文献情報
文献番号
201128275A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児血栓症(プロテインC,プロテインS及びアンチトロンビン異常症)の効果的診断法と治療管理法の確立に関する研究
課題番号
H23-難治・一般-120
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
大賀 正一(九州大学 大学院医学研究院 周産期小児医療学)
研究分担者(所属機関)
- 康 東天(九州大学 大学院医学研究院 臨牀検査医学)
- 嶋 緑倫(奈良県立医科大学 小児科学)
- 落合 正行(九州大学病院 総合周産期母子医療センター新生児内科部門)
- 福嶋 恒太郎(九州大学病院 総合周産期母子医療センター母性胎児部門)
- 金子 政時(宮崎大学病院 総合周産期母子医療センター)
- 高橋 幸博(奈良県立医科大学病院 総合周産期母子医療センター)
- 瀧 正志(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 小児科)
- 石黒 精(独立行政法人国立成育医療研究センター 教育研修部 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
プロテインS(PS)、プロテインC(PC)及びアンチトロンビン(AT)欠損症は、日本人の3大血栓性素因である。変異保有者の頻度は各2%未満であるが、成人は静脈血栓症をおこしやすい。乳児や妊婦の活性は生理的に変動し、感染や抗体による影響から診断が難しい。補充療法はATと活性化PCに限定され、新生児の使用法も未確立である。本研究は、小児血栓症の分子疫学を解明し、遺伝子診断とカウンセリングを行って母子を長期に管理する体制の確立をめざす。
研究方法
小児血栓症について、分子疫学、発症様式、診断と治療を明らかにする。前方視的には、血栓性素因を疑う母子にスクリーニングと遺伝子解析を行う。新規診断例の小児と両親、さらに家族の疑い例を検討する。後方視的には、①母子の3大因子の活性測定と遺伝子解析、②治療製剤の全例調査解析、および③国内症例の網羅的解析を行った。倫理委員会で承認された遺伝子解析(九州大)と疫学調査(成育医療センター)を行い、必要な例に遺伝カウンセリングを行った。
結果と考察
国内に23家系25人のPC異常症を確認した。生後1か月以内に頭蓋内出血/梗塞(在胎33週?生後15日)か電撃性紫斑病で発症するPC欠乏症がほとんどであった。60%は両者を合併し、頭蓋内病変が先行した。25%は出生時に血栓症の家族歴あり、75%の母は分娩まで血栓の既往なく低PC活性を確認した。遺伝子解析を行った11人のうち、7人はPC遺伝子(PROC)のホモ(1)か複合へテロ変異(6)であった。両親のPC活性から、患児の20%はPROCヘテロ変異のPC欠乏と推定されたが、2例に変異はなかった。死亡は2例のみだが、活性化PC製剤使用例にも後遺症は残した。
2006-10年発症の小児血栓症に関する全国調査から301人を集計した。遺伝性48人、後天性253人であった。遺伝性は、PC異常22(46%)、PS異常7(15%)、AT異常5(10%)、ADAMT13異常5(10%)及びその他9(19%)であった。新生児以降の今回の結果と、従来の新生児の結果から、小児血栓症の半数がPC異常で、新生児に発症し神経学的後遺症を残すと推測された。
2006-10年発症の小児血栓症に関する全国調査から301人を集計した。遺伝性48人、後天性253人であった。遺伝性は、PC異常22(46%)、PS異常7(15%)、AT異常5(10%)、ADAMT13異常5(10%)及びその他9(19%)であった。新生児以降の今回の結果と、従来の新生児の結果から、小児血栓症の半数がPC異常で、新生児に発症し神経学的後遺症を残すと推測された。
結論
周産期から小児まで遺伝性血栓症の発症に関する分子疫学情報を効率的に集積した。稀少疾患に対する全国規模の臨床研究が、トータルケアを実践する診療連携の基盤となる。母のスクリーニングから母子の血栓素因を診断し、AT/PC製剤の適正使用を含む治療ガイドラインを策定する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2013-03-28
更新日
-