文献情報
文献番号
201129001A
報告書区分
総括
研究課題名
病院情報システム導入に掛かる経済効果に関する研究
課題番号
H22-医療・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学 医学部社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 松本 邦愛(東邦大学 医学部社会医学講座)
- 北澤 健文(東邦大学 医学部社会医学講座)
- 長谷川 敏彦(日本医科大学 医療管理学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
電子カルテ導入の効果についての実証研究は少なく、効果の経済評価を行った研究はほとんど見られない。本研究の目的は、電子カルテ導入による各医療施設の効率の改善について、その経済効果を明らかにすることである。
研究方法
本年度は以下の方法で研究をすすめた。(1)電子カルテ導入の影響へのleadtimeの影響を検討するために医療施設静態調査および患者調査をリンクし、電子カルテ導入が2005年前後の2群で検討を行った。(2)アンケート調査では、2008年に実施した同様の調査との時系列的な検討を行った。(3)米国の電子カルテ導入、診療報酬の支払い方式を中心にレビューを実施した。
結果と考察
(1)電子カルテの導入時期が在院日数に与える影響は、Cox比例ハザードモデルを用いた分析では4疾患・手術で導入時期の早い施設で有意に在院日数が短かったが、4疾患で逆に導入時期の遅かった施設で有意に在院日数が短かった。(2)アンケート調査からは、病院情報の電子化及びペーパーレス化が進んでいること、電子カルテの満足度は病院情報システムの情報統合と情報共有のレベルに影響されていること、情報システム導入の目的では、情報統合と情報共有のレベルの向上により、病院の目標設定が変わりうることが明らかとなった。(3)米国ではMeaningful Use (MU)に対応した電子カルテの導入に目処がつきつつある。2012年にCMS(Center for Medicare and Medicaid Services)が今後5年間の医療の質に基づく診療報酬支払の内容を公表し、その中でMUに対応した電子カルテ導入を支払にあたって考慮するとしている。
結論
官庁統計を用いた研究では、電子カルテの導入が平均在院日数の短縮に対して有効であることが示されたものの、導入時期による差異は疾患・術式により異なり一定の傾向は見いだせなかった。アンケート調査からは、情報統合と情報共有のレベルの向上により病院の目標設定が変わりうること、これは新たなマネジメント確立を目指したものと考えられることが示唆された。多数施設の電子カルテ導入が、正の健康結果、経済効果をもたらすかは、本研究のアプローチ法を含め、多面的に評価する必要があるが、米国の政策面のリーダーシップ、電子業界との連携、診療報酬面での誘導など、今後の日本における医療の電子化を進めるにあたり参考となると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2012-05-28
更新日
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