Cryopyrin-associated periodic syndromeの治療薬としてアナキンラ承認を目指した医師主導治験

文献情報

文献番号
201128272A
報告書区分
総括
研究課題名
Cryopyrin-associated periodic syndromeの治療薬としてアナキンラ承認を目指した医師主導治験
課題番号
H23-難治・一般-117
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
西小森 隆太(京都大学 大学院医学研究科発達小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 俊平(横浜市立大学 医学研 究科小児科学)
  • 原 寿郎(九州大学 大学院成育発 達医学小児科学)
  • 平家 俊男(京都大学 大学院医学研 究科発達小児科学)
  • 伊藤 達也(京都大学 医学部附属病院探索医療センター・探索医療開発学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Cryopyrin-associated periodic syndrome(CAPS)はNLRP3インフラマゾームの異常活性化によるIL-1β過剰産生に伴い全身炎症を生じる自己炎症疾患である。その標準治療は抗IL-1療法が中心で、本邦におけるCAPS治療薬としてカナキヌマブが存在する。しかし重症髄膜炎合併CAPS症例への有効性が未確定で、またカナキヌマブに対する抗体産生もしくは重症アレルギー反応合併例での治療が問題であった。以上の背景を元に“CAPSの治療薬としてアナキンラ承認を目指した医師主導治験”研究班を組織し、その準備を行った。
研究方法
アナキンラ医師主導治験をアメリカにおいて実施中であるNIH/NIAMSとの協力関係を築き、治験プロトコール・治験薬概要書を作成する。さらに症例数が少ないことを補完する意味で、本邦アナキンラ使用歴のあるCAPS患者で後方視的疫学調査を行い有効性、安全性の情報集積を行う。本邦CAPS患者でのPK/PDデータの取得も困難が予想されるため、アナキンラ使用中のCAPS患者におけるPK/PDデータを調査する。最後にCAPSで報告されている潜在性NLRP3体細胞モザイクの診断法として、次世代シークエンサーを用いた診断法を整備した。
結果と考察
NIH/NIAMS、治験薬製造元SOBI社、治験薬提供者ノーベルファーマ社と秘密保持契約締結後、治験プロトコール・治験薬概要書を作成した。本邦アナキンラ使用歴のあるCAPS4症例に対して疫学調査を行い、アナキンラ治療によりいずれも臨床症状、血液データの改善を認め、1人において乳頭浮腫の改善を認めた。また1人に、アレルギー症状、咽頭狭窄感(グレード2)のため使用中止となったが、無治療、薬剤投与等により症状はすみやかに消失し、アナキンラの有効性、安全性が示唆された。EIA法による、アナキンラの血中濃度測定系を確認し、CAPS3症例において、投与前/投与後3時間のPK/PDデータを得た。さらにNLRP3体細胞モザイク診断系として次世代シークエンサーの系を整備し、Muckle-Wells症候群2症例で、潜在性NLRP3体細胞モザイクを診断した。また患者リクルート体制の整備目的で、自己炎症疾患用のウェブサイトを開設した。
結論
以上の研究によりアナキンラ承認を目指した医師主導治験の準備が整い、次の相へ展開可能となった。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128272C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アナキンラ使用CAPS疫学調査により、後方視的な観察研究であるが、本邦CAPS患者に対する治療としてアナキンラの有効性・安全性を確認できた。またCAPS最重症のCINCA/NOMIDで報告されていたNLRP3体細胞モザイクが、超並列大量遺伝子解析をおこなえる次世代シークエンサーを用いて、より少ないコストで正確に診断できるようになった。さらに同方法を用いMuckle-Wells症候群にNLRP3体細胞モザイクが存在する事を報告し、スペインとの共同研究を報告した。
臨床的観点からの成果
CAPSに対する治療法としてカナキヌマブのみ承認されているが、今回の医師主導治験により、アナキンラを用いた治療が可能となる。そのための準備として、治験プロトコール、治験薬概要書が作成された。同書類は、アメリカで先行するCAPSに対する医師主導治験をベースに作成され、将来的なアナキンラ申請時に相互比較できるように配慮されている。また疫学調査によるアナキンラの効果、副作用調査、PK/PDデータは承認のうえでPMDAから要求されていたデータであり、重要な成果と考えられる。
ガイドライン等の開発
今回の後方視的なCAPSに対するアナキンラ治療の疫学調査は症例数が4症例と少なく、CAPSに対するアナキンラ治療量の暫定的な設定等の”CAPSにおけるアナキンラ使用ガイドライン”作成にまでは到らなかった。
その後、CAPSにおけるアナキンラ使用例を15症例まで集積し、現在、その効果について論文にまとめている途中である。
その他行政的観点からの成果
CAPSは、現在のところ根治療法はなく、抗IL-1療法を継続的に用いる事が唯一可能な治療法である。カナキヌマブが治療薬として承認されたことは、患者及びその家族には福音となっている。しかし一方、カナキヌマブ不耐症例等ではたちまち治療法が皆無となり、CAPS治療において2剤目の治療薬承認は大変重要な課題である。今回の医師主導治験を目指した準備はそのCAPS患者ニーズに答えるものである。
その他のインパクト
本邦においてアナキンラはどの疾患においても未承認薬であるが、CAPSだけでなく、高IgD症候群、TRAPS、家族性地中海熱、DIRA、PAPA症候群等の自己炎症疾患でもアナキンラの有効性が海外より報告されている。今回のCAPSに対するアナキンラ治療を目指した医師主導治験が遂行されれば、他の自己炎症疾患に対するアナキンラ治療承認にむけた基盤となり、これら稀少疾患患者治療へ一助となる。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
31件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tanaka N, Izawa K, Saito MK, et al
High incidence of NLRP3 somatic mosaicism in patients with chronic infantile neurologic, cutaneous, articular syndrome: results of an International Multicenter Collaborative Study
Arthritis Rheum , 63 (11) , 3625-3632  (2011)
原著論文2
Izawa, K., A. Hijikata, N. Tanaka et al
Detection of Base Substitution-Type Somatic Mosaicism of the NLRP3 Gene with >99.9% Statistical Confidence by Massively Parallel Sequencing
DNA Res , 19 (2) , 143-152  (2012)
原著論文3
Murata, Y., T. Yasumi, R. Shirakawa, et al
Rapid diagnosis of FHL3 by flow cytometric detection of intraplatelet Munc13-4 protein
Blood , 118 (5) , 1225-1230  (2011)
原著論文4
Sakai, H., I. Okafuji, R. Nishikomori et al
The CD40-CD40L axis and IFN-gamma play critical roles in Langhans giant cell formation
Int Immunol , 24 (1) , 5-15  (2012)
原著論文5
Ohnishi, H., T. Teramoto, H. Iwata et al
Characterization of NLRP3 Variants in Japanese Cryopyrin-Associated Periodic Syndrome Patients
J Clin Immunol , 32 (2) , 221-229  (2012)
原著論文6
Karakawa S, Okada S, Tsumura M et al
Decreased Expression in Nuclear Factor-kappaB Essential Modulator Due to a Novel Splice-Site Mutation Causes X-linked Ectodermal Dysplasia with Immunodeficiency
J Clin Immunol , 31 (5) , 762-772  (2011)
原著論文7
Hoshina T, Takada H, Sasaki-Mihara Y et al
Clinical and host genetic characteristics of Mendelian susceptibility to mycobacterial diseases in Japan.
J Clin Immunol , 31 (3) , 309-314  (2011)
原著論文8
Ishimura, M., H. Takada, T. Doi et al
Nationwide Survey of Patients with Primary Immunodeficiency Diseases in Japan
J Clin Immunol , 31 (6) , 968-976  (2011)
原著論文9
Nakagawa K, Gonzalez-Roca E, Souto A, et al
Somatic NLRP3 mosaicism in Muckle-Wells syndrome. A genetic mechanism shared by different phenotypes of cryopyrin-associated periodic syndromes
Ann Rheum Dis , 74 (3) , 603-610  (2015)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2015-06-30

収支報告書

文献番号
201128272Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,502,403円
人件費・謝金 338,400円
旅費 1,496,070円
その他 4,663,127円
間接経費 3,000,000円
合計 13,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
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