院内助産システム(助産外来・院内助産)の安全と質に関する実証データを基盤とする評価研究

文献情報

文献番号
201129032A
報告書区分
総括
研究課題名
院内助産システム(助産外来・院内助産)の安全と質に関する実証データを基盤とする評価研究
課題番号
H22-医療・一般-034
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 いずみ(神戸大学 大学院保健学研究科 看護学領域母性看護学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 俊子(京都橘大学 看護学部 母性看護学・助産学)
  • 山崎 峰夫(神戸大学大学院 医学研究科地域社会医学・健康科学講座、総合臨床教育・育成学分野 産婦人科学・周産期医学)
  • 安川 文朗(熊本大学大学院 社会文化科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
院内助産システム「助産外来・院内助産」の安全性や効果について、これまで本研究班が取り組むまで、各実施主体による助産外来や院内助産の実態を公開する事は行われていたが、総合的な安全や質の保証に関する研究は実施されてこなかった。そこで助産外来・院内助産に関する安全性の評価、患者のアウトカム評価、経済学的評価など、安全と質に関する総合的な評価を実施することを研究目的とした。
研究方法
平成23年度は、1助産外来の安全性、2院内助産の安全性、3安全を担保するための助産師の技術、4諸外国の助産師の教育と業務(オーストラリア)5妊婦及び出産後の女性の助産外来と院内助産に対する認知と利用意向について研究を実施した。
結果と考察
1助産外来群と医師外来群間では、助産外来に経産婦が多い傾向がみられた。妊娠スコアによる低リスク・中等度リスク群からハイリスク群に移行する割合に、有意な差は認められなかった。2院内助産における、助産師主導型分娩と医師主導型分娩の比較では、医師群に有意に多い項目は妊娠33週以前の破水や切迫早産、児のNICU 入室等、有意に少ない項目は分娩時仰臥位などであった。医師群の方が臍帯血PHは高い傾向があった。安全性に関する項目で、助産師群が医師群に比し、有意に低いという結果は認められなかった。助産師群では、産婦の希望する分娩体位等が可能であった。3助産外来、院内助産で分娩進行の判断等に必要となる、「内診技術」に関する客観化・可視化する実験を試みた。内診の誤判断が最も多い項目は児頭の高さであった。助産師の経験年数、分娩介助例数と内診所見の正解には有意差がなかった。4オーストラリアの助産師の免許は日本と異なり更新制であった。5妊娠中、あるいは産後12カ月以内の女性の全国調査から、自分の妊娠・分娩・産褥期のリスクが特に高くない場合には、90.8%の人が医師と助産師の両方から診察を希望していることが明らかになった。
結論
全国調査の5000人の調査から、助産師と医師の両方から診察を受けたいという希望が9割を超えていることから、助産外来の普及が緊急課題であり、同時にその利点を活かした助産外来に関する付加価値をさらに高め、安全性を保証することが必要不可欠である。また、医師主導群に臍帯血pHの値が高い傾向があることから、助産師は新生児蘇生に関する高い技術を習得することが必要と思われた。全国調査の結果から、助産外来や院内助産が可能な体制を、整備普及させることが緊急課題であることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2012-07-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201129032B
報告書区分
総合
研究課題名
院内助産システム(助産外来・院内助産)の安全と質に関する実証データを基盤とする評価研究
課題番号
H22-医療・一般-034
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 いずみ(神戸大学 大学院保健学研究科 看護学領域母性看護学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 俊子(京都橘大学 看護学部 母性看護学・助産学)
  • 山崎 峰夫(神戸大学 大学院医学研究科地域社会医学・健康科学講座、総合臨床教育・育成学分野 産婦人科学・周産期医学)
  • 安川 文朗(熊本大学大学院 社会文化科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病院や診療所において、「助産外来」の実施が急速に増加し、それに続き「院内助産」も少しずつ増加傾向にある。そこで助産外来・院内助産に関する安全性の評価、患者のアウトカム評価、経済学的評価など、安全と質に関する総合的な評価を実施することを研究目的とした。
研究方法
平成22年度は、1国内外の分娩・院内助産システムの安全と質に関する文献検討(日本の助産外来・院内助産システム、患者満足度、出産体験、世界の周産期システムと助産師の教育と業務に関する調査“米国、英国、オランダ、フランス、カナダ”)2医師・助産師の必要数の算出基盤となる文献検等を基盤とする分析を実施した。
平成23年度は、1助産外来の安全性、2院内助産の安全性、3安全を担保するための助産師の技術、4諸外国の助産師の教育と業務(オーストラリア)5全国の妊婦および出産後12カ月以内の女性を対象にに、「助産外来・院内助産」に対する認知と利用意向に関する調査、以上5つの研究を実施した。
結果と考察
H22年度:国内外の文献検討により、日本の助産外来・院内助産の各施設において安全と質に関する総合的研究はほとんど実施されていないことが明らかになった。出産満足度に関する現行の尺度のみでは、信頼性のある出産満足度の調査は難しいことが明らかになった。世界の周産期システムに関する概要を把握し、助産師の必要数を算出する理論的背景を明らかにした。
H23年度:助産外来、院内助産の安全性に関する調査では、妊娠スコアによる低リスク・中等度リスク群からハイリスク群に移行する割合は、助産外来群と医師外来群間に、有意な差は認められなかった。院内助産における助産師主導型分娩と産科病棟における医師主導型分娩の比較では、医師群と助産師群に安全性に関する有意な差は認められなかった。医師群に有意に少ない項目は分娩時仰臥位体位であった。
助産師の「内診技術」を客観化・可視化する実験から、誤判断の最多項目は児頭の高さであることが明らかになった。オーストラリアの助産師免許は更新制であった。妊娠中、あるいは産後12カ月以内の5000人の女性に対する全国調査から、「自分の妊娠・分娩・産褥期のリスクが特に高くない場合」には、90.8%の人が医師と助産師の両方から「診察」を希望していることが明らかになった。
結論
全国調査から、「助産師と医師の両方から診察を受けたい」という希望が9割を超えていることから、助産外来の普及が緊急課題であり、同時にその利点を活かした付加価値を高めること、および安全性の保証が不可欠である。助産外来や院内助産が可能な体制を全国に整備・普及させることは、重要課題である。

公開日・更新日

公開日
2012-07-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201129032C

成果

専門的・学術的観点からの成果
助産外来の安全性と院内助産の安全性に関する総合的検証は本研究以前には行われていなかった。
妊娠スコアがローリスク群であるという条件で、ローリスク群からハイリスク群への移行は、助産外来と産科外来に有意差はなかった。院内助産における助産師主導型分娩と、医師主導型分娩に、安全性に関する項目で有意な差は認められなかった。第14回日本母性看護学会にて発表し、非常に関心が高かった。
臨床的観点からの成果
臨床の助産師の行う、「助産外来」は急速に増加しているにもかかわらず、その安全性や効果に関する検証は、ほとんどされておらず、助産師の関わる外来や分娩の安全性を本研究が初めて、客観的なデータ化したことは、意味が大きい。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等は作成はしていない。
その他行政的観点からの成果
本研究成果は、兵庫県保健衛生行政上、新県立病院の「院内助産システム」を作るための基礎的研究として、高い関心がもたれている。同様に神戸大学医学部附属病院における助産外来の運営に参考にされている。2016年5月18日、兵庫県と共同で合計特殊出生率をあげるためのシンポジウムを開催した。シンポジウムでの反響が高く、兵庫県に産前産後ケアセンターの開設が決定した。
5月20日、兵庫県議会において講演を実施した結果、兵庫県会議員が2016年8月20日開催の日本管理学会学術集会へ参加することとなった。
その他のインパクト
読売新聞医療情報部 館林牧子記者より、複数病院データが出た時に特集記事を組み希望が出されている。
第14回日本母性看護学会会長講演で、本内容を公開し、非常に高い関心が得られた。

2016年5月18日の共同シンポジウムについて5月19日神戸新聞掲載、兵庫ジャーナル掲載、兵庫県ホームページ・Facebook「こども・子育てひみつ基地」 に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
第14回日本母性看護学会学術集会抄録 母性衛生 兵庫県母性衛生学会誌
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
日本母性看護学会(2) 日本母性衛生学会(4) 日本医療病院管理学会 兵庫県母性衛生学会(5) 日本助産学会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201129032Z