孔脳症の遺伝的要因の解明

文献情報

文献番号
201128243A
報告書区分
総括
研究課題名
孔脳症の遺伝的要因の解明
課題番号
H23-難治・一般-087
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
才津 浩智(横浜市立大学 医学部 遺伝学)
研究分担者(所属機関)
  • 萩野谷 和裕(宮城県拓桃医療療育センター)
  • 加藤 光広(山形大学 小児科)
  • 小坂 仁(神奈川県立こども医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
孔脳症(porencephaly)は、大脳半球内に脳室との交通を有する嚢胞または空洞がみられる先天異常で、片側の側脳室体部に隣接する脳実質に観察されることが多い。脳性麻痺、特に片麻痺の重要な原因である。諸外国においては、発症率は10万人に0.5-3.5人程度とされるが、本邦での正確な頻度は不明である。胎生期における梗塞や出血といった脳循環障害により発生すると推測されているが、その原因の多くは不明である。これまで、プロコラーゲン4A1(COL4A1)遺伝子の異常が一部の家系例で報告されているのみで、弧発例におけるCOL4A1を含む遺伝学的検討の報告は皆無であった。本研究は、孔脳症における遺伝要因の解明を目的としている。
研究方法
本研究では、COL4A1遺伝子およびその機能的関連遺伝子の変異解析をHigh resolution melting法を用いた効率的スクリーニングシステムを用いて行う。
結果と考察
COL4A1遺伝子およびその機能的関連遺伝子COL4A2について変異解析を行った。現在までに71症例を解析し、うち2例においてCOL4A2のミスセンス変異を同定した。これら2つの変異は正常検体400例で認められない変異であり、COL4A2変異が、弧発例の孔脳症の原因になっていることは明白である。COL4A2変異の1例は家族例であり、孔脳症の患児、左上肢の軽微な単麻痺を呈する母親、先天性の片麻痺を呈する母方の伯父、明らかな臨床所見を認めない母方祖父に変異を認めた。頭部MRI画像では片側性あるいは両側性の孔脳症が認められ、その程度も様々であった。このことから、COL4A2変異は片側性から両側性まで、また胎児期の脳出血による脳性麻痺から左上肢の軽微な単麻痺や無症候性のキャリアーまで、幅広い表現型を引き起こすと考えられた。一方、COL4A1遺伝子変異は71症例中11症例(15.5%)に認められた。
結論
本研究班では、COL4A1およびCOL4A2遺伝子異常が脳性麻痺を引き起こすという、画期的な研究成果が得られ始めている。今後解析を続けることで変異症例が蓄積し、特定の遺伝子変異による臨床病型や、遺伝子変異を疑う臨床所見の抽出といった、効率的な遺伝子診断を可能にする成果がえられると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-03-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128243Z