(3)県民意識と出生率との関係からは、地縁因子はプラスに、満足因子はマイナスにはたらくことから、地域性を重視した個別の施策を展開していく必要性が指摘された。(4)子育て支援策と出生率の関係からは、働きながらの子育てをサポートする施策とともに、個人のライフスタイルに合致した多様な選択肢を用意することが効果的であることが示唆された。
分担研究3では、少子化の原因としての家族関係、学業や就労、心配事やストレスなどの社会環境の影響を、母子保健学的、心理学的、社会学的視点から分析し、今後の少子化対策、さらに個人生活の改善への方向性を求めることを目的に調査研究を行った。すなわち、全国の20代から30代の男女(約12300人)にアンケート調査を実施し、有効回答7078件を分析対象とした。また、少子化の要因や対策についての有識者を対象としたアンケート調査も実施した。また、育児への困難感を高めるひとつの要因ともいえる、いわゆる「三歳児神話」について、文献的検討を行った。アンケート調査の結果からは、(1)家族関係については、青年の「離家年齢」と結婚の関連を検討する場合、社会・文化的要因を十分考慮する必要があること、(2)心配事やストレスについては、仕事、経済、家族など生活基盤に関する心配事が多く上げられ、その影響は心身両面に広範囲にわたっていることが明らかとなり、子どもが生まれてからの支援だけでなく、それ以前から、若い世代の男女それぞれが生活基盤の安定感、将来に対する安心感をもてるような施策が必要であると考えられること、(3)対人関係については、交友関係が広くないこと、非婚・晩婚の理由に対人関係がわずらわしいからと回答するなど、対人関係が築きにくい傾向が認められること等が明らかとなった。
分担研究4では、近年のわが国の出生率低下に影響を与えている制度的諸要因が、他の先進国ではどのように評価され、どのような少子化対策がとられているかを国際共同研究を通じて明らかにし、これをふまえてわが国の出生率回復に向けての望ましいポリシー・ミックスを提言することを目的に研究を行った。より具体的には、各国の家族政策、税制、医療・年金、雇用の各分野における諸施策の中で少子化対策と考えられる施策とその効果について、わが国にとって何が参考になり、どのような妥当性があるかという観点から国際比較研究を行った。今年度は文献レビューをもとに、国ごとに比較研究すべきテーマの選定と分析の方向性を検討し、下記の論稿をまとめた。
(1)伊部英男(国際長寿センター)「少子高齢社会日本の課題」、(2)都村敦子(日本社会事業大学)「家族政策の国際比較研究」、(3)白波瀬佐和子(国立社会保障・人口問題研究所)「少子化の国際比較-家族政策からみた育児支援対策-」、(4)金澤史男(横浜国立大学)「税制からみた少子化対策の国際比較-所得税制を中心に-」、(5)府川哲夫(国立社会保障・人口問題研究所)「少子化対策-社会保険-」、(6)井口泰(関西学院大学)「雇用システムと少子化問題」。
分担研究5では、少子化に関連する要因のうち、女性にとっての職業生活と家庭生活の両立をめぐる問題群に焦点をあて、企業の人事労務担当者や労働組合に対するヒアリングを行い、事例研究的に、女性の職業生活支援にかかわる具体的施策とその運用実態、問題点を探った。また、これとともに、女性の職業生活という視点から少子化をめぐる先行研究の論点整理を行った。
結論
これらの分担研究は、テーマ、方法ともそれぞれちがうので、共通の知見、課題を論じることは容易ではないが、以下の点が明らかになった。(1)出生率に関連する要因を検討するうえで、よりきめ細かい分析が求められている。(2)学際的研究の必要性について、本研究では、分担研究班に人口学、経済学、社会学、労働問題、政策研究、児童福祉、母子保健学、小児科学、発達心理学、臨床心理学、保育学、育児学、家族社会学等、多くの領域の研究者の参加を得た。学際的研究という面では、なお今後それぞれの立場をいわばクロスさせるような議論が必要と思われるが、本研究班においても大きな意義はあったといえよう。(3)今後さらに広く資料を収集し、より詳細な分析を行うとともに、今回の研究をふまえ視点をより明確にしたうえでの調査、分析が課題となる。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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