腎性低尿酸血症の全国的実態把握

文献情報

文献番号
201128232A
報告書区分
総括
研究課題名
腎性低尿酸血症の全国的実態把握
課題番号
H23-難治・一般-076
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
四ノ宮 成祥(防衛医科大学校 分子生体制御学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松尾 洋孝(防衛医科大学校 分子生体制御学講座 )
  • 池脇 克則(防衛医科大学校 内科学)
  • 高田 龍平(東京大学医学部附属病院 薬剤部)
  • 市田 公美(東京薬科大学 病態生理学講座)
  • 中村 好宏(防衛医科大学校 数学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腎性低尿酸血症について全国からの症例収集と複数の大規模健康診断データの活用により、本疾患に関する情報を集積し、診断基準を確立することを目的とする。
研究方法
低尿酸血症症例の収集と頻度解析のために、静岡県浜松地区の健診サンプル5,019例及び
北海道八雲地区での約600例について、健診データの解析とゲノム解析を実施した。自衛隊員の健康診断については、21,060例の健診データの収集を行った。また、運動後急性腎不全などの合併症を持つ腎性低尿酸血症の収集については、国内外の症例の臨床データとゲノムサンプルの収集に努めた。さらに、日本痛風・核酸代謝学会会員のうち主に医療機関に勤務する全国の医師を対象に、アンケート調査回答票を送付した。これらのサンプルを用いた解析から、全国的な本疾患の情報を集積するとともに、診断基準の確立に向けた調査研究を行った。
結果と考察
アンケート調査の集計結果から、血清尿酸値2.0 mg/dl以下の腎性低尿酸血症は179例あり、そのうち運動後急性腎不全及び尿路結石の合併はの合併はともに6.1%(11例)であった。健診サンプル5,019例についての低尿酸血症の頻度解析の結果、血清尿酸値 1.0 mg/dl以下の症例、2.0 mg/dl以下の症例、3.0 mg/dl以下の症例はそれぞれ0.12%、0.18%、2.51%に認められた。なお、この健診サンプルの中から、GLUT9遺伝子においてR380Wの変異を認める症例が新たに同定された。腎性低尿酸血症の診断基準については、血清尿酸値による重度、中等度、軽度の3分類を基本として、合併症の有無や遺伝子解析の結果を参考とすることを検討している。
結論
本研究により、重篤な合併症の存在が問題となる腎性低尿酸血症の全国的実態把握のための研究基盤ができた。また、これにより患者の負担が大きい現行の薬物負荷試験に代わるサブタイプ鑑別法の開発が期待される。全国的実態調査を伴う本疾患の分子機構の解明や診断方法の確立は、医療従事者および患者への適切な啓蒙にもつながり、ひいては重篤な合併症に対する効果的な予防対策につながることが期待できる。加えて、本疾患の病態の解明は、生理学的な血清尿酸値の調節の分子機構の解明につながるため、生活習慣病である高尿酸血症や痛風における新規治療方や予防法の開発に資することも期待できる。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128232Z