インターロイキン1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)欠損症の全国症例数把握及び早期診断スクリーニング・治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201128252A
報告書区分
総括
研究課題名
インターロイキン1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)欠損症の全国症例数把握及び早期診断スクリーニング・治療法開発に関する研究
課題番号
H23-難治・一般-096
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
大西 秀典(岐阜大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 善一郎(岐阜大学 医学部附属病院)
  • 杤尾 豪人(京都大学 工学研究科)
  • 谷内江 昭宏(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 高田 英俊(九州大学 大学院医学研究院)
  • 西小森 隆太(京都大学 大学院医学研究科)
  • 大石 和徳(大阪大学 微生物病研究所感染症国際研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自然免疫不全症(IRAK4欠損症、MyD88欠損症など)は、一般的な免疫検査で診断することができず、易感染患者の中にまぎれている可能性が高い。これらの疾患は、難治性で、ときに致死的であるため、早期診断により適切な治療を行う必要がある。本研究では、IRAK4欠損症を対象として、国内での患者発生の実態調査及び早期診断システムの確立、新規治療法の確立に向けた研究を行う。
研究方法
1. 患者二次調査を施行した。
2. フローサイトメーターを利用した迅速診断スクリーニング法で診断を試み、遺伝子解析を行った。
3.発現ベクターにIRAK4, MyD88等の遺伝子を組み込み、それぞれの遺伝子変異型を導入したものを構築し、タンパク発現、機能解析を行った。
4.患者血清中の肺炎球菌血清型特異IgG濃度、血清OPA titerを測定した。

結果と考察
1. 二次調査から、以下のことが明らかになった。IRAK4欠損症患者7名中4名がすでに死亡しており、3名が生存。主要な感染症罹患歴として, 肺炎球菌, 緑膿菌による侵襲性感染が挙げられ, 死亡例はこのいずれかによって致死的となっていた。臨床的な特徴として臍帯脱落遅延が挙げられた。IRAK4の遺伝子型は欧米で同定されるものとは異なっていた。
2. 患者末梢血のフローサイトメーターを利用した検討は、自然免疫不全症の診断に有効であるが、検査時のステロイド剤等免疫抑制療法の使用の影響を受ける。
3. IRAK4分子のin vitro機能解析系の構築を試みた。IRAK4タンパク発現が低下するvariantの場合、HEK293細胞に一過性発現後、NF-κB活性の比較が有用であったが、DD上のミスセンス変異(R12C)では発現量、NF-κB活性ともに野生型との差異が確認できない。しかし、IRAK4-DDとMyD88-DDのタンパク間相互作用は、R12C変異導入により減弱するため、IRAK4遺伝子変異型の機能評価には、培養細胞を用いた手法とタンパク間相互作用の手法を組み合わせて検討する必要がある。
4. IRAK4欠損症生存症例での肺炎球菌特異的抗体価の測定を行った結果、生存3例とも肺炎球菌特異的IgG2抗体価の上昇が確認された。
結論
我々の開発した迅速診断スクリーニングシステムは、IRAK4欠損症のみならず自然免疫不全症全般の診断に有効であり、かつ遺伝子型の評価方法確立により確定診断に至れることになる。また、確定診断された症例については、抗生剤の予防内服に加え、7価肺炎球菌ワクチンを抗体価の推移を追跡しながら複数回接種することで重篤な感染症が予防できる。

公開日・更新日

公開日
2013-03-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128252Z