CHARGE症候群の成人期の病像の解明と遺伝子診断の臨床応用・iPS細胞の確立

文献情報

文献番号
201128285A
報告書区分
総括
研究課題名
CHARGE症候群の成人期の病像の解明と遺伝子診断の臨床応用・iPS細胞の確立
課題番号
H22-難治・一般-169
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 加我 君孝(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究(感覚器センター))
  • 黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
  • 小崎 里華(独立行政法人国立成育医療研究センター 器官病態系内科部・遺伝診療科)
  • 岡本 伸彦(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府母子保健総合医療センター)
  • 水野 誠司(愛知県心身障害者コロニー中央病院 臨床第一部)
  • 工藤 純(慶應義塾大学 医学部)
  • 仁科 幸子(独立行政法人国立成育医療研究センター 感覚器・形態外科部・眼科)
  • 赤松 和土(慶應義塾大学 医学部)
  • 蒋池 勇太(東京女子医科大学 医学部 衛生学公衆衛生学(一))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
CHARGE症候群は最も頻度の高い多発奇形症候群であり、聴力・視覚の二重障害をともなう。本研究では、CHARGE症候群の患者の成人期の実態、特に遺伝子診断において確定診断されている症例の実態を多角的な視点から明らかにする事、遺伝子診断法の臨床応用を進めること、動物モデルおよびiPS細胞の分析を通じてCHARGE症候群の発症機序を明らかにし、再生治療を含めた根治療法の端緒を得ることを目的とした。
研究方法
各分野の専門家により有機的に研究を展開した。
1)内分泌学的合併症の把握
大阪の19症例・神奈川の26例を内分泌学的に評価した。
2)遺伝子変異陽性例の臨床症状の検討
CHD7変異陽性例における眼異常の合併率と臨床像、重症度を検討した。同時に遺伝子診断法の改良を進めた。
3) 新規治療法の開発
内耳奇形例に対する人工内耳埋込術の有用性について検討した。
4)患者由来のiPS細胞の分析
患者由来のiPS細胞の作成と神経堤幹細胞への誘導および解析を行った。
結果と考察
CHARGE症候群の注意すべき合併症として内分泌的合併症を検討した。性腺刺激ホルモンが低値であり、外性器の異常、2次性徴の遅れを認める。ストレスを誘因とするcrisisに対しても注意を要する。CHD7遺伝子変異の位置と眼異常の重症度に相関があることを示した。世界で初めて、CHARGE症候群患者由来のiPS細胞を作成し、さらにCHARGE症候群の病変部位と推定されていた神経堤細胞を誘導することに成功した。
結論
CHARGE症候群の内分泌的合併症を検討した。ストレスを誘因とするcrisisに対して注意を要する。CHD7変異の位置と眼異常の重症度の相関を示した。新規治療法として人工内耳埋め込み手術の有効性が示された。世界で初めて、CHARGE症候群患者由来のiPS細胞を作成し、さらにCHARGE症候群の病変部位と推定されていた神経堤細胞を誘導することに成功した。細胞治療を目指す上で、不可欠な発見であった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201128285B
報告書区分
総合
研究課題名
CHARGE症候群の成人期の病像の解明と遺伝子診断の臨床応用・iPS細胞の確立
課題番号
H22-難治・一般-169
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 加我 君孝(独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 臨床研究(感覚器)センター)
  • 黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
  • 小崎 里華(独立行政法人国立成育医療研究センター器官病態系内科部 遺伝診療科 )
  • 岡本 伸彦(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター 遺伝診療科)
  • 水野 誠司(愛知県心身障害者コロニー中央病院 臨床第一部)
  • 工藤 純(慶應義塾大学 医学部)
  • 仁科 幸子(独立行政法人国立成育医療研究センター 感覚器・形態外科部・眼科)
  • 赤松 和土(慶應義塾大学 医学部)
  • 蒋池 勇太(東京女子医科大学医学部衛生学公衆衛生学(一))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、わが国におけるCHARGE症候群の患者の実態、特に遺伝子診断において確定診断されている症例の実態を多角的な視点から明らかにする事、より感度の高い遺伝子診断法を開発すること、動物モデルおよびiPS細胞の分析を通じてCHARGE症候群の発症機序を明らかにし、再生治療を含めた根治療法の端緒を得て、得られた研究成果や情報を患者や一般小児科医に公開した。
研究方法
3例に対して人工内耳手術を実施した。CHARGE症候群の自然歴と医療サービスの提供状況について現状把握を行った。患者・家族を対象として、アンケートを行い、60名の回答結果を集計・分析した。健康管理に役立てるために健康手帳を作成した。次世代シーケンサーを用いた遺伝子診断法の最適化を行った。遺伝子変異による眼合併症について検討するため多施設研究を実施した。CHARGE症候群2症例よりiPS細胞を樹立した。メチマゾール胎内によるCHARGE症候群モデルを作成した。
結果と考察
患者家族会からの意見の集約では、「重複障害」に関する訴えが多く聞かれた。人工内耳埋め込み手術が有効であり、今後適応を検討すべきである。先天性の嗅覚障害および性腺機能低下が示された。骨粗しょう症のリスクから、補充療法も考慮される。世界で初めて、CHARGE症候群患者由来のiPS細胞を作成し、さらに神経堤細胞を誘導した。この神経性細胞の特性を通じて神経堤細胞については上皮間葉転換の異常を有することを示唆した。発達予後を改善しうる薬剤のライブラリ-・スクリーニングが期待される。
結論
CHARGE症候群について以下の成果を得た。(1)人工内耳が有効。(2)患者家族のニーズのキーワードは「重複障害」(3)CHARGE症候群における眼科的合併症と視覚障害について、黄斑が形成され良好な視力を証明。(4)健康手帳を作成し、患者・家族への情報提供を実現。(5)次世代シーケンサーによる遺伝子解析の省力化を実現。(6)患者由来のiPS細胞を確立し、さらに神経系細胞・神経堤細胞へ誘導することに成功。発達予後を改善しうる薬剤のライブラリ-・スクリーニングが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128285C

成果

専門的・学術的観点からの成果
CHARGE症候群はもっとも頻度の高い先天異常症候群であり、聴力・視覚・内臓障害をともない医療管理を要する。原因遺伝子はCHD7であるが、遺伝子が大きく、遺伝子診断は普及していない。新規解析技術を応用し、簡便な変異解析系を完成し、変異と症状の関係について検討した(下記)。ヨーロッパを含む国内外からの遺伝子診断のニーズに貢献している。本症候群患者由来のiPS細胞を確立し、さらに神経堤系の細胞を誘導することに世界で初めて成功した。発達予後を改善しうる薬剤のライブラリ-・スクリーニングが期待される。
臨床的観点からの成果
遺伝子変異陽性21例42眼について変異と視覚障害の関係を調査し、世界で初めて両者の関係を証明し、国際誌に報告した。遺伝子診断が予後予測に有用であること示唆した。3例について人工内耳埋込術を行い、人工内耳装用により良好な聴覚活用が可能となった。本症候群の聴覚障害に対する新しい治療法として確立されつつある。3歳以上の男女19例のCHARGE症候群患者の内分泌学的な検討を行ったところ、全例で低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を伴っていると考えられた。経過観察の際、留意すべき点であることが示された。
ガイドライン等の開発
CHARGE症候群はその合併症が多岐にわたるために診療が臓器別に偏りやすく成長発達を含めた包括的な情報が得られにくい。そこで、全国の臨床遺伝専門医および患者会宛てのアンケート調査の結果にもとづき、本疾患に特有の合併症に留意したフォローアップ指針・健康手帳を発表した。年代別のガイドラインを作成し、実際の外来指導で使用した。平成21年度に国際誌に発表した修正診断基準とともに、本症の診断・管理の指針として利用されている。
その他行政的観点からの成果
研究でチアマゾール(MMI)曝露胚とCHARGE症候群の表現型が似ることを示した。
並行して行われ、研究代表者が研究分担者として参加しているヒトの疫学研究「妊娠初期に投与されたチアマゾール(MMI)の妊娠結果に与える影響に関する前向き研究:中間報告」で、MMI 投与群におけるさい腸管関連奇形、頭皮欠損といった MMI に関連しているといわれている先天異常の発生頻度が、MMI 関連先天異常の一般的な推定発生頻度と比べ高い可能性があることが示され、「安全性情報」として全国に配布された。
その他のインパクト
CHARGE症候群を含めた小児神経学的疾患の疾患特異的iPS細胞の作成研究について
5月25日の日本経済新聞に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishina S, Kosaki R,Kosaki K,etal.
Ophthalmic features of CHARGE syndrome with CHD7 mutations.
American Journal of Medical Genetics , 158 , 514-518  (2012)
原著論文2
Kosaki K.
Role of rare cases in deciphering the mechanisms of congenital anomalies: CHARGE syndrome research.
Congenital Anomlies , 51 (1) , 12-15  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2017-06-12

収支報告書

文献番号
201128285Z