医療事故にかかわった医療従事者の支援体制に関する研究

文献情報

文献番号
201129023A
報告書区分
総括
研究課題名
医療事故にかかわった医療従事者の支援体制に関する研究
課題番号
H22-医療・一般-025
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
藤澤 由和(静岡県立大学 経営情報学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大川 淳(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 小田切 優子(東京医科大学医学部公衆衛生学)
  • 相馬 孝博(東京医科大学医学部)
  • 我妻 学(首都大学東京都市教養学部法学系)
  • 大滝 純司(東京医科大学医学教育学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究においては、その主要な論点として医療事故に際しての患者との関係構築、なかでもその情報提示のあり方に関する検討を一つの柱とするとともに、研究の全体構想としては、当該事象にかかわった医療従事者への包括的な支援を一つの柱とする統合的な組織体制に関してのモデル構築を目指すことを最終的な到達点とした。また本年度においては、医療従事者への包括的な支援を一つの柱とする統合的な組織体制に関してのモデル構築に関しての検討を主要な目的とした。
研究方法
 本研究では、既存の公開資料の収集およびその分析、さらにそれらのより詳細な理解のために専門家らへのヒアリング調査などに基づき研究を実施した。また実証的な検討に際しては、研究代表者の責任のもとで、個別データを扱う際には自主的、自立的にそれらを適切に扱うことを心がけた。
結果と考察
 平成23年度においては、情報提示のあり方に関して、我が国の医療従事者が医療事故に直面した際に生じうる心理的負担の軽減を意図し、具体的な支援の方策とその支援体制に関して諸外国の動向と我が国における実態を踏まえ、個別医療機関が同様の課題に対する対応のための基礎的知見を構築し、事故情報提示に関しては個別対応を超えて、より包括的な対応が必要であることが明らかとなった。
 また医療事故に期せずして関与した医療従事者らの個人的な問題から、医療機関全体のシステムとしての問題として捉え直すための対応フレームを実証的に検証することを通して、統合的な組織体制に関してのモデル構築を目指す上で必要となる要素の検討を行ったが、当該事象にかかわった医療従事者への包括的な支援を一つの柱とする統合的な組織体制に関してのモデル構築に関して、患者への情報提示のあり方のそれへの位置づけはもとより、それ以外の重要な要素として、包括的予防策、外的制度を検討し、安全教育カリキュラムなどの整備が必要であることが明らかとなった。
結論
 医療従事者の視点に立ち、医療事故にかかわった医療従事者、及び医療機関が適切に対応するための具体的な道筋を明らかにすることにより、個別医療機関がこうした課題に対して具体的かつ実践的な対応を行いうる支援体制を通して、安心して業務に従事できる職場環境の整備が具体的に可能になると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2012-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201129023B
報告書区分
総合
研究課題名
医療事故にかかわった医療従事者の支援体制に関する研究
課題番号
H22-医療・一般-025
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
藤澤 由和(静岡県立大学 経営情報学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大川 淳(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 小田切 優子(東京医科大学医学部公衆衛生学)
  • 相馬 孝博(東京医科大学医学部)
  • 我妻 学(首都大学東京都市教養学部法学系)
  • 大滝 純司(北海道大学医学教育推進センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、その主要な論点として医療事故に際しての患者との関係構築、なかでもその情報提示のあり方に関する検討を一つの柱とするとともに、研究の全体構想としては、当該事象にかかわった医療従事者への包括的な支援を一つの柱とする統合的な組織体制に関してのモデル構築を目指すことを最終的な到達点とし、医療事故などが発生した際の情報提示のあり方に関しての基礎的な知見および医療従事者への包括的な支援を一つの柱とする統合的な組織体制に関してのモデル構築に関しては、その主要な要素の検討を具体的な目的とした。
研究方法
 本研究では、既存の公開資料の収集およびその分析、さらにそれらのより詳細な理解のために専門家らへのヒアリング調査などに基づき研究を実施した。また実証的な検討に際しては、研究代表者の責任のもとで、個別データを扱う際には自主的、自立的にそれらを適切に扱うことを心がけた。
結果と考察
 医療事故に際しての患者との関係構築、なかでもその情報提示のあり方に関しては、当該事項に関して一定の政策的展開や具体的な施策が見られるオーストラリアに関しての検討を中心に、アメリカ、イギリス、カナダなどに関しての検討を行い、医療従事者が医療事故に直面した際に生じうる心理的負担の軽減を意図し、具体的な支援の方策とその支援体制に関しては、個人的な対応を超えて、組織的な対応を行うための基盤構築が早急に必要であり、医療従事者への包括的な支援を一つの柱とする統合的な組織体制に関してのモデル構築に関しては、患者への情報提示のあり方のそれへの位置づけはもとより、それ以外の重要な要素として、包括的予防策、事故調査スキーム、外的制度、安全教育カリキュラムなどが求められることが明らかとなった。
結論
 本研究は、医療事故にかかわった医療従事者、及び医療機関が適切に対応するための具体的な道筋を提示した。これにより個別医療機関が当該課題に対して具体的かつ実践的な支援体制を構築する際の重要な知見が提示された。さらに本研究が想定する医療従事者支援のあり方は、特定の危機的な事案に直面した際の医療機関の組織的対応が端的に現れるものであり、その対応を適切かつ効果的なものとするためには、医療従事者への包括的な支援を一つの柱とする統合的な組織体制に関してのモデル構築が早急に求められることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2012-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201129023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
オーストラリアなどを中心にアングロサクソン系諸国においてオープン・ディスクロージャー(Open Disclosure)と呼ばれる事故情報の提示に関する具体的な施策の展開が見られる。オープン・ディスクロージャーは医療政策上の優先課題としてこの10年間著しい展開が見られるがその主要な特徴はオープン・ディスクロージャーを医療専門職の基本的な倫理的要請であると認識し、提示する情報を長期的、短期的な視点から峻別することにある。さらに事故の被害者との関係を修復的かつ永続的なものとして捉える点にあるといえる。
臨床的観点からの成果
オープン・ディスクロージャーにおいては即座に提示すべき情報として有害事象の内容、それにより生じる直近の課題、さらにこの課題への具体的な対応策とされ、長期的な観点からは、再発防止のための改善策、どのようなサポートを提供するのか、そして遺憾の意とされる。この遺憾の意を示すとは、事故の被害者に生じてしまったことに対して、非常に残念だという気持ちを表すことであるとされ、先進各国においては、それへの、法的、制度的な対応が整備されつつあり、我が国においてもそれらが必要であることが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
オーストラリアなどを中心に、オープン・ディスクロージャーに関わる種々の資料が開発されてきているが、具体的な業務に携わる医療専門職を対象としたオープン・ディスクロージャーに関する解説書なども公表されている。またWHOにおける医療安全教育カリキュラムのモデルにおいてもオープン・ディスクロージャーに関する基礎的な知見や知識が組み込まれている。本研究においては、これらの資料を我が国の文脈においても利用しうるような検討を行い、それを提示している。
その他行政的観点からの成果
医療事故の情報を患者に対して、組織的な対応として適切に提示することは、事故により問題が生じた際における適切な対応の核心をなすものである。こうした組織的な対応は、いわゆる組織防衛的な事後的リスクマネジメントといった考えを超えて、組織全体が不幸な事案に的確に向き合える体制の構築をより広い文脈から検討が必要とされる。したがって、事故情報の提示に際して一貫性や透明性を確保するための枠組み作りが必須であり、個別の医療機関の努力を超えた、より高次のレベルでの政策的な関与が求められる。。
その他のインパクト
オープン・ディスクロージャーにみられるように事故情報を適切なタイミングで一貫した形で患者に提示する仕組みを組織レベルおよび制度レベルで構築することは、訴訟などの抑止効果、関係者の心理的な問題への対応、医療の質の向上などが指摘されている。またこうした仕組みの構築は、医療制度全体への信頼を高め、さらには医療の質というものを高めていくのみならず、最終的にはこれまで個別医療機関における払われてきた多大な努力やリスク対応を、より効果的なものとするものであるとされる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-06-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201129023Z