先天性顆粒放出異常症の病態解明と診断法の確立

文献情報

文献番号
201128264A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性顆粒放出異常症の病態解明と診断法の確立
課題番号
H23-難治・一般-109
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
石井 榮一(愛媛大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 正夫(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療研究センター)
  • 安川 正貴(愛媛大学 大学院医学系研究科)
  • 山本 健(九州大学 生体防御医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 先天性顆粒放出異常症は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)や NK 細胞の顆粒放出の異常によりさまざまな臨床所見を呈する乳幼児の疾患であり、家族性血球貪食性リンパ組織球症、Chediak-Higashi 症候群、Griscelli 症候群 type 2、Hermansky-Pudlak 症候群 type 2 やシグナル伝達異常を示すX連鎖リンパ増殖症が含まれる。いずれもリンパ球の分泌顆粒の放出に関わる遺伝子の異常が同定されつつあるが、日本における実態とその診断および治療法は確立されていない疾患が多い。本研究は、多くの病態を含む先天性顆粒放出異常症の実態を明らかにし、その診断と治療法を確立することを目的としている。
研究方法
1)日本における先天性顆粒放出異常症を集計し、長期生存例における合併症を明らかにする。
2)先天性顆粒放出異常症の診断法を確立する。さらに遺伝子が同定されていない症例では未知の遺伝子同定を行う。
3)先天性顆粒放出異常症の診断に基づいた治療研究を開始する。
4)並行して既知の遺伝子異常を用いて、遺伝子治療を目的とした遺伝子導入実験を開始する。
5)標準的診断および治療法による治療成績の向上および社会へのデータの還元を行い医療・福
祉へ貢献をはかる。
結果と考察
 Chediak-Higashi 症候群は、HLHをきたす症例は30%程度で長期生存例では消化管合併症および中枢神経合併症が多かった。さらにCTL 活性低下例は HLH 合併しやすいことが判明した。 
 家族性血球貪食性リンパ組織球症(FHL)は症例登録も確立され、FHLの治療成績ではその80%の症例が骨髄非破壊的前処置を用いた非血縁臍帯血移植が行われ予後は60%以上であった。さらに、リンパ球機能解析結果から、未知の遺伝子異常による FHL が存在する可能性が示唆された。
 X-linked lymphoproliferative disease (XLP) はXIAP 異常のよる XLP 2が集積され、日本では XLP1 がい多いことを証明した。リンパ球機能解析を行った結果、XLP1, XLP2 共に顆粒放出および CTL 活性は正常であることが明らかになった。
結論
 先天性顆粒放出異常症のデータ集積および遺伝子診断を含めた診断法と標準的治療法の確立を進めた。また一部の症例では原因遺伝子が不明であり、未知の原因遺伝子の解明を行っている。
 日本における先天性顆粒放出異常症の登録、解析、診断、治療という一連の診断治療システムを構築、将来は造血幹細胞移植に代わる新たな治療法の確立を目指す。

公開日・更新日

公開日
2013-03-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128264Z