ユビキタス医療機器安全見守りシステムに関する研究

文献情報

文献番号
201129019A
報告書区分
総括
研究課題名
ユビキタス医療機器安全見守りシステムに関する研究
課題番号
H22-医療・一般-021
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
井隼 彰夫(福井大学 医学部 医療倫理・医療安全学)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 幸直(福井大学 医学部附属病院)
  • 山下 芳範(福井大学 医学部附属病院)
  • 大垣内 多徳(福井大学 医学部附属病院)
  • 笠松 眞吾(福井大学 医学部)
  • 江守 直美(福井大学 医学部附属病院)
  • 大北 美恵子(福井大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アラーム音が物理的に聞こえない状況や聞き逃しでは、聴覚に著しく偏った従来の警報発信方法に加えて高度化した発信方法が求められる。また、流量設定間違い警報などの医療機器単体では、アラームが出せない事象が存在することが明らかになっている。本研究では、医療機器等の稼動情報及びアラーム情報とネットワーク技術を連動させて、医療機器等を安全に監視するシステムの構築を行った。
研究方法
輸液ポンプとシリンジポンプ計20台にユビキタス端末を取り付け、中規模病棟実証試験を行った。看護師が輸液ポンプの実際の終了時間を把握し、余裕を持った行動が可能になるため、安全な輸液管理に効果があり患者の安心にも繋がるシステムを構築する。2011年に行った機能拡張で医療機器等のアラームに加えて稼動データや人の位置情報が自動的に記録できるため医療版フライトレコーダとしての機能を追加する。加えて、アラームを感知できる環境を整備する為に、現在アラームの発信方法の中でも最もよく使われている音を指標にスペクトアナライザによる客観的な評価方法を確立する。
結果と考察
一般病棟では、医療機器が発したアラームを患者本人が感知して看護師に伝えていた。輸液ポンプやシリンジポンプでは約12-15m、個室ドアを閉めた人工呼吸では廊下側約5mで周囲の音と同等の音圧になり、アラーム音の判別が困難になる事がわかった。フライトレコーダ機能を用い、実際に輸液ポンプのアラームを看護師が感知した場所を解析したところ、日中では約12m以内(概ね病室2-3室の範囲)でしか医療機器のアラーム音を感知できていない事がわかった。位置情報機能を用いた夜勤の病棟内実証試験では、ナースステーションに設置されたセントラルモニターのアラーム音が聞こえない場所に、看護師全員が出払ってしまう時間があることがわかった。
結論
ユビキタス医療機器見守りシステムを用い、ハイケアユニットに収容すべき看護密度を必要とするハイリスク患者のモニタリングを集中監視室に配置した専門スタッフが病院単位で一箇所で行うことが効果的かつ経済的であることが示唆された。高機能病院では、常時50人以上の心電計と人工呼吸器に運用を行っている。病院全体で心電計と人工呼吸器の遠隔モニタリングを受け持つ集中遠隔監視担当を設ける事が出来れば、患者の安全対策と医療事故の防止、看護師の負担軽減などのメリットと患者一人あたりの監視コストを比較しても、十分な費用対投資効果が望めると考えられる。これらの結果を応用する事で一般病棟看護師の負担が軽減されアラームの聞き逃しが重大な医療事故をつながることを未然に防ぐことができる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201129019B
報告書区分
総合
研究課題名
ユビキタス医療機器安全見守りシステムに関する研究
課題番号
H22-医療・一般-021
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
井隼 彰夫(福井大学 医学部 医療倫理・医療安全学)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 幸直(福井大学 医学部附属病院)
  • 山下 芳範(福井大学 医学部附属病院)
  • 大垣内 多徳(福井大学 医学部附属病院)
  • 笠松 眞吾(福井大学 医学部)
  • 江守 直美(福井大学 医学部附属病院)
  • 大北 美恵子(福井大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
無線通信方法にZigbee方式にWi-Fi方式を加えたユビキタス無線端末を開発した。院内無線LAN環境に合わせたユビキタス無線機器と見守りシステムを組み合わせることで、専用の基地局やゲートウェーなどのZigBeeネットワーク機器が不要となり、導入への障壁となる初期費用を抑える。これらにより重大な事故リスクに対する安全見守りシステムを構築する。また、アラームを感知できる環境を音に着目して定量的評価法を確立し施設や人の配置の改善に役立てることを目的とする。
研究方法
アラーム信号出力機能を備えた医療機器に無線通信機能を有する小型端末を取り付ける。病院ネットワーク側からは、輸液ポンプ等のデータをリアルタイムに得ることができる。通常のアラーム情報に加えて電子カルテのオーダと機器の設定を比較し、異常があれば即座にナースステーションなどに設置した集中表示装置や個人用端末にアラームを発報することが可能になるシステムとする。また、アラームを感知できる環境を整備する為にアラームの発信方法の中でも最もよく使われている音を指標にスペクトルアナライザを使用した新たな評価法を確立する。
結果と考察
ナースステーションから離れた病室において輸液ポンプのアラームが発生した場合、ナースコールを押される前に看護師がアラームを察知することが可能になり対応までの時間が平均1分42秒短縮した。看護師が実際に警報音を聞き取れた距離は、扉を締めた病室では、12m以内であった。ドアを閉めたことによりアラーム音が、大幅に減衰し聞き取りにくくなった。同一周波数で比較する方法が、従来の騒音計を用いた評価方法と比較し、より実際の感覚や環境に近いことを明らかにした。その結果、客観的な数値によるアラーム音を感知できる環境の改善評価が可能になった。
結論
重症患者が一般病棟で患者ケアを主に必要とする患者と同居し、同じ看護必要度で評価されているため、アラームに対応が遅れた場合のリスクを看護師の配置に正しく反映できていないと考えられる。アラームを感知できる環境を整備するだけでなく、看護師の人的資源をいかなる時間帯も看護要求から飽和させない環境の整備が必要である。ハイリスク患者のバイタルサインモニタリング業務は、看護師詰所から独立した場所に多重化して設置し運用することが望ましい。重大なアラームが発生すると、監視所から担当看護師に直接電話連絡を行う。これにより、病棟の看護師が心電計などのセントラルモニタが設置された看護師詰所から離れざるを得ない時も、ハイリスク患者の見守りが監視所から並行して継続されるため、大きな効果が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201129019C

収支報告書

文献番号
201129019Z