さまざまな類天疱瘡の疾患群の抗原の詳細な解析と新しい検査法の開発による診断基準の作成

文献情報

文献番号
201128235A
報告書区分
総括
研究課題名
さまざまな類天疱瘡の疾患群の抗原の詳細な解析と新しい検査法の開発による診断基準の作成
課題番号
H23-難治・一般-079
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 隆(久留米大学 医学部・皮膚科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 鶴田 大輔(久留米大学 医学部・皮膚科学教室)
  • 辛島 正志(久留米大学 医学部・皮膚科学教室)
  • 濱田 尚宏(久留米大学 医学部・皮膚科学教室)
  • 石井 文人(久留米大学 医学部・皮膚科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,304,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究で取り扱う自己免疫水疱症である類天疱瘡群疾患は非常に難治であり、重症例では全身に広汎な熱傷のような臨床像を呈し厳重な全身管理を要することも少なくない。このため各種の類天疱瘡群の正確な診断は適切な治療の選択に大いに役立ち、速やかな病状改善が常に求められる。今回の研究の目的はいまだ詳細に明らかにされていない類天疱瘡疾患群の未知の自己抗原を同定し、その蛋白を用いた診断システムを確立することである。
研究方法
数多くの当該施設で保存している自己免疫水疱症血清を用いて、さまざまな免疫学的・生化学的・分子生物学的手技を用いて基礎研究を行う。プロテオミクス手法を用いて、現在まで未知の類天疱瘡群疾患の抗原を同定し、その蛋白を用いた抗原検出法を確立する。また未知抗原検出に関する新しい免疫沈降法を開発する。新規抗原に対しリコンビナント蛋白を用いた新しいELISA法を開発する。以上の研究からあらゆる類天疱瘡群の疾患診断システムを構築し、本邦での類天疱瘡群疾患の診断基準の作成に寄与させる。
結果と考察
未知の抗原の同定のためのさまざまな研究を進めた。抗ラミニンガンマ1類天疱瘡抗原のラミニンガンマ1およびLAD-1抗原に関して、各リコンビナント蛋白を用いた新しいELISA法を開発した。プロテオミクス法で、sublamina densa型線状IgA水疱性皮膚症の抗原解析を行った。複数の候補蛋白を同定し、今後これらの蛋白が自己抗原であることの確認検索を行う予定である。眼型粘膜類天疱瘡に関して、免疫ブロット法にて、多くの血清がヘミデスモソームの重要な構成蛋白であるインテグリンベータ4に反応することを見出した。診断基準の作成については、国際的な水疱性類天疱瘡の診断基準と治療ガイドラインを作成した。
結論
今回の研究では、各種の類天疱瘡群疾患の多くの自己抗原を同定し、そのcDNAを単離しリコンビナント蛋白を作成した。今後、これらの自己抗原に反応する自己抗体を検出する実験系を確立することを予定している。今まで診断が不可能であった類天疱瘡群疾患をこのシステムで確実に診断され、適切な治療が施されるようになった。また、この研究の副次的産物として、デスモソームとヘミデスモソームの新しい構成蛋白が同定され、基礎的な細胞生物学の発展へとつながった。 

公開日・更新日

公開日
2013-03-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128235C

成果

専門的・学術的観点からの成果
今回の研究で、異なった類天疱瘡群疾患の多数の自己抗原を同定し、さらに、そのcDNAを単離しリコンビナント蛋白を作成した。その蛋白を用いた免疫ブロット法とELISA法を確立し、各種の類天疱瘡群を診断する新しいシステムを構築することができた。また、この研究の副次的産物として、ヘミデスモソームの新しい構成蛋白が同定された。この分子の生化学的・分子生物学的検討を行うことにより、基礎的な細胞生物学の発展にも寄与することができた。以上から、学術的にも大きな貢献をした。
臨床的観点からの成果
類天疱瘡群疾患は非常に難治であり、重症例では全身に広汎な熱傷のような臨床像を呈し厳重な全身管理を要することも少なくない。このため各種の類天疱瘡群の正確な診断は適切な治療の選択に大いに役立つ。今回開発した診断システムにより、今まで診断できなかった類天疱瘡群疾患が確実に診断できるようになり、個々の患者に最も適切な治療が施されることが可能となった。今回の研究成果は重篤な皮膚病変に苦しむ患者の救済に大いに役立つ。難治性の類天疱瘡群の治療が改善することは、国民の保健・医療・福祉の向上等につながる。
ガイドライン等の開発
日本皮膚科学会の依頼により、水疱性類天疱瘡治療ガイドライン作成委員会が招集され、本研究の主任研究者は委員として新しいガイドラインを検討している。現在、論文化に向けて最終的検討を行っている。同時に、本研究の主任研究者である橋本隆は、世界の水疱性類天疱瘡の重症度分類作成委員会に参加し、新しい水疱性類天疱瘡の重症度であるBPDAIの作成に従事した。この重症度は今後の類天疱瘡の治験の遂行に有効である。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省難病対策班会議で、難病の天疱瘡の分野で、久留米大学医学部皮膚科を中心に類天疱瘡の研究も進められた。今後、類天疱瘡も難病に指定される可能性を視野に入れ、今回の研究から、新しい診断法として、各種のELISA法が開発され、一部は、保険診療に向けて検討中である。現在、これらの疾患には多額の医療費がかかっているが、適切な治療を行なうことで、速やかな病勢の改善と、医療費の軽減が得られ、このことは厚生労働行政にも大いに益する。
その他のインパクト
国内で初めて、天疱瘡・類天疱瘡の患者会が、久留米大学医学部皮膚科を事務局として設立され、年に1回、患者の親睦会が開かれており、同会で類天疱瘡の講演会が行われた。世界の天疱瘡・類天疱瘡患者会と交流もおこなっている。、また皮膚難病の講演会を行い、類天疱瘡に関しても、その一部がマスコミに取り上げられ、新聞および医学系雑誌に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
50件
その他論文(和文)
20件
その他論文(英文等)
223件
学会発表(国内学会)
71件
学会発表(国際学会等)
23件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2016-05-26

収支報告書

文献番号
201128235Z